日別アーカイブ: 2020-01-11

庭木の剪定(29)シラカシの伐採でリベンジ!

前回、庭木のアラカシを伐採しました。
その伐採で伐倒方向とは真逆に倒してしまうと言う失敗を犯したものの、今シーズンの剪定は無事終えられました。

ところで、近所にいつも様々教えていただいている長老のお宅があります。
長老のお宅にも我が家と同じような庭があり、昨シーズンまではご自身で剪定(当地では「きつくり」と言います)を行ってみえました。
しかし、80代半ばを過ぎて危険なこともあって、「伸びて鬱陶しいところだけでも適当で良いので剪定してくれないか」と頼まれました(ご子息は結婚により家を離れています)。
以前だと自分のところの剪定だけで手一杯で、とても余所の庭まで手を出せる状態ではなかったのですが、我が家の庭にかかる労力が半分以下に減ったことで少し余裕があります。
それと、我が家は祖父が早くに亡くなって苦しい時代があったのですが、その時この長老のご一家には様々に助けていただいたと聞いており、今こそ恩返しの機会だと喜んで引き受けることにしました。

剪定作業は2本の大木を除いて刈り込み鋏を使ってザッと行い、半日もかからず完了しました。
問題は2本の大木(シラカシとヤマモモ)です。
この2本の大木について、長老は「2本とも老木であるし、今後も剪定の手間がかかることから伐採できるものならこの機会に伐採してほしい」とのこと。
2本のうち1本のシラカシについては、幹からの胴吹きが多いことや太い枝が枯れていることから相当衰弱していることが見て取れます。
もう1本のヤマモモについては、老木ではあるものの樹勢はあります。
このため、今回伐採するのはシラカシのみとし、ヤマモモについてはとりあえず剪定が容易になるように少しコンパクトに仕立て直してはどうかとお伝えし、そうすることに。

まずはシラカシの伐採からです。
このシラカシの樹高は6m程度で、幹の直径が30cm強あります。
庭木で高さを抑えているため幹の上部も太く、重心が高い位置にあります。
枝葉を落として幹の傾きを確認すると、離れがある方向(西)に若干傾いており、その方向に倒れれば離れに当たってしまいます。
また、その近くには軽トラ(移動不可)も停まっています。
幸い東側に広いスペースがあるため、その方向に伐倒できます。
さすがに先のアラカシの伐採時のような失敗は許されませんので、伐倒方向にロープで牽引しながら伐倒することにします。

ロープの牽引はお隣の方に助っ人をお願いし、容易にロープを引けるように軽トラをアンカーにしてローププラー(簡易的な牽引機)を取り付けてあります。

ところで、ロープを引くと下図のとおり受け口の位置を支点としてテコの原理が働くため(→ロープを掛ける位置が高いほど、ロープが長いほど力が大きくなる)、伐倒する木に傾きがなければロープを直接、手で引くだけでも十分な場合があります(傾きがなくても風などの影響を考慮する必要有り)。

しかし、今回の場合は木が伐倒方向とは逆に傾いているため、それを引き起こす力も必要になります。
そして、それに対応するロープやアンカー、牽引機を用いる必要があるわけですが、私が伐木関係の書籍を読んだ限りでは、それらの具体的な選定方法に関する記載を目にしたことがありません。
おそらく市販の道具は十二分に安全にできているのだと思いますが、今回のどの程度の牽引力が必要になるのか算出して確認してみることにします。

<以下、素人考えによるもので安全の保証は全くありません。重大な事故に繋がるおそれのあることにご留意ください>

中学か高校の理科で習った力のモーメントを思い出すと、木の重量(Mg)によるモーメントM1とロープの牽引(T)によるモーメントM2との釣り合いからロープの牽引力Tを算出すれば良さそうです。

上図から

M1 = Mg・h/2・sinα
M2 = T・h・cosα・cosβ

となり、M1 = M2から

T = Mg/2・tanα/cosβ

となります。
つまり、木の重量Mg、木の傾斜角α、ロープの索引角βからロープの引張力Tを算出できることになります。

木の重量Mgは超概算で幹の直径0.3m、樹高6m、比重1、安全率2(枝葉の重量等)として下式により求めると850kgfになります。

Mg = π/4×0.3^2×6×1×2 ≒ 850kgf

これに木の傾斜角α及びロープの牽引角βをそれぞれ3°、30°としてロープの牽引力Tを求めます。

T = Mg/2・tanα/cosβ = 850 / 2×tan5°/ cos30°≒ 26kgf

牽引力は26kgfとなり、30kgの米1袋(半俵)を持ち上げるぐらいの力が必要になることになります。
ほかにも風圧等が作用することを考えれば、木を引き起こす場合にはローププラー(今回使用したものの許容荷重は1,500lb≒680kgf)や動滑車(倍力)の使用は必須と言えそうです。

上式で木の傾斜角αの値を変えて算出すると、ロープの牽引力Tは次のとおり変化します。

  • 1° ・・・9kgf
  • 3°・・・26kgf
  • 5°・・・43kgf
  • 10°・・・86kgf

今回使用したロープ(直径1/2″)の切断荷重は14kN(使用荷重はその1/10)ですので、今回の木で傾斜角が10°くらいまでであれば問題ないことになります。

とりあえず使用機材の能力で問題ないことを確認できたため作業に着手します。
伐倒方向に向けて正確に受け口を作ります。

次に受け口の反対側から追い口を切りますが、この方向には木の傾きによる力がかかっています。
チェンソーのガイドバーが挟まれてしまわないようにロープを軽く張った状態にして追い口を切ります。

ツルの厚さが直径の1/10になるところまで切ったら退避。
助っ人に合図し、ローププラーでロープを引っ張ってもらうとズドーン。

今回は狙ったとおりの方向に倒せました。

切り株は邪魔にならないように低いところで切り直しますが、その前に受け口や追い口が正しく作られていたかどうかチェックしておきます(特に問題ないようです)。

伐倒した木の処分も頼まれていますので、玉切りしたうえ斧で割って薪にします。

カシの木なので良い薪になります。
庭木はイジメてあるため割るのに苦労しますが、その分火持ちも良さそうです。

もう1本の大木のヤマモモについては伐採せずに、ひとまわりコンパクトになるよう剪定。

全ての剪定が無事完了し、長老にも満足していただけました。
長老から今回の剪定と伐採に要した費用を払いたいと言っていただきましたが、実際にかかったのはチェンソーの燃料ぐらいです。
その代わりに処分したいと聞いていた古い建具や古材(全て無垢材)を軽トラに一杯頂いてきました(こうしたものも、これまでは我が家のものを処分するのに精一杯だったのですが、片付いてきていて少し余裕があります)。

これらを解体し、ウッドボイラーが設置してある倉庫に収納。

ウッドボイラーの燃料や薪ストーブの焚き付けとして活用させていただきます!