先般、仏間の改修がとりあえず完了しました。
この改修において壁を仕上げましたが、実はまだ主屋(古民家)で壁を仕上げなければならないところが残っているのです。
それは、LDKの垂れ壁(丸太梁の上部)です。
LDKのうちDK部分は、20年程前のリフォームにより今風の石膏ボード+クロス貼りの吊り天井になっていたのですが、採光と自然換気を図るため、昔の状態(奈良天井)に戻すとともに一部に竹天井を配置しました(一昨年の夏に施工)。
昔の奈良(大和)天井に戻すことによって問題になったのが、20年程前のリフォームにより一部が取り壊された土壁です。
土壁も元の状態に戻すべく、昨年の夏に下地(竹小舞)を組んだうえ、荒壁をつけて大直しまで行い、現在、下写真の状態になっています。
荒壁でも壁としての機能は果たすため、中塗り以降の仕上げについては追い追いやれば良いと考えていました(全部が荒壁で統一されていれば、見た目的にも無骨でカッコ良いです)。
今回、仏間の改修において中塗り・上塗りを行なったことから、そのついでに、この垂れ壁についても中塗り・上塗りを行なって仕上げることにします。
下写真で上側の土壁は残存していた部分で、上塗りの漆喰を剥がして中塗りの状態になっています。
しかし、その断面をよく見ると下図のようになっており、下層にさらに(薄汚れた)漆喰の層があります。
昔、煤汚れなどで壁が汚れて塗り直した際、既存の漆喰を剥がさず、その上に塗り重ねたようです。
漆喰を剥がすのは容易ですが、剥がす際、周囲に埃が舞うので、それを嫌って塗り重ねることにしたのでしょう。
それは理解できるとしても、おや?と思うのが重ね塗りする際、既存の漆喰の上に直接漆喰を塗るのではなく、中塗りの層を挟んでいる点です。
これは(乾燥した)漆喰の上は水引きが早く塗るのが難しいため、中塗りを挟むことで解決したのかもしれません。
今なら化学製品のシーラーや添加剤を使うところですが、このようなものが無かった昔はこうして漆喰の重ね塗りを行なったわけです。
先人の工夫が偲ばれる箇所ですが、今回さらに塗り重ねると剥離等の悪影響が生じるかもしれませんので、この機会に全て剥がして当初の中塗りの層まで戻しておきます。
早速、中塗りしたいところですが、ここは元々、天井が無かったところ(厨子二階に柴を出し入れする開口部)で見切りになるものがないため、その手当を行う必要があります。
両側の隣接箇所と同じような外観になるように廻り縁を入れることにします。
その材として使うのは、先の仏間の改修において巾木として再利用できなかった古材(20年程前に解体した離れの床脇の床材)です。
必要なサイズでカットし、プレナーにかけて表面を整えます(下写真で上側:加工前、下側:加工後)。
柿渋に顔料(弁柄等)を加えて古色塗りします。
この廻り縁を天井板から吊り下げる形で取り付けることにし、天井裏側からビス留めします。
ただ、これだけでは安定しなかたため、居室側からも柱に対してビス留めして固定しました(ビス頭が見えてしまいます・・・)。
この廻り縁を見切りにして中塗りしていくことになります。
いつもの通り中塗土を練って中塗りします。
上写真は中塗り後、ひと月程度経過してから撮影したものです。
左側の壁のアップが下写真です。
今回も藁スサの混入を省略しましたが、ヒビ割れが生じることもなく良い感じに仕上がっています。
ところが、右側の壁が下写真の状態です・・・。
茶色く変色し、ひと月前に塗ったにも関わらず、早くも古壁の様相です。
実は、こちらの壁土には前週に行った仏間の中塗りで余ったものを使ったのですが、練り直すのに少量だったため農作業で使っているサビた移植ゴテを使ってしまったのです。
つまり、その鉄分が移った壁土が壁塗り後、空気に触れることで酸化して変色に至ったわけです(壁チリの周囲が変色していないのは空気の対流が少ないためだと思います)。
千利休の茶室の壁は「錆壁」と言って、敢えて鉄分の多い土を使ったそうですし(「侘び寂び」ならぬ「侘び錆」!?)、これはこれで風情があって良いかもしれません。
しかし、今回は他の壁と統一して漆喰で上塗りする予定で、真っ白の漆喰にサビが悪さをするのではないのかと、今更ながら移植ゴテを使ったことを後悔・・・。
サビの影響を抑えるには、上塗りする前にシーラーを全面に塗布してブロックするしかなさそうです(もう1層塗り重ねる手もありますが)。
市販されている漆喰用シーラーの成分は酢酸ビニル樹脂で、木工用ボンドと同じです。
こうした合成樹脂を土壁に塗布するのは可能であれば避けたいのですが(土壁の調湿機能も半減!?)、やむをえません。
今回は使用量が少ないため、木工用ボンドを水で希釈して使うことにします(漆喰用シーラーは購入しても安価です)。
壁にペンキを塗るようにローラーで塗布します。
漆喰(特に土壁に塗る場合)は水引きが早いため、私のような素人にとっては扱いにくいのですが、シーラーを塗ると水引きが抑えられて塗りやすくなると言うメリットもあります。
漆喰自体も素人向けに塗りやすくしたものが市販されていますが(とても高額)、そうしたものは酢酸ビニル樹脂や合成セルロースなどを添加して水引きを抑えているのではないかと思います。
漆喰は安価な「大和漆喰」(プレミックスタイプ)を練って使います(3年程前に購入・使用して余ったものですが、固結や劣化等は特段ありませんでした)。
練った漆喰を、これまたいつものとおりサッと軽く塗って仕上げます(漆喰でも押さえません)。
押さえないため、中塗りに凸凹があっても誤魔化しがききますし、表面のテクスチャーも珪藻土のような自然な感じになるため、私のような素人にとって良い塗り方だと思います。
と言うことで完成です。
竹天井のところも良い感じに仕上がりました。
クロス貼りの天井を解体したのが2年前の春ですので、2年以上もかかって完成しました。
しかし、本来の目的である「自然換気」のテーマはまだまだ続く予定です。