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古民家の自然換気(46)エアコン設置③エアパージ&ポンプダウン

前回、新しく設置するエアコンの配管(冷媒管&ドレーン)と配線(電気)を行いました。

早速、エアコンのスイッチを入れたくなりますが、その前に「エアパージ」と呼ばれる作業を行なっておく必要があります。

ところで、エアコンは液体が蒸発(気化)するときに周囲の熱(気化熱)を奪う性質を利用して冷房します。

液体(冷媒)には悪名高いフロン(環境負荷低減のため代替フロンに移行、今回のエアコンにはR32代替フロン)が用いられています。
このフロンガスはエアコン出荷時には室外機に充填された状態になっています。

一方、室内機や配管の中にあるのは空気のため、室内機や配管に冷媒(フロンガス)を充填させる際に空気(Air)を除去(Purge)する必要があります。
空気を除去(エアパージ)するには、私のような素人考えでは下図のとおり室外機側のバルブを開けて冷媒を流すとともに、室内機や配管内の空気を押し出してやれば良いのではないかと考えます。

しかし、こうするとオゾン層を破壊するフロンガスを大気中に放出する可能性がありますし、冷媒と空気が混ざると爆発の危険性もあるそうです。
このためエアパージは、前もって室内機と配管内を真空引き(真空ポンプ使用)する方法で行うものとされています。

と言うことで、エアパージを行うために真空ポンプと、真空状態を確認するための圧力計(マニホールドゲージ)が必要になります。
もちろん持っていませんので、新たに購入(中古品)し、これを室外機の配管接続口に接続します。

室外機の配管接続口(戻り配管側)には真空引き用の接続口(サービスポート)が用意されているため、そこに真空ポンプのチャージホース(上・下写真で青色のホース)を接続することになります。

このとき、往き・戻り配管にそれぞれあるバルブは閉(出荷時の状態)になっています。

サービスポートと真空ポンプとの間には下写真のマニホールドゲージを入れ、配管内の圧力を確認できるようにしてあります(今回使用するのは青色側:低圧側)。

現在、針は0(大気圧=1気圧ですが、大気圧比のため0表示)を指しています。

真空ポンプを運転させ、しばらくするとマニホールドゲージの針は下写真のとおり-30inHgを指すように。

「inHg」とは見慣れない単位ですが、WikiPediaで調べると「水銀柱インチ」とのこと。

1気圧=760mmHg=760/25.4inHg≒30inHg

つまり、-30inHgで真空状態(-1気圧)と言うことです。
エアコンの工事説明書に「マニホールドゲージが-1気圧に達したのち15分程度、真空ポンプの運転を続ける」とありますので従いします。

15分経過後、真空ポンプを停止。
室内機や配管内は真空状態になっているはずです。
しばらくマニホールゲージの針が安定していることを確認したうえ、戻り配管側のバルブを開けて冷媒(代替フロン)を室内機及び配管内に充填します。

真空ポンプのチャージホースを外し、往き配管側のバルブも全開。

配管の継ぎ手部でガス漏れがないことを確認して(今回は石鹸水を使用)エアパージ完了です。

これでようやくエアコンを運転できます。
早速リモコンのスイッチをON!

無事、冷えた空気が出てきて一安心です。

試運転と称し、このまま冷房の効いた部屋にいたいところですが、まだ工事が残っています。
配管の継ぎ手部はガス漏れがないことを確認する必要があったため、まだ断熱材を施してありません。

上写真はエアコン運転中のものですが、銅管表面がビッシリと結露しており、断熱材の必要性がよくわかります。

断熱材を巻き、ドレーンとともに架台に固定しておきます。

屋外部の配管は、保護テープ(断熱材の紫外線劣化防止)を巻いうえサドルバンドを用いて外壁に固定します。

配管と室外機の設置状況。

上写真で左手は既設のもので、施工は家電量販店の下請け業者によるものです。
こうして比べてみると、見た目に関しては今回施工したほうが美しいと自己満足^_^

既設のエアコンは今のところ問題なく動作するのですが、専用工具(売却予定)が揃っている今のうちに撤去することにします。
撤去は適当に配管をはずせば良いだけのように思いますが、それだとフロンガスを大気中に放出してしまいます。
このため、設置したときとは逆に、室内機や配管内に残っている冷媒を室外機に回収する作業(ポンプダウン)が必要になります。

ポンプダウンを行うため、往き配管側のバルブを閉じ、戻り配管側にあるサービスポートにマニホールドゲージ を接続します。

このとき、マニホールドーゲージの針は下写真のとおり示し、冷媒による圧力が作用していることがわかります。

エアコンを強制運転させ、室内機及び配管内の冷媒を室外機に回収していきます。
冷媒の回収に伴い配管内の圧力は下がっていき、マニホールゲージの針は真空状態(-30inHg)を示すように。

これで冷媒が室外機に回収されたことになりますので、バルブを閉じたうえエアコンの運転を停止します。

配管及び電気ケーブルを取り外します。

20年近く頑張って働いてくれたことに感謝し、ひととおり掃除しておきましょう。

ところで、今回エアコンを設置した部屋ですが、室内機を取り付ける前に隣接する2面の壁は仕上げ塗りを行いましたが、他の壁は壁材が足りなかったため、そのままの状態(中塗りに下地材を塗った状態)になっています。
その後、壁材(珪藻土)が届いたことから、残りの壁も仕上げ塗りを行います。

コテ使いが多少上達し、素人でもそれなりに仕上げられるようになってきました。

ただ、コンセントとの狭い隙間は手持ちのコテが入らず、指で塗ると言ういい加減さです・・・。

ともあれ、主屋(古民家)の改修工事から4年が経ってようやく仕上げ塗りとエアコン設置ができました。

ところで、ブログの最初で「エアコン設置をDIY施工しても金銭面でのメリットはない」と書きましたが、今回のエアコン設置に要した費用をまとめると下表のとおりです。

真空ポンプやトルクレンチと言った特殊な工具は中古品を購入し、施工後に同じくらいの金額で売却できたことから送料や売却に係る手数料として約5,000円を計上しています。
エアコン本体は別として、取り付けに要した費用が約15,000円(=材料費9,500+工具5,000円)になります。
家電量販店などでは取り付け工事費を15,000円〜としているところが多いように思いますが、DIY施工でもそれと同程度の費用を要することから金銭面でのメリットはなさそうです(家電量販店から取り付け工事を下請けしている電気工事屋さんの利益も少ないものと思われます)。

古民家の自然換気(45)エアコン設置②配管&配線

前回、エアコンを設置するため小壁(土壁)に配管用の穴(φ65mm)をあけました。

次に室内機の設置箇所に取付板(付属品)をビス留めすることになりますが、土壁に直接ビス留めすることはできません。
こうした場合のために、たて桟(600円程度)と呼ばれるものが別売されており、これを使うと土壁の上・下にある木材部にビス留めできるようになります。
ただ、市販のものは色が白のため、木材の古色に対して目立たないように黒色(ツヤ消し)で塗装しておきます(黒色のスプレー塗料が無かったため、煙突のメンテに使っている耐熱塗料を使用)。

スプレー塗料は手軽で、しかも綺麗に塗装できるので魅力的です。
しかし、こうした塗料(合成樹脂塗料)は超マイクロ・プラスティックなわけで、なるべく飛散させないように段ボールで周囲を囲んで塗装するようにしています。

こうして塗装した、たて桟を木部にビス留めしたうえ室内機の取付板を取り付けます。

たて桟を黒色に塗装したことにより、木部に対しては目立たなくなったものの、壁(珪藻土)の白色に対して目立つようになりました・・・。

続いて、室内機本体を準備します。
工事説明書に従って電気ケーブル(別売り、VVF2.0×3C)を室内機に接続し、冷媒管・ドレーンとともにビニールテープで巻いてまとめます。

壁内に収まる区間には配管保護テープ(別売り)を巻いておきます。

配管を壁穴に通しつつ室内機を取り付け。

室内機は見た目以上に軽いため取り付けは容易です。

配管(特にドレーン)で重要な点は逆勾配にしないことです(工事説明書には1/25以上の勾配)。

1/25の勾配をとることを考慮して2箇所の壁穴をあけてありますが、そのままでは途中の配管が垂れ下がって凹状になってしまいます(水が溜まって漏水の原因になる)。
一定勾配で配管を支持するための架台を木材を使って作ります。

この架台を天井板の上に設置します。

室内機から出る配管の長さは上写真のとおり1mもありません。
別途、室外機の設置場所に応じて必要な長さの配管(冷媒管&ドレーン)を調達して接続することになります。
今回は、それぞれ長さ4mの冷媒管(下写真で左側、3,000円弱)とドレーン(右側、500円程度)をホームセンターで購入。

冷媒管は断熱材が施されたナマシ銅管で、口径が2分(2/8in.=6.35mm、往き配管)と3分(3/8in.=9.62mm、戻り配管)のものがペアになっています(ペアの銅管がコイル状に巻かれているため「ペアコイル」の名称で市販されています)。

銅管と言ってもロウ(ハンダ)付けによる接合は必要なく、管端がラッパ状にフレア加工されており、袋ナットを締め付けるだけで容易に接合できるようになっています。

しかも、なまし銅管のため自在に曲げることができます。
ただ、きつく曲げすぎると座屈してしまうため注意が必要です。
ペアコイルなどを製造している因幡電工のサイトで最小曲げ半径を調べると次のとおり記載されています。

今回(φ6.35mmとφ9.52mm)は半径58mm以上で曲げれば良いことになりますので、曲がり部を前もって加工しておきます(蚊取り線香の缶を使用)。

このペアコイルを室内機側の銅管と接続します。

管端はフレア加工がされているため袋ナットを締め付けるだけで接合できるのですが、注意しなければならないのは締め付け時の力加減(トルク)です。
弱すぎるのはもちろんのこと、強すぎてもフレア部を壊してガス漏れの原因になってしまうのだそうです。
このため、口径に応じた適正な締め付けトルク(ナット径17mm:17.2N・m、22mm:39.9N・m)が規定されており、この値で締め付けられるトルクレンチ(エアコン配管専用)と言うものがあります。
トルクレンチは高価(新品だと1本1万円程度)なため、一般的なスパナで済ませたくなりますが、私のような素人が適当な力加減で締め付ければガス漏れすること必至ですので仕方なく購入(中古品)。

上写真で上の2本が一般的なスパナで、下の2本が同径のトルクレンチです(「スパナ:spanner」はイギリス英語、「レンチ:wrench」はアメリカ英語の違いだけで同じものを指しますが、トルクスパナとは言わないようです)。

こうして接続したペアコイルを室外機設置予定箇所まで配管します。

次に室外機を設置する準備にかかります。
室外機は樹脂製の架台(1個100円程度)に載せますが、それだけでは不安定なため基礎として建築ブロックを据えます。

何事も基礎が大事です。
レベルで水平を確認したうえ、周囲を壁土で締め固めておきます。

そして、室外機を据え付けます(室外機×樹脂製架台、架台×建築ブロックをビスで連結)。

室外機の接続口にペアコイル及び電気ケーブルを接続します(ペアコイルの接続にはトルクレンチを使用)。

この接続によって電気面でも室内機と室外機の間が繋がったことになります。
電気は室内機側にある電源プラグから取るようになっており、今回は100V機種のため近くのコンセント(100V15A)に繋げなくもありません。
しかし、消費電力の多いエアコンは専用線を敷設し、そこから電気を取るようにすべきかと思います。

と言うことで、専用線の敷設に必要になるブレーカ(下写真で黒色、分電盤に増設)、VVFケーブル(1.6×2C)及び露出型コンセント(室内機の近くに設置)をホームセンターで購入。

ちなみに、ここからの施工には電気工事士の資格が必要になります(私自身はペーパー電気工事士)。
サービスブレーカ(下写真で左手)と漏電遮断機(主幹ブレーカ、中央)を切った(OFF)うえ分電盤のカバーを取り外します。

中を見ると、単相200V 3線式で引き込まれており、分岐ブレーカの各取り付け箇所でそれぞれ200Vか100Vに切り替えられるようになっています。
このため、今回設置するエアコンを200V仕様にする手もあったのですが、ペーパー電気工事士には100Vしておいたほうが安全でしょう(そもそもエアコンの設置台数が少ないため100Vで対応可能)。

100Vに設定したうえ新しいブレーカ(20A)を取り付けます。
そして、壁裏からVVFケーブルを引き出してブレーカに結線。

始端をブレーカに繋いだVVFケーブルを室内機の近くまで配線していきます。

厨子二階(屋根裏)は、こうした電気ケーブルなどの管理用スペースとしています。
点検・管理しやすいルートを選定して敷設します。

室内機の設置箇所の近くで1階に下ろします。

終端に取り付ける露出型コンセントは、電線の先端を輪っか状に加工して結線しなければなりません。
この輪作りがなかなか難しいのですが、工具(下写真で左側、ケーブルストリッパーと兼用)を使えばペーパー電気工事士でもベテランの手によるかのような綺麗な輪っかが作れます。

そして、室内機の近くにコンセントを取り付けます。
ここでブレーカを入れ(ON)、テスターを使ってコンセントに100Vがきていることを確認するところですが、肝心のテスターがどこかにいって見つからない・・・。
そこで、代わりに検電器(下写真でペンの形状をしたもの)を使ってコンセントの片口(非接地側)のみが充電されていること(検電器のランプが点灯)を確認します(これで少なくとも、200Vで誤接続してエアコンを使う前に壊してしまったなんてことを防げます)。

このコンセントに室内機の電源プラグを挿せば動作するはずですが、実はまだ行っておくべきことが残っているのです(室内機及び冷媒管のエアパージとエアコンガスの充填)。