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古民家の自然換気(44)エアコン設置①土壁を穿孔

酷暑の日が続いており、地球(人間)の行く末はどうなるのだろうかと心配にならざるをえません。
地球への負荷を少しでも減らしたいとの思いから、夏の暑さ対策としてエアコンに頼るのではなく、周囲の自然環境や古民家の特徴を活かす工夫を行っています。
そのひとつが竹天井(天井の開口部)です。

天井に開口部を設けることで居室内の暖気を排出させるとともに、窓を開け放して冷えた外気を取り込もうとするものです(状況に応じてシーリングファン冷風扇を併用)。

当地は夏に東(または南)寄りの海風が吹くため、気温が高くても比較的冷たい空気を取り込むことができます。
ところが近年、夏でも西寄りの山風が吹くことがあり、その場合、フェーン現象(鈴鹿山脈を越えた下降気流)によりモンモンとした空気に包まれてしまうのです。
また、古民家は土壁(蓄熱材)が多用されていることから、暑さのピークが遅れて夕方から夜にかけて暑さが厳しくなるように感じています。
それでも私自身は若くて健康なため「心頭滅却すれば火もまた涼し」の境地を求めて井戸水でもかぶっていれば良いのですが、古希(70歳)を越えた母がいるのにエアコン無しの生活はさすがに厳しいものがあります。

実は、エアコンは20年近く前に設置したものがあり(下図で「AC」)、冷風扇やシーリングファンを併用しても対処できないときは竹天井を閉めてエアコンをつけるようにしています。

ただ、このエアコンは2.2kW仕様(6畳用)のもので、4年前の改修工事でLDKが26畳と広くなった今では非力なのです(エアコンをつけると室外機のコンプレッサーが常時動作する状態)。
部屋の広さに応じた高出力のエアコンに換えれば良いだけの話しとは言え、高出力=電力多消費なわけで、脱電気の方向を目指す自分にとって受け入れ難いものがあります。

そこで考えたのが、下図のとおりエアコンの設置場所を変え、LDK(26畳)の一部(6畳)のみを冷房する案です。

古民家は壁が少なく、壁の代わりに建具によって間仕切りされているのが特徴でもありますが、このLDKも建具を閉めれば畳敷きの6畳間が独立するようになっています。
6畳の広さであれば小出力(2.2kW程度)のエアコンで済みますし、ここは改修工事時に断熱材が施してありますので(天井のみ。床は畳が断熱材代わり)、常時冷房しても比較的負荷は小さく済みそうです。

どうせエアコンを設置するなら、暑い夏が来る前です(ブログは遡って書いており、実際には6月に施工しました)。
脱電気の方向を目指しているものの、電気や機械ものを扱うのは好きなため、DIYにて施工することにすることにします(施工には特殊な道具を揃える必要があるため、金銭面でDIY施工するメリットはありません)。

エアコン本体は部屋の広さ(6畳)から2.2kW(インバータ方式)仕様のものとします。
既設のもの(2.2kW)と同じ出力であるため、既設のものをポンプダウン(エアコンガスの回収)したうえ移設できなくもないのですが、20年近く経っていることから新しく購入することに。
ネットで安価なものを探して日立の白くまくん(RAS-AJ22H)を注文(前年モデル。ポイント還元を考慮して実質3.5万円程度)。

日立RAS-AJ22H:日立グローバルライフソリューションズ(株)HPより

注文したものが届き、付属の工事説明書を読むと、まずは壁に配管(冷媒&ドレーン)と電気ケーブルを通すための穴(φ65mm)をあけるとのこと。
今回の場合、室内機と室外機の配置から下図のとおり2箇所、壁穴をあけることになりますが、厄介なのは2箇所とも壁の素材が土壁だと言うことです。

壁の素材が石膏ボードや合板であればジグソーを使って切り抜けば良いのですが、土壁の場合そうは問屋が卸しません(土壁でも新築時であれば容易)。
どうするのだろうかと、電気工事屋さんが施工した既設のものを見ると、土壁にも関わらず綺麗な円形の壁穴があいています。
どうやら「コアドリル」(振動ドリル等に装着して使用)を使って穿孔されているようですが、新品を買えばエアコン本体に匹敵する価格の代物です。
今回のためだけに新品を買うわけにもいかず、ヤフオクでジャンク品(送料込み1,500円)を購入(下写真で右側の円筒形のもの)。

円筒の先端にチップ(超硬合金)がついており、これを高速回転させることで壁を穿孔するわけです。
ただ、新品とは異なりチップの刃先が摩耗しています。
摩耗していてもチップ自体は残っているため、刈払機や丸ノコのチップソーのように研磨してやれば1、2回は使えるようになると目論んで購入したのですが・・・。

ディスクグラインダー(上写真で左側)にダイヤモンドディスクを装着して研磨。

それなりに刃が付いたように思いますが、果たして切れ味はいかがでしょうか?

早速、穿孔したいところですが、工事説明書を読むと、室内機の取り付け位置に応じて結構シビアな位置に壁穴を設ける必要があるようです。
やり直すわけにいきませんので、ここは図を描いて慎重に検討することにします(工事説明書に詳細な寸法が記載されています)。

正面図

室内機は小壁(土壁)の上下中央に配置するとバランスが良いですが、室内機から出るドレーン管(結露水を排出)を下図のとおり下り勾配(1/25以上)で配管する必要があることから上に寄せています。

縦断図

上図のとおり縁側(下屋)の天井裏に配管を通すことになるため、天井板を外して準備しておきます。

居室(室内機設置)側から穿孔することにし、壁穴の中心位置をマークします。

では、振動ドリルにコアドリル(φ65mm)を装着して土壁を穿孔(壁穴も下り勾配になるようにしています)。

アッと言う間に綺麗な壁穴があきました。

土壁は竹を使って下地(竹小舞)が組まれおり、その竹をうまく切れるかどうか心配していたのですが、下写真で朱色矢印のとおりコアドリルの円筒形状そのままに切断されています(チップの研磨がうまく出来ていたことにしましょう^_^)。

同様に、もう一方の土壁も穿孔します。

屋外側に貫通しました。

外壁は杉のシブキ(羽目板)が張ってあるのですが、コアドリルは板も問題なく切断しました。

切り抜いた壁土や板はコアドリル内に残りますので、それらを取り除きます。

板を取り除いたところ、シブキ(羽目板)とともに胴縁(7割程度)まで切断してしまっていることがわかりました・・・。

こうしてあけた壁穴には同じ口径(φ65mm)の保護パイプ(下写真:市販の自在スリーブ)を必ず通すように工事説明書に記載されています。

一般的な中空壁の場合、電気ケーブルなどをネズミにかじられるおそれがあり、それを防ぐためだそうです。
今回は土壁のため、その心配はありませんが、逆に土壁を保護するためにスリーブを通しておくことにします。

スリーブ(合成樹脂製)を壁厚にあわせて塩ビ用ノコでカットします。

壁穴にスリーブを通します。

壁穴は下り勾配がついていますが、スリーブの蛇腹部を変形させることにより任意の勾配に合わせて取り付けられるようになっています(自在スリーブ)。

この土壁の裏側は下写真で竹小舞が見えているとおり裏返し(裏側から壁土をつけること)がされていません。

スリーブを固定するためにも、壁穴の周囲について裏返しを行なっておきます。
荒壁土を少量練ります。

既存の土壁にたっぷり水打ちしたうえ、スリーブの周囲に壁土を塗ります(下写真は乾燥後)。

もう一方の壁は裏返しがされていますが、スリーブを固定するため周囲に壁土を塗っておきます。

実はまだ左官仕事が続きます。
室内機を設置する部屋の壁について、仕上げ塗りがされておらず、室内機を取り付けると壁塗りがしにくくなるので、その前に仕上げ塗りを済ませておくことにします。

上写真のとおり壁の色が白いため、一見すると漆喰で仕上げてあるようにもみえますが、これは下地材(四国化成 ニューSKプラスター)の色です。
この部屋の壁は元々は繊維壁(昭和30〜40年代に塗り替え)で仕上られていたのですが、汚れていたため4年前の改修工事の際、繊維壁を剥がして中塗りの状態まで戻しました。
この部屋も隣接する部屋と同様に珪藻土仕上げにする計画なのですが、エアコンを設置することになるのではないかと思って仕上げ塗りはペンディングにしたのです。
ただ、そのままでは砂つぶが落ちるため、中塗りの上にとりあえず下地材まで塗ってあるわけです。

改修工事が終わって4年目にしてようやく仕上げ塗りです・・・。
仕上げになりますので丁寧に塗ります(上塗り材:キング鈴井商会 エコロジー EC-5)。

こうすると、スリーブの周りも綺麗に仕上がります(室内機を設置すれば見えなくなるのですが)。

本当は全てを壁を塗りたかったのですが、塗り壁材の残りが少なく、とりあえず室内機に隣接する小壁2面のみ塗りました。

これでようやくこれでエアコン(室内機+配管+室外機)を設置する準備ができました。
土壁のため、メインの電気工事よりも左官工事のほうに手間と時間を要しますね。

薪棚設置(5)鼻栓そして完成

前回、材を加工して土蔵の庇下に組みました。

ところで、この薪棚はホゾ組みによる構造としていますが、土蔵への通気を確保するため、外周に土台を回さずに直接、柱を建てています。

一般的な木造建築物のように土台に柱を建てれば、柱は土台により固定されてズレることはありません。
一方、今回のような場合、仕口箇所が緩めば柱がズレてしまうことになります。
木工のような小物であれば仕口にボンドを塗って固定することもできますが、この大きさのものにボンドはさすがに厳しいです。
木造建築物において、ボンドを使わずに仕口を固定する方法はもちろんあり、その一つは「込み栓」と呼ばれるもので、我が家(古民家)でも用いられているのを目にします。

柱を貫通させて仕口に角材を打ち込むことで固定するわけです。
理屈は単純なものの、私のような素人が手を出せるようなものではありません。
角材の代わりに長い釘(コーススレッド)を打ち込んでも、ある程度は同じ役割を果たしそうです。
今回のような薪棚であれば、それで十分かもしれませんが、せっかくホゾ組みにするのに金物を使っては面白くありません。
他に方法はないものかと思っていると、今回薪棚を設置する土蔵の庇の仕口(下写真で朱色矢印)が目につきました。

柱と梁の仕口を「鼻栓」と呼ばれる方法により固定してあります。

「込み栓」は柱を貫通させて角材を打つのに対し、「鼻栓」は柱を突き抜けるようにホゾを長くして柱から出たところに楔状の角材を打つことで仕口を固定するわけです。
これなら私のような素人にもできそうだと思い、材を刻む際、ホゾに鼻栓を打てるようにしてあります。

ところで、この鼻栓用の穴を掘る際、参考にするため土蔵庇の鼻栓をよく見たところ穴が柱側に1分(3mm)程度大きくあいていることに気づきました。

この鼻栓は3年前に大工さんに施工していただいたものですが(写真で材が古く見えるのは古色塗りしてあるためです)、とても間違って穴をあけるような大工さんではありません。
何か理由があるはずだと考えてみると、なるほど!こうしておくと楔を打つごとにホゾが引っ張られて仕口が確実に固定されるわけです。

と言うことで大工さんの真似をし、既に桁や梁のホゾには鼻栓用の穴(30×15mm)を下図のとおり柱側に1分(3mm)ずらして掘りました。

鼻栓の穴に打ち込む楔を準備します。
薪棚の端材(杉)から穴のサイズ(30×15mm)に合わせて15mm厚で木取り。

これを楔状にカット。

こうして作った鼻栓を打ち込みます。

打ち込むごとにホゾが引っ張られてくるのを感じます。
これなら仕口が緩むことはありません。
ただ、上写真のような地面に近い箇所だとホゾや鼻栓が傷みやすいだけでなく、ホゾに蹴躓く可能性もあります。
やはり、本来は土台を回して柱を建てるなり、込み栓により仕口を固定すべきなのでしょう。

こうして仕口は固定できましたが、実はまだ完成ではありません。
下写真で朱色着色で示す箇所に、積んだ薪が崩れないようにするためのストッパー的なものが必要なのです。

筋交いのようなものを入れる手もありますが、この場所に筋交いは無意味なため単純に垂直に2本の角材を入れることにします。

角材は手元にある野縁材(廃材)を再利用することにし、柱と面一になるように梁側を丸ノコを使って切り欠きます。

こうしたところで丸ノコを使うのは大変危険です。
そもそも材の刻み時に加工しておけば、こうした危険はことしなくても済むワケで、設計時に「後で考えれば良い」と思って横着した結果です・・・。

ともあれストッパーの角材を取り付け。

追加分の材にも塗装すれば(オイルステイン:VATON)、薪棚の完成です。

この薪棚は前後に2列積むタイプのため、後列の薪を出し入れできるように後方に通路的なスペース(幅60cm)を設けてあります。
どれだけの幅を確保すれば良いのか設計時に迷いましたが、60cmもあれば十分、薪を持って出入りできそうです。

薪棚が完成したので早速、雨ざらしになっている薪を運んで収納します。

やはり薪棚にちゃんと収納すると良いものです。

今回収納した薪は1年半前に伐採したものです。
前列(下写真で右側)がクロガネモチ(広葉樹)で、後列がスギ(針葉樹)です。

それぞれ1列(2.1×1.4×0.35≒約1m3)におよそ一杯です。
クロガネモチもスギも樹高15m程度の大きな樹だったのですが、薪にすると1本で約1m3になると言うことですね。