古材再利用」タグアーカイブ

ミシン椅子の再生(2)虫喰いの部材を作り直す

前回、亡き祖母のミシン椅子を再生することにしましたが、グラつきが酷いため一旦バラバラに分解しました。

その結果、ホゾが虫喰いにやられていることがわかり、その部材(中貫:下写真で朱色丸印)を新しく作って置き換えることにしました。

既存と同一のものを作るべく中貫の断面を測定すると21×35mmです。
ちょうど古材の松板(主屋の改修工事で発生)の厚さが25mm程度あるため、これから木取りすることにします(手押し・自動カンナを使って21×35mmに)。

椅子の脚がハの字に広がっていることから、その角度で中貫の胴付きに傾斜がついています。
角度は4本(箇所)で微妙に異なっているためプロトラクター(角度定規)を使って角度を写し取って墨付けします。

次にホゾの厚さを墨付けするため、ホゾ穴のほうをノギスで測定すると3分(9mm)であることが判明(ホゾのほうは虫喰いにより痩せています)。
その寸法で墨付けします。

あとは、いつもの通り加工して既存のコピーが完成。

虫喰いにやられていたホゾの部分もしっかりし、これでグラつきは解消されるでしょう。

椅子を分解する際、座板を解体してしまったため座板も新しく作り直す必要があります。

座板は楕円形で、その寸法は344×330mm、板厚は20mmです。
合板から木取りすれば容易なだけでなく強度も得られます。
このため合板を使うつもりでいたのですが、なんとなく手元にある古材(松板)の幅を測ったところ330mm強あって古材からも木取りできます・・・。

手間はかかりますが、古材を優先して使っていくことにします。
幅はあるものの白太に虫喰いが多いため、なるだけ避けるようにして木取りします。

板には反り(木表側)があり、いつもは電気カンナで削って平面を出すようにしていますが、今回は新兵器のベルトサンダー(下写真で右上の機械)を投入!

古民家再生を行なっている方のブログを拝見すると、ベルトサンダーを使っている方が結構みえます。
そんなわけで私も使ってみたかったのですが、フリマで廃盤の中古品が安く出ていて衝動買いしてしまいました。
で、実際に研削した状態が上写真です。
オービダルサンダーなどに比べると研削力が強く、アッと言う間に上写真の状態になりました。
しかし、反りを修正するほど削ることは実際には難しく、結局、電気カンナも併用することに(下写真で左側の機械)。

今思うと、座板に使うならわざわざ反りを修正する必要なんてありませんね・・・。
こうした場合はベルトサンダーだけで十分ですし、ベルトサンダーは電気カンナよりも扱いやすいため古材の再利用に弾みがつきそうです。

そんなことで板の準備ができました。

これに楕円(344×330mm)を墨付けします。
CADで出力して、それをトレースしても良いのですが、ここは昔習った楕円(2点:焦点からの距離の和が一定の点をつらねた曲線)の描き方により墨付けします。

墨線に沿ってジグソーでカット。

あと、座板と脚を固定するため脚側にホゾ(下写真で朱色四角)があったのですが、分解する際に釘が抜けずに釘もろとも切ってしまっています。

付け足すわけにはいきませんので、脚の長さが少し短くなることを承知のうえ刻み直します。

これで全ての部材が揃いました。

ミシン椅子の再生(1)ホゾの虫喰い

前回、長椅子(縁台)を新しく作り直しました。

Before
After

長椅子は新しく作り直しましたが、環境負荷の低減のためにも再生できるものは再生して使い続けるようにしたいと思っています。
で、この長椅子とは別に再生して使えるようにしたいと思っている椅子があり、それが下写真のものです。

これは亡き祖母が使っていたミシン椅子です。
背もたれがなければ普通の南京椅子(丸椅子)ですが、背もたれの作りがなかなか良く、ぜひ再生させて使うようにしたいと思っているのです。

ちなみにミシン本体のほうは2年前にテーブルとして再生しました(テレビ台として使っています)。

その際、椅子もと思っていたのですが、椅子のほうに着手するまでに2年近くを要しました・・・。

まず、椅子の状態を確認。
背もたれにシールの跡があります。

父や叔母が幼少時に貼ったのでしょう。
シール剥がしはシンナーを使えば楽勝でしょう。

そして、座面の布地が全体に擦り減って酷いところは破れています。

布地の張り替えについては、経験はないものの、椅子用の布地が市販されているためDIYにて張り替えができそうです。

と言うことで、外観からは容易に再生できそうな感じです。
しかし、実際に座ってみると半端ないグラつきがあるのです。
原因は脚のホゾが緩んでいるためで、よく見ると既にホゾに釘を打って修理した跡もあります。
ここまで来ると間に合わせの措置では済みそうになく、詳細を調べるためにも一旦、全体を分解してみることにします。
まずは座のクッション材を取り外します。

昔はクッション材も当然自然素材です(今は発泡ウレタン)。
何の素材が使われているのかわかりませんが、植物繊維のようです(上写真は裏面で、カンナ屑で高さ調整がされています)。

次に座板を外そうとするも、脚に対して打ちつけてある釘がどうしても抜けません。

止むを得ず強引に撤去(釘はレシプロソーで切断)。

座板を新しく作り直す必要がありますが、座板は真円ではなく微妙に楕円形になっています。
脚の取り付け位置とともに型取りしておきます。

ホゾで組んであるところを分解していきます。

ボンドが使われていないため容易に分解できます。
今のようにボンドが使われていると実質、分解(修理)は不可能で、結果、使い捨てにならざるを得ないわけです。

グラついていたところのホゾを分解すると、ホゾが虫に喰われています・・・。
これではグラついて当然です。

このグラつきを止めるため上写真で朱色矢印の方向で釘が打たれていました。
亡き父が打ったのだと思いますが、ここに打っても直ぐに効かなくなるはずです。
私が釘を打つなら、楔を打つようにホゾの正面に向かって打つと思います。
とは言え、このような虫喰いがあっては、どのように釘を打とうとも無駄でしょう。

そこで、ホゾが虫に喰われている中貫(下写真で朱色丸印)を新しく作って置き換えることにします(ホゾ穴:脚のほうには虫喰いはありません)。

ところで、この椅子のように曲線をもつ部材を立体的に組み合わせてあるものを見ると、私のような素人には超複雑に感じます。

そこで、今回分解した機会に一部のみを組んで単純(平面)化してみます。

上写真のとおり2本の脚は平面上に組まれています。
これと同じものを直角に組めば丸椅子の脚ができるわけです。
背もたれ部分は別にしても、南京椅子(丸椅子)なら私にも作れそうな気になってきます!

ところが、もうひと組のものが上写真とまったく同じ形状をしていると思い、それぞれを重ねてみると下写真のとおり微妙に形が違うのです。

おそらく木取りの関係から、こうした形になったのだと思いますが、それでも立体的にきちんと組み上げられているのです(まさに職人技!)。
一方、現在のような大量生産においては、誰でも組み立てができるように、材が余分に必要になろうとも設計図通りに木取りするのではないかと思います。