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仏間の改修(1)仏壇を移動

今年の夏、下写真の薪棚を作りました。

薪の消費量に対し、この薪棚の容量だけでは足りず、あと2箇所の薪棚を設置する計画です。
その内の1箇所は下写真のとおり主屋(古民家)の軒下を有効利用する形で設けたいと考えています。

ところで、この場所は4年前の改修工事において減築した箇所(下写真で朱色破線)にあたります。

減築に伴い、上写真で手前側については外壁を新設したため、その際に床下換気口(特大サイズ)を設けてもらいました。
一方、奥側(薪棚設置予定箇所)については元々あった内壁(土壁)を外壁にしたことから床下換気口がありません。
ここに薪棚ができると床下換気口の設置工事が難しくなっていまうので、薪棚に先んじて床下換気口を設置するのが良さそうです。

床下換気口を設けるにはコアドリル(φ110mm)で土壁を穿孔しますが、柱や土台を避けるため慎重に穿孔位置を決定する必要があります。
この屋内側は仏間(下写真)で、その床下を確認すれば一目瞭然なのですが・・・。

実は仏壇が一間幅のラージサイズで重量があるのか、どうしても動かせないのです。
このため、4年前の改修工事の際は仏像や位牌などの中身だけ移動して仏壇は残置した状態(下写真で朱色矢印)で工事していただきました。

柱や土台などの構造部分は四方から工事していただけたのですが、天井や壁、床の内装部分は仏壇があるため手付かずの状態のままです。
他と同様に酷い状態なのだと思いますが、仏間がどうなっていようと日常生活に支障がないことを良いことに知らぬふりをしている有り様です・・・。

ところで、私自身が理想の家と考えるのは鴨長明の方丈庵です。
方丈庵は約3m四方の小さく粗末な家で、四方の壁(土壁)さえもなかったそうです。
そんな何もない家にも関わらず、最も奥の上座には仏像の掛け軸が掛けられ、読経するスペースが設けられていたとのこと。
物や金銭、名利を追い求めたところで結局得られるのは虚しさだけであることは方丈庵を見るまでもなく承知しているはずなのですが、慌ただしい現代の生活にかまけて実際には真逆の方向に向かっているのが正直なところです。
こうした反省もあって、やはり家には方丈庵を倣って日々の生活において心を静かにする場が必要なのではないかと感じています。
我が家でそのような役割を担うのが仏間になりますが、その天井や床が落ちていては心も穏やかになりませんので、この機会に、どうにかして仏壇を移動して修繕すべきは修繕することにします。

何はともあれ仏壇の移動です。
秘密兵器として、家具を移動するための「トローリー」なるものを使ってみることにします。

ホームセンターで購入するつもりでしたが、百均でパチもんが1個100円で売っていましたので、それを2個購入しました。

トローリーに仏壇を載せて前方の部屋に引き出すとして、部屋の畳をはずします。
そこに仏間と同一レベルの道(仮床)を設けてトローリーがスムーズに走れるようにします。

角材を組んで合板を張ります。

角材の高さを調整して仏間側のレベルに合わせます。

早速、仏壇の下にトローリーを差し込みたいところですが、実は長押と仏壇(上端)とのクリアランスが小さくて無理なのです。

仕方なく、ある程度のところまで仏壇を引きずって前に出します。

長押と仏壇(上端)との間はギリギリです。

ここまで出せれば、あとはトローリーに載せて移動できます。

こうして何とか仏壇を仏間から出すことができました。

これまでどうしても動かせなかった仏壇ですが、今回移動させたことで、その原因がわかりました。
実は仏壇が下図(側面図)のとおり奥の壁に接して据え付けられており、それをこれまでは手前を持ち上げようとしていたため微動だにしなかったのです。

側面図

なぜ仏壇が壁に接して据え付けられているのかと言うと、仏壇の奥行きが仏間に対して大きく、そうでもしないと仏壇が前方に飛び出してしまうためのようです(それでも一部が敷居に載っている状態)。
この仏壇(明治18年製)は主屋(明治44年築)よりも古いもので、サイズの基準が先代の主屋をベースにしているようです。

いずれにせよ、仏壇を移動したことで仏間の状態を確認できるようになりました。

まず目につくのは土壁に生じている割れ目です。
割れ目の形状や間隔から貫伏せの箇所(壁土の塗り厚が薄い)で生じているようです。

割れ目からも貫と思われる木材が確認できます。

昭和東南海地震(昭和19年)で土壁に亀裂が入ったと聞いていますので、そのときに生じたものなのかもしれません。

下写真のように欠けているところもありますが、これは地震ではなくネズミが齧ったものでしょう。

床のほうに目を移すと、ゴミが散乱していて汚れていますが、床板はしっかりしています。

一方、天井はどうでしょうか?

写真でみると悪くないようにもみえますが、実は中央付近から天井が落ちかけています。

天井を支えている廻り縁が腐朽しているのです。

雨漏りの形跡はないのですが、なぜこれほど腐朽しているのか??
以前、仏間の裏側に廊下があったのですが、裏側を通るのは良くないとのことで締め切って荷物置き場になっていたのです。
当然、換気も良いはずがなく、こうした腐朽を進めてしまったようです。

これでは新しく作り直すしかありませんので撤去します。
屋根は4年前の改修工事により新しくなっているものの、天井には100年以上にわたるゴミや埃が積もっおり、たかが1畳の広さですが全身埃まみれになっての作業です・・・。

それでも無事撤去。
作り直す際の参考にするため撤去した廻り縁を確認します。

腐朽部分です。

部材同士は下写真のホゾで組まれています。

奥から手前に向かって部材を積み重ねて組んでいくようになっています。
適当に釘留めしてあるのかと思いましたが、仕事が丁寧です。

柱側を確認すると、廻り縁を取り付けるための切り欠きが設けられています。

同様にして廻り縁を作り直すとし、採寸して図面を起こします。

手間はかかりますが、部材同士の組み方も当初のものを倣っています。

廻り縁に使う材は、手元にある垂木材(75×45mm)を半分に挽き割って使うことにします(→35×45mm)。

この垂木材は亡き父が農作業用に使っていたものですが、節が少なくて廻り縁にするのにちょうど良かったです。

木取りした材にホゾ穴をあけます。

次にホゾを加工。

ホゾ穴にホゾをのせる形で組むことになります。

見える2面にヤスリがけして部材の完成です。

まずは、奥側の廻り縁を柱の切り欠き部にビス留めして取り付けます。

次に両側面の廻り縁(ホゾ)を先の廻り縁(ホゾ穴)にのせる形で取り付けます。

これらに手前側の廻り縁をのせれば、四方に廻り縁をまわせたことになります。

この廻り縁の上に板を張れば天井になります。

古民家の自然換気(46)エアコン設置③エアパージ&ポンプダウン

前回、新しく設置するエアコンの配管(冷媒管&ドレーン)と配線(電気)を行いました。

早速、エアコンのスイッチを入れたくなりますが、その前に「エアパージ」と呼ばれる作業を行なっておく必要があります。

ところで、エアコンは液体が蒸発(気化)するときに周囲の熱(気化熱)を奪う性質を利用して冷房します。

液体(冷媒)には悪名高いフロン(環境負荷低減のため代替フロンに移行、今回のエアコンにはR32代替フロン)が用いられています。
このフロンガスはエアコン出荷時には室外機に充填された状態になっています。

一方、室内機や配管の中にあるのは空気のため、室内機や配管に冷媒(フロンガス)を充填させる際に空気(Air)を除去(Purge)する必要があります。
空気を除去(エアパージ)するには、私のような素人考えでは下図のとおり室外機側のバルブを開けて冷媒を流すとともに、室内機や配管内の空気を押し出してやれば良いのではないかと考えます。

しかし、こうするとオゾン層を破壊するフロンガスを大気中に放出する可能性がありますし、冷媒と空気が混ざると爆発の危険性もあるそうです。
このためエアパージは、前もって室内機と配管内を真空引き(真空ポンプ使用)する方法で行うものとされています。

と言うことで、エアパージを行うために真空ポンプと、真空状態を確認するための圧力計(マニホールドゲージ)が必要になります。
もちろん持っていませんので、新たに購入(中古品)し、これを室外機の配管接続口に接続します。

室外機の配管接続口(戻り配管側)には真空引き用の接続口(サービスポート)が用意されているため、そこに真空ポンプのチャージホース(上・下写真で青色のホース)を接続することになります。

このとき、往き・戻り配管にそれぞれあるバルブは閉(出荷時の状態)になっています。

サービスポートと真空ポンプとの間には下写真のマニホールドゲージを入れ、配管内の圧力を確認できるようにしてあります(今回使用するのは青色側:低圧側)。

現在、針は0(大気圧=1気圧ですが、大気圧比のため0表示)を指しています。

真空ポンプを運転させ、しばらくするとマニホールドゲージの針は下写真のとおり-30inHgを指すように。

「inHg」とは見慣れない単位ですが、WikiPediaで調べると「水銀柱インチ」とのこと。

1気圧=760mmHg=760/25.4inHg≒30inHg

つまり、-30inHgで真空状態(-1気圧)と言うことです。
エアコンの工事説明書に「マニホールドゲージが-1気圧に達したのち15分程度、真空ポンプの運転を続ける」とありますので従いします。

15分経過後、真空ポンプを停止。
室内機や配管内は真空状態になっているはずです。
しばらくマニホールゲージの針が安定していることを確認したうえ、戻り配管側のバルブを開けて冷媒(代替フロン)を室内機及び配管内に充填します。

真空ポンプのチャージホースを外し、往き配管側のバルブも全開。

配管の継ぎ手部でガス漏れがないことを確認して(今回は石鹸水を使用)エアパージ完了です。

これでようやくエアコンを運転できます。
早速リモコンのスイッチをON!

無事、冷えた空気が出てきて一安心です。

試運転と称し、このまま冷房の効いた部屋にいたいところですが、まだ工事が残っています。
配管の継ぎ手部はガス漏れがないことを確認する必要があったため、まだ断熱材を施してありません。

上写真はエアコン運転中のものですが、銅管表面がビッシリと結露しており、断熱材の必要性がよくわかります。

断熱材を巻き、ドレーンとともに架台に固定しておきます。

屋外部の配管は、保護テープ(断熱材の紫外線劣化防止)を巻いうえサドルバンドを用いて外壁に固定します。

配管と室外機の設置状況。

上写真で左手は既設のもので、施工は家電量販店の下請け業者によるものです。
こうして比べてみると、見た目に関しては今回施工したほうが美しいと自己満足^_^

既設のエアコンは今のところ問題なく動作するのですが、専用工具(売却予定)が揃っている今のうちに撤去することにします。
撤去は適当に配管をはずせば良いだけのように思いますが、それだとフロンガスを大気中に放出してしまいます。
このため、設置したときとは逆に、室内機や配管内に残っている冷媒を室外機に回収する作業(ポンプダウン)が必要になります。

ポンプダウンを行うため、往き配管側のバルブを閉じ、戻り配管側にあるサービスポートにマニホールドゲージ を接続します。

このとき、マニホールドーゲージの針は下写真のとおり示し、冷媒による圧力が作用していることがわかります。

エアコンを強制運転させ、室内機及び配管内の冷媒を室外機に回収していきます。
冷媒の回収に伴い配管内の圧力は下がっていき、マニホールゲージの針は真空状態(-30inHg)を示すように。

これで冷媒が室外機に回収されたことになりますので、バルブを閉じたうえエアコンの運転を停止します。

配管及び電気ケーブルを取り外します。

20年近く頑張って働いてくれたことに感謝し、ひととおり掃除しておきましょう。

ところで、今回エアコンを設置した部屋ですが、室内機を取り付ける前に隣接する2面の壁は仕上げ塗りを行いましたが、他の壁は壁材が足りなかったため、そのままの状態(中塗りに下地材を塗った状態)になっています。
その後、壁材(珪藻土)が届いたことから、残りの壁も仕上げ塗りを行います。

コテ使いが多少上達し、素人でもそれなりに仕上げられるようになってきました。

ただ、コンセントとの狭い隙間は手持ちのコテが入らず、指で塗ると言ういい加減さです・・・。

ともあれ、主屋(古民家)の改修工事から4年が経ってようやく仕上げ塗りとエアコン設置ができました。

ところで、ブログの最初で「エアコン設置をDIY施工しても金銭面でのメリットはない」と書きましたが、今回のエアコン設置に要した費用をまとめると下表のとおりです。

真空ポンプやトルクレンチと言った特殊な工具は中古品を購入し、施工後に同じくらいの金額で売却できたことから送料や売却に係る手数料として約5,000円を計上しています。
エアコン本体は別として、取り付けに要した費用が約15,000円(=材料費9,500+工具5,000円)になります。
家電量販店などでは取り付け工事費を15,000円〜としているところが多いように思いますが、DIY施工でもそれと同程度の費用を要することから金銭面でのメリットはなさそうです(家電量販店から取り付け工事を下請けしている電気工事屋さんの利益も少ないものと思われます)。