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屋根裏へ地デジアンテナを設置

今年の夏、畳敷きの一角を避暑部屋にするため、エアコンとともにテレビを設置しました。

テレビの電波はケーブルテレビを通じて受信しており、その引込口は主屋の表側(南東角)にあります。

4年前に改修工事を行うまでは、ケーブルテレビのほかにも電気や電話のケーブルも主屋の表側に輻輳していたのですが、こうした目障りなものがあるとボロ屋が一層ボロくみえてしまうため改修工事の際に電気屋さんにスッキリ整理していただきました。
ケーブルテレビの引込線だけが残っているのは、いずれアンテナに移行したいと考えており、そうすれば引込線自体を撤去できるためです。

ところで、我が家は小高い丘状のところに所在することもあってアンテナでもテレビ電波を良好に受信できます。
このため、20年程前にケーブルテレビが供用開始した際には加入しなかったのですが、近所の家からアンテナが撤去されていくなか我が家だけアンテナが立っているのは恥ずかしいと後から加入したと言う経緯があります。
ケーブルテレビだと地上波のみならずBBCやCNNと言った海外放送や映画・スポーツ専門チャンネルも視聴できますが、我が家にそのような教養や趣味をもつ者はおらず宝の持ち腐れです。
それにアンテナであればNHKの受信料は別として月々の料金なんて要りませんし、近年は外観を損なわない平面アンテナが普及していることからケーブルテレビからアンテナに戻りたいと考えているのです。
とは言え、私自身、テレビ(のコンテンツ)に関心がないこともあって、なかなか手をつけられずにいましたが、テレビの設置場所が固まったことからアンテナの導入に向けて着手することにします。

まずは現状の把握から。

平面図

ケーブルテレビのケーブルを主屋の南東角から引き込み、同軸ケーブル(5C)を厨子二階(屋根裏)の床上に配線。途中で分配して2箇所のテレビにつなげています。

次にアンテナの設置位置を検討します。
アンテナは当然、電波塔の方角に向ける必要があります。
テレビの電波は昔のまま名古屋のテレビ塔から発信されているのだろうと思っていたのですが、今回調べて2003年から瀬戸デジタルタワー(愛知県瀬戸市)に移っていることを知りました。
瀬戸デジタルタワー(35° 11′N, 137° 4′E)と自宅のそれぞれの緯度経度から三角関数を駆使して!?方位角を算出すると約50°であることが分かります。

旧VHFチャンネルの電波は瀬戸デジタルタワーから発信されていますが、旧UHFチャンネル(県内向けのローカル局)は県内(長谷山)のテレビ送信所からです。
この方位角も同様に算出すると約219°となり、瀬戸デジタルタワーとほぼ真逆になります。
このため、両方を受信するにはアンテナを2箇所設置する必要がありそうです。
旧UHFチャンネルは見られなくても構わないように思いますが、テレビフリークほどそうしたチャンネルを好む傾向にあるのでどうしたものか・・・。

アンテナの設置場所については、平面アンテナにする予定のため設置が容易となる屋根の妻面(東側)にすると良さそうです。
東側の妻面に取り付ければ、下図で朱色矢印で示すとおり瀬戸デジタルタワー(旧VHFチャンネル)の方角に向けられます。

一方、津テレビ送信所(旧UHFチャンネル)については、別のアンテナを南側の壁に設置するしかなそうです(上図で青色矢印)。
外観的にも主屋の表側になって目につきやすい場所のため、やはりこちらは見送りたいです。

平面アンテナは下写真のDXアンテナ社のもの(UAH201)を購入(ネット通販で6,000円弱)。

電波が良好な場所(のはず)のためブースターが搭載されていない強・中電界地域用(従来の八木式アンテナ20素子に相当)のものにしました。
また、デザインアンテナだけあって数種類の色の設定があり、外壁(板張り+オーク色で塗装)に合わせてブラックブラウン(黒と茶色の中間)を選択しました(売れ筋はホワイトのようで大手家電量販店系SHOPにも関わらず届くまでにひと月近くかかりました・・・)。

届いたアンテナを外壁に取り付ける前に厨子二階(屋根裏)にて電波の受信状況をチェックしてみることにします。
と言うのは、電波が良好な場合、屋根裏であっても受信できると聞いたことがあるからです。
何しろ、我が家の厨子二階(屋根裏)は広く、至るところに隙間があって半屋外のようなものですから(下写真は厨子二階に設置してある薪ストーブの煙道部)。

アンテナとテレビを持って厨子二階に上がり、アンテナとテレビを接続。
そして、アンテナを瀬戸デジタルタワーの方角に向けます(iPhoneのコンパスアプリが便利です)。

そうすると全然問題なくテレビが映ります!

テレビの設定画面でアンテナレベルを確認できるようになっており、それを見ても62(30以上で映り、43以上を推奨)と十分な値(ケーブルテレビでも60前後)です。

このため、アンテナは厨子二階に設置することに変更し、アンテナを持って歩いてアンテナレベルが高くなるところを探ります。
そうすると意外にも場所によって大きな差があり、それを図示すると下図のようになります。

平面図

電波塔と逆(南側)の壁に近づくとほとんど映らなくなることから、電波は建物に入ると大きく減衰するようです。
アンテナレベルが高い北側の壁沿いについて、西に行くほど小さくなるのはその方向に鉄骨倉庫があるためだと思います。

と言うことで、アンテナレベルが最も大きくなる北東の角にアンテナを設置することに決定。
アンテナを取り付けるための柱を立てます。

上下の位置については、理屈では高いほど良くなるはずですが、実際には屋根により阻害されるようで、上写真で金具を取り付けてあるところが最もアンテナレベルが高くなりました。

アンテナを取り付け、瀬戸デジタルタワーの方角に向けて固定します(方角については計算通りの50°で最大値を示しました)。

屋内へのアンテナ設置であれば台風などの影響を受けませんし、アンテナ自体も長持ちしてくれそうです。
5年ほど前、柴などが大量に置かれたままになっていた厨子二階を苦労して片付けたのですが、こうして厨子二階の空間が活用されると苦労が報われるように感じます(厨子二階の空間を利用して、まだまだ遊べそうです^_^)。

アンテナを本設したため、改めてアンテナレベルを確認。

64とケーブルテレビのときよりも高くなっています(高くても映像が綺麗になるわけではありませんが)。

アンテナを愛知県のほうに向けているため、本来は放送エリアではない愛知県のローカルテレビ局まで映ります(アンテナレベルは39と低い)。

でも映ってほしいのは愛知県ではなく三重県内のローカル局です。
県内のローカル局は電波塔の方角が逆のため無理とは思いつつチャンネルをかえてみると・・・。

アンテナレベルは若干低い(46)ものの問題なく映ります!
電波塔が近くて電波が強いこともありますが、どうも平面アンテナは裏面からも電波を拾うことができるようです。
アンテナを2本設置するしかないと思っていましたので、労力・費用の面で助かります(費用に関してはケーブルテレビを受信し続けることに比べれば安いものですが)。

ケーブルテレビの引込箇所から離れた場所にアンテナを設置したことから、各テレビへの配線を下図のとおり変更することにします。

元の配線材料を流用し、同軸ケーブル(S-5C-FB、下写真で黒色のケーブル)を床上に敷設し、接栓(継手)を使って器具(アンテナ、テレビ等)と接続します。

こうしてきちんと配線すると気持ち良いものです(電気や電話の配線(上写真で灰色のケーブル)がまだ仮状態ですが・・・)。

テレビが2箇所あるため、配線の途中で下写真の分配器(500円程度)を使って分岐させています(分配器を入れるとアンテナレベルが低下します)。

配線に関しては今話題?の4K8Kテレビにも対応できるレベルのものになっていると思いますが、古民家や里山の生活においてそうしたものは無用の長物(かえって邪魔になるもの)でしょう。

古民家の自然換気(47)錆壁!?

先般、仏間の改修がとりあえず完了しました。

この改修において壁を仕上げましたが、実はまだ主屋(古民家)で壁を仕上げなければならないところが残っているのです。
それは、LDKの垂れ壁(丸太梁の上部)です。

LDKのうちDK部分は、20年程前のリフォームにより今風の石膏ボード+クロス貼りの吊り天井になっていたのですが、採光と自然換気を図るため、昔の状態(奈良天井)に戻すとともに一部に竹天井を配置しました(一昨年の夏に施工)。

昔の奈良(大和)天井に戻すことによって問題になったのが、20年程前のリフォームにより一部が取り壊された土壁です。

土壁も元の状態に戻すべく、昨年の夏に下地(竹小舞)を組んだうえ、荒壁をつけて大直しまで行い、現在、下写真の状態になっています。

荒壁でも壁としての機能は果たすため、中塗り以降の仕上げについては追い追いやれば良いと考えていました(全部が荒壁で統一されていれば、見た目的にも無骨でカッコ良いです)。
今回、仏間の改修において中塗り・上塗りを行なったことから、そのついでに、この垂れ壁についても中塗り・上塗りを行なって仕上げることにします。

下写真で上側の土壁は残存していた部分で、上塗りの漆喰を剥がして中塗りの状態になっています。

しかし、その断面をよく見ると下図のようになっており、下層にさらに(薄汚れた)漆喰の層があります。

昔、煤汚れなどで壁が汚れて塗り直した際、既存の漆喰を剥がさず、その上に塗り重ねたようです。
漆喰を剥がすのは容易ですが、剥がす際、周囲に埃が舞うので、それを嫌って塗り重ねることにしたのでしょう。
それは理解できるとしても、おや?と思うのが重ね塗りする際、既存の漆喰の上に直接漆喰を塗るのではなく、中塗りの層を挟んでいる点です。
これは(乾燥した)漆喰の上は水引きが早く塗るのが難しいため、中塗りを挟むことで解決したのかもしれません。
今なら化学製品のシーラーや添加剤を使うところですが、このようなものが無かった昔はこうして漆喰の重ね塗りを行なったわけです。

先人の工夫が偲ばれる箇所ですが、今回さらに塗り重ねると剥離等の悪影響が生じるかもしれませんので、この機会に全て剥がして当初の中塗りの層まで戻しておきます。

早速、中塗りしたいところですが、ここは元々、天井が無かったところ(厨子二階に柴を出し入れする開口部)で見切りになるものがないため、その手当を行う必要があります。
両側の隣接箇所と同じような外観になるように廻り縁を入れることにします。
その材として使うのは、先の仏間の改修において巾木として再利用できなかった古材(20年程前に解体した離れの床脇の床材)です。

必要なサイズでカットし、プレナーにかけて表面を整えます(下写真で上側:加工前、下側:加工後)。

柿渋に顔料(弁柄等)を加えて古色塗りします。

この廻り縁を天井板から吊り下げる形で取り付けることにし、天井裏側からビス留めします。

ただ、これだけでは安定しなかたため、居室側からも柱に対してビス留めして固定しました(ビス頭が見えてしまいます・・・)。

この廻り縁を見切りにして中塗りしていくことになります。

いつもの通り中塗土を練って中塗りします。

上写真は中塗り後、ひと月程度経過してから撮影したものです。

左側の壁のアップが下写真です。

今回も藁スサの混入を省略しましたが、ヒビ割れが生じることもなく良い感じに仕上がっています。

ところが、右側の壁が下写真の状態です・・・。

茶色く変色し、ひと月前に塗ったにも関わらず、早くも古壁の様相です。
実は、こちらの壁土には前週に行った仏間の中塗りで余ったものを使ったのですが、練り直すのに少量だったため農作業で使っているサビた移植ゴテを使ってしまったのです。
つまり、その鉄分が移った壁土が壁塗り後、空気に触れることで酸化して変色に至ったわけです(壁チリの周囲が変色していないのは空気の対流が少ないためだと思います)。
千利休の茶室の壁は「錆壁」と言って、敢えて鉄分の多い土を使ったそうですし(「侘び寂び」ならぬ「侘び錆」!?)、これはこれで風情があって良いかもしれません。
しかし、今回は他の壁と統一して漆喰で上塗りする予定で、真っ白の漆喰にサビが悪さをするのではないのかと、今更ながら移植ゴテを使ったことを後悔・・・。

サビの影響を抑えるには、上塗りする前にシーラーを全面に塗布してブロックするしかなさそうです(もう1層塗り重ねる手もありますが)。
市販されている漆喰用シーラーの成分は酢酸ビニル樹脂で、木工用ボンドと同じです。
こうした合成樹脂を土壁に塗布するのは可能であれば避けたいのですが(土壁の調湿機能も半減!?)、やむをえません。

今回は使用量が少ないため、木工用ボンドを水で希釈して使うことにします(漆喰用シーラーは購入しても安価です)。

壁にペンキを塗るようにローラーで塗布します。

漆喰(特に土壁に塗る場合)は水引きが早いため、私のような素人にとっては扱いにくいのですが、シーラーを塗ると水引きが抑えられて塗りやすくなると言うメリットもあります。
漆喰自体も素人向けに塗りやすくしたものが市販されていますが(とても高額)、そうしたものは酢酸ビニル樹脂や合成セルロースなどを添加して水引きを抑えているのではないかと思います。

漆喰は安価な「大和漆喰」(プレミックスタイプ)を練って使います(3年程前に購入・使用して余ったものですが、固結や劣化等は特段ありませんでした)。

練った漆喰を、これまたいつものとおりサッと軽く塗って仕上げます(漆喰でも押さえません)。

押さえないため、中塗りに凸凹があっても誤魔化しがききますし、表面のテクスチャーも珪藻土のような自然な感じになるため、私のような素人にとって良い塗り方だと思います。

と言うことで完成です。

竹天井のところも良い感じに仕上がりました。

クロス貼りの天井を解体したのが2年前の春ですので、2年以上もかかって完成しました。
しかし、本来の目的である「自然換気」のテーマはまだまだ続く予定です。