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古民家の自然換気(45)エアコン設置②配管&配線

前回、エアコンを設置するため小壁(土壁)に配管用の穴(φ65mm)をあけました。

次に室内機の設置箇所に取付板(付属品)をビス留めすることになりますが、土壁に直接ビス留めすることはできません。
こうした場合のために、たて桟(600円程度)と呼ばれるものが別売されており、これを使うと土壁の上・下にある木材部にビス留めできるようになります。
ただ、市販のものは色が白のため、木材の古色に対して目立たないように黒色(ツヤ消し)で塗装しておきます(黒色のスプレー塗料が無かったため、煙突のメンテに使っている耐熱塗料を使用)。

スプレー塗料は手軽で、しかも綺麗に塗装できるので魅力的です。
しかし、こうした塗料(合成樹脂塗料)は超マイクロ・プラスティックなわけで、なるべく飛散させないように段ボールで周囲を囲んで塗装するようにしています。

こうして塗装した、たて桟を木部にビス留めしたうえ室内機の取付板を取り付けます。

たて桟を黒色に塗装したことにより、木部に対しては目立たなくなったものの、壁(珪藻土)の白色に対して目立つようになりました・・・。

続いて、室内機本体を準備します。
工事説明書に従って電気ケーブル(別売り、VVF2.0×3C)を室内機に接続し、冷媒管・ドレーンとともにビニールテープで巻いてまとめます。

壁内に収まる区間には配管保護テープ(別売り)を巻いておきます。

配管を壁穴に通しつつ室内機を取り付け。

室内機は見た目以上に軽いため取り付けは容易です。

配管(特にドレーン)で重要な点は逆勾配にしないことです(工事説明書には1/25以上の勾配)。

1/25の勾配をとることを考慮して2箇所の壁穴をあけてありますが、そのままでは途中の配管が垂れ下がって凹状になってしまいます(水が溜まって漏水の原因になる)。
一定勾配で配管を支持するための架台を木材を使って作ります。

この架台を天井板の上に設置します。

室内機から出る配管の長さは上写真のとおり1mもありません。
別途、室外機の設置場所に応じて必要な長さの配管(冷媒管&ドレーン)を調達して接続することになります。
今回は、それぞれ長さ4mの冷媒管(下写真で左側、3,000円弱)とドレーン(右側、500円程度)をホームセンターで購入。

冷媒管は断熱材が施されたナマシ銅管で、口径が2分(2/8in.=6.35mm、往き配管)と3分(3/8in.=9.62mm、戻り配管)のものがペアになっています(ペアの銅管がコイル状に巻かれているため「ペアコイル」の名称で市販されています)。

銅管と言ってもロウ(ハンダ)付けによる接合は必要なく、管端がラッパ状にフレア加工されており、袋ナットを締め付けるだけで容易に接合できるようになっています。

しかも、なまし銅管のため自在に曲げることができます。
ただ、きつく曲げすぎると座屈してしまうため注意が必要です。
ペアコイルなどを製造している因幡電工のサイトで最小曲げ半径を調べると次のとおり記載されています。

今回(φ6.35mmとφ9.52mm)は半径58mm以上で曲げれば良いことになりますので、曲がり部を前もって加工しておきます(蚊取り線香の缶を使用)。

このペアコイルを室内機側の銅管と接続します。

管端はフレア加工がされているため袋ナットを締め付けるだけで接合できるのですが、注意しなければならないのは締め付け時の力加減(トルク)です。
弱すぎるのはもちろんのこと、強すぎてもフレア部を壊してガス漏れの原因になってしまうのだそうです。
このため、口径に応じた適正な締め付けトルク(ナット径17mm:17.2N・m、22mm:39.9N・m)が規定されており、この値で締め付けられるトルクレンチ(エアコン配管専用)と言うものがあります。
トルクレンチは高価(新品だと1本1万円程度)なため、一般的なスパナで済ませたくなりますが、私のような素人が適当な力加減で締め付ければガス漏れすること必至ですので仕方なく購入(中古品)。

上写真で上の2本が一般的なスパナで、下の2本が同径のトルクレンチです(「スパナ:spanner」はイギリス英語、「レンチ:wrench」はアメリカ英語の違いだけで同じものを指しますが、トルクスパナとは言わないようです)。

こうして接続したペアコイルを室外機設置予定箇所まで配管します。

次に室外機を設置する準備にかかります。
室外機は樹脂製の架台(1個100円程度)に載せますが、それだけでは不安定なため基礎として建築ブロックを据えます。

何事も基礎が大事です。
レベルで水平を確認したうえ、周囲を壁土で締め固めておきます。

そして、室外機を据え付けます(室外機×樹脂製架台、架台×建築ブロックをビスで連結)。

室外機の接続口にペアコイル及び電気ケーブルを接続します(ペアコイルの接続にはトルクレンチを使用)。

この接続によって電気面でも室内機と室外機の間が繋がったことになります。
電気は室内機側にある電源プラグから取るようになっており、今回は100V機種のため近くのコンセント(100V15A)に繋げなくもありません。
しかし、消費電力の多いエアコンは専用線を敷設し、そこから電気を取るようにすべきかと思います。

と言うことで、専用線の敷設に必要になるブレーカ(下写真で黒色、分電盤に増設)、VVFケーブル(1.6×2C)及び露出型コンセント(室内機の近くに設置)をホームセンターで購入。

ちなみに、ここからの施工には電気工事士の資格が必要になります(私自身はペーパー電気工事士)。
サービスブレーカ(下写真で左手)と漏電遮断機(主幹ブレーカ、中央)を切った(OFF)うえ分電盤のカバーを取り外します。

中を見ると、単相200V 3線式で引き込まれており、分岐ブレーカの各取り付け箇所でそれぞれ200Vか100Vに切り替えられるようになっています。
このため、今回設置するエアコンを200V仕様にする手もあったのですが、ペーパー電気工事士には100Vしておいたほうが安全でしょう(そもそもエアコンの設置台数が少ないため100Vで対応可能)。

100Vに設定したうえ新しいブレーカ(20A)を取り付けます。
そして、壁裏からVVFケーブルを引き出してブレーカに結線。

始端をブレーカに繋いだVVFケーブルを室内機の近くまで配線していきます。

厨子二階(屋根裏)は、こうした電気ケーブルなどの管理用スペースとしています。
点検・管理しやすいルートを選定して敷設します。

室内機の設置箇所の近くで1階に下ろします。

終端に取り付ける露出型コンセントは、電線の先端を輪っか状に加工して結線しなければなりません。
この輪作りがなかなか難しいのですが、工具(下写真で左側、ケーブルストリッパーと兼用)を使えばペーパー電気工事士でもベテランの手によるかのような綺麗な輪っかが作れます。

そして、室内機の近くにコンセントを取り付けます。
ここでブレーカを入れ(ON)、テスターを使ってコンセントに100Vがきていることを確認するところですが、肝心のテスターがどこかにいって見つからない・・・。
そこで、代わりに検電器(下写真でペンの形状をしたもの)を使ってコンセントの片口(非接地側)のみが充電されていること(検電器のランプが点灯)を確認します(これで少なくとも、200Vで誤接続してエアコンを使う前に壊してしまったなんてことを防げます)。

このコンセントに室内機の電源プラグを挿せば動作するはずですが、実はまだ行っておくべきことが残っているのです(室内機及び冷媒管のエアパージとエアコンガスの充填)。

古民家の自然換気(44)エアコン設置①土壁を穿孔

酷暑の日が続いており、地球(人間)の行く末はどうなるのだろうかと心配にならざるをえません。
地球への負荷を少しでも減らしたいとの思いから、夏の暑さ対策としてエアコンに頼るのではなく、周囲の自然環境や古民家の特徴を活かす工夫を行っています。
そのひとつが竹天井(天井の開口部)です。

天井に開口部を設けることで居室内の暖気を排出させるとともに、窓を開け放して冷えた外気を取り込もうとするものです(状況に応じてシーリングファン冷風扇を併用)。

当地は夏に東(または南)寄りの海風が吹くため、気温が高くても比較的冷たい空気を取り込むことができます。
ところが近年、夏でも西寄りの山風が吹くことがあり、その場合、フェーン現象(鈴鹿山脈を越えた下降気流)によりモンモンとした空気に包まれてしまうのです。
また、古民家は土壁(蓄熱材)が多用されていることから、暑さのピークが遅れて夕方から夜にかけて暑さが厳しくなるように感じています。
それでも私自身は若くて健康なため「心頭滅却すれば火もまた涼し」の境地を求めて井戸水でもかぶっていれば良いのですが、古希(70歳)を越えた母がいるのにエアコン無しの生活はさすがに厳しいものがあります。

実は、エアコンは20年近く前に設置したものがあり(下図で「AC」)、冷風扇やシーリングファンを併用しても対処できないときは竹天井を閉めてエアコンをつけるようにしています。

ただ、このエアコンは2.2kW仕様(6畳用)のもので、4年前の改修工事でLDKが26畳と広くなった今では非力なのです(エアコンをつけると室外機のコンプレッサーが常時動作する状態)。
部屋の広さに応じた高出力のエアコンに換えれば良いだけの話しとは言え、高出力=電力多消費なわけで、脱電気の方向を目指す自分にとって受け入れ難いものがあります。

そこで考えたのが、下図のとおりエアコンの設置場所を変え、LDK(26畳)の一部(6畳)のみを冷房する案です。

古民家は壁が少なく、壁の代わりに建具によって間仕切りされているのが特徴でもありますが、このLDKも建具を閉めれば畳敷きの6畳間が独立するようになっています。
6畳の広さであれば小出力(2.2kW程度)のエアコンで済みますし、ここは改修工事時に断熱材が施してありますので(天井のみ。床は畳が断熱材代わり)、常時冷房しても比較的負荷は小さく済みそうです。

どうせエアコンを設置するなら、暑い夏が来る前です(ブログは遡って書いており、実際には6月に施工しました)。
脱電気の方向を目指しているものの、電気や機械ものを扱うのは好きなため、DIYにて施工することにすることにします(施工には特殊な道具を揃える必要があるため、金銭面でDIY施工するメリットはありません)。

エアコン本体は部屋の広さ(6畳)から2.2kW(インバータ方式)仕様のものとします。
既設のもの(2.2kW)と同じ出力であるため、既設のものをポンプダウン(エアコンガスの回収)したうえ移設できなくもないのですが、20年近く経っていることから新しく購入することに。
ネットで安価なものを探して日立の白くまくん(RAS-AJ22H)を注文(前年モデル。ポイント還元を考慮して実質3.5万円程度)。

日立RAS-AJ22H:日立グローバルライフソリューションズ(株)HPより

注文したものが届き、付属の工事説明書を読むと、まずは壁に配管(冷媒&ドレーン)と電気ケーブルを通すための穴(φ65mm)をあけるとのこと。
今回の場合、室内機と室外機の配置から下図のとおり2箇所、壁穴をあけることになりますが、厄介なのは2箇所とも壁の素材が土壁だと言うことです。

壁の素材が石膏ボードや合板であればジグソーを使って切り抜けば良いのですが、土壁の場合そうは問屋が卸しません(土壁でも新築時であれば容易)。
どうするのだろうかと、電気工事屋さんが施工した既設のものを見ると、土壁にも関わらず綺麗な円形の壁穴があいています。
どうやら「コアドリル」(振動ドリル等に装着して使用)を使って穿孔されているようですが、新品を買えばエアコン本体に匹敵する価格の代物です。
今回のためだけに新品を買うわけにもいかず、ヤフオクでジャンク品(送料込み1,500円)を購入(下写真で右側の円筒形のもの)。

円筒の先端にチップ(超硬合金)がついており、これを高速回転させることで壁を穿孔するわけです。
ただ、新品とは異なりチップの刃先が摩耗しています。
摩耗していてもチップ自体は残っているため、刈払機や丸ノコのチップソーのように研磨してやれば1、2回は使えるようになると目論んで購入したのですが・・・。

ディスクグラインダー(上写真で左側)にダイヤモンドディスクを装着して研磨。

それなりに刃が付いたように思いますが、果たして切れ味はいかがでしょうか?

早速、穿孔したいところですが、工事説明書を読むと、室内機の取り付け位置に応じて結構シビアな位置に壁穴を設ける必要があるようです。
やり直すわけにいきませんので、ここは図を描いて慎重に検討することにします(工事説明書に詳細な寸法が記載されています)。

正面図

室内機は小壁(土壁)の上下中央に配置するとバランスが良いですが、室内機から出るドレーン管(結露水を排出)を下図のとおり下り勾配(1/25以上)で配管する必要があることから上に寄せています。

縦断図

上図のとおり縁側(下屋)の天井裏に配管を通すことになるため、天井板を外して準備しておきます。

居室(室内機設置)側から穿孔することにし、壁穴の中心位置をマークします。

では、振動ドリルにコアドリル(φ65mm)を装着して土壁を穿孔(壁穴も下り勾配になるようにしています)。

アッと言う間に綺麗な壁穴があきました。

土壁は竹を使って下地(竹小舞)が組まれおり、その竹をうまく切れるかどうか心配していたのですが、下写真で朱色矢印のとおりコアドリルの円筒形状そのままに切断されています(チップの研磨がうまく出来ていたことにしましょう^_^)。

同様に、もう一方の土壁も穿孔します。

屋外側に貫通しました。

外壁は杉のシブキ(羽目板)が張ってあるのですが、コアドリルは板も問題なく切断しました。

切り抜いた壁土や板はコアドリル内に残りますので、それらを取り除きます。

板を取り除いたところ、シブキ(羽目板)とともに胴縁(7割程度)まで切断してしまっていることがわかりました・・・。

こうしてあけた壁穴には同じ口径(φ65mm)の保護パイプ(下写真:市販の自在スリーブ)を必ず通すように工事説明書に記載されています。

一般的な中空壁の場合、電気ケーブルなどをネズミにかじられるおそれがあり、それを防ぐためだそうです。
今回は土壁のため、その心配はありませんが、逆に土壁を保護するためにスリーブを通しておくことにします。

スリーブ(合成樹脂製)を壁厚にあわせて塩ビ用ノコでカットします。

壁穴にスリーブを通します。

壁穴は下り勾配がついていますが、スリーブの蛇腹部を変形させることにより任意の勾配に合わせて取り付けられるようになっています(自在スリーブ)。

この土壁の裏側は下写真で竹小舞が見えているとおり裏返し(裏側から壁土をつけること)がされていません。

スリーブを固定するためにも、壁穴の周囲について裏返しを行なっておきます。
荒壁土を少量練ります。

既存の土壁にたっぷり水打ちしたうえ、スリーブの周囲に壁土を塗ります(下写真は乾燥後)。

もう一方の壁は裏返しがされていますが、スリーブを固定するため周囲に壁土を塗っておきます。

実はまだ左官仕事が続きます。
室内機を設置する部屋の壁について、仕上げ塗りがされておらず、室内機を取り付けると壁塗りがしにくくなるので、その前に仕上げ塗りを済ませておくことにします。

上写真のとおり壁の色が白いため、一見すると漆喰で仕上げてあるようにもみえますが、これは下地材(四国化成 ニューSKプラスター)の色です。
この部屋の壁は元々は繊維壁(昭和30〜40年代に塗り替え)で仕上られていたのですが、汚れていたため4年前の改修工事の際、繊維壁を剥がして中塗りの状態まで戻しました。
この部屋も隣接する部屋と同様に珪藻土仕上げにする計画なのですが、エアコンを設置することになるのではないかと思って仕上げ塗りはペンディングにしたのです。
ただ、そのままでは砂つぶが落ちるため、中塗りの上にとりあえず下地材まで塗ってあるわけです。

改修工事が終わって4年目にしてようやく仕上げ塗りです・・・。
仕上げになりますので丁寧に塗ります(上塗り材:キング鈴井商会 エコロジー EC-5)。

こうすると、スリーブの周りも綺麗に仕上がります(室内機を設置すれば見えなくなるのですが)。

本当は全てを壁を塗りたかったのですが、塗り壁材の残りが少なく、とりあえず室内機に隣接する小壁2面のみ塗りました。

これでようやくこれでエアコン(室内機+配管+室外機)を設置する準備ができました。
土壁のため、メインの電気工事よりも左官工事のほうに手間と時間を要しますね。