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薪棚設置(5)鼻栓そして完成

前回、材を加工して土蔵の庇下に組みました。

ところで、この薪棚はホゾ組みによる構造としていますが、土蔵への通気を確保するため、外周に土台を回さずに直接、柱を建てています。

一般的な木造建築物のように土台に柱を建てれば、柱は土台により固定されてズレることはありません。
一方、今回のような場合、仕口箇所が緩めば柱がズレてしまうことになります。
木工のような小物であれば仕口にボンドを塗って固定することもできますが、この大きさのものにボンドはさすがに厳しいです。
木造建築物において、ボンドを使わずに仕口を固定する方法はもちろんあり、その一つは「込み栓」と呼ばれるもので、我が家(古民家)でも用いられているのを目にします。

柱を貫通させて仕口に角材を打ち込むことで固定するわけです。
理屈は単純なものの、私のような素人が手を出せるようなものではありません。
角材の代わりに長い釘(コーススレッド)を打ち込んでも、ある程度は同じ役割を果たしそうです。
今回のような薪棚であれば、それで十分かもしれませんが、せっかくホゾ組みにするのに金物を使っては面白くありません。
他に方法はないものかと思っていると、今回薪棚を設置する土蔵の庇の仕口(下写真で朱色矢印)が目につきました。

柱と梁の仕口を「鼻栓」と呼ばれる方法により固定してあります。

「込み栓」は柱を貫通させて角材を打つのに対し、「鼻栓」は柱を突き抜けるようにホゾを長くして柱から出たところに楔状の角材を打つことで仕口を固定するわけです。
これなら私のような素人にもできそうだと思い、材を刻む際、ホゾに鼻栓を打てるようにしてあります。

ところで、この鼻栓用の穴を掘る際、参考にするため土蔵庇の鼻栓をよく見たところ穴が柱側に1分(3mm)程度大きくあいていることに気づきました。

この鼻栓は3年前に大工さんに施工していただいたものですが(写真で材が古く見えるのは古色塗りしてあるためです)、とても間違って穴をあけるような大工さんではありません。
何か理由があるはずだと考えてみると、なるほど!こうしておくと楔を打つごとにホゾが引っ張られて仕口が確実に固定されるわけです。

と言うことで大工さんの真似をし、既に桁や梁のホゾには鼻栓用の穴(30×15mm)を下図のとおり柱側に1分(3mm)ずらして掘りました。

鼻栓の穴に打ち込む楔を準備します。
薪棚の端材(杉)から穴のサイズ(30×15mm)に合わせて15mm厚で木取り。

これを楔状にカット。

こうして作った鼻栓を打ち込みます。

打ち込むごとにホゾが引っ張られてくるのを感じます。
これなら仕口が緩むことはありません。
ただ、上写真のような地面に近い箇所だとホゾや鼻栓が傷みやすいだけでなく、ホゾに蹴躓く可能性もあります。
やはり、本来は土台を回して柱を建てるなり、込み栓により仕口を固定すべきなのでしょう。

こうして仕口は固定できましたが、実はまだ完成ではありません。
下写真で朱色着色で示す箇所に、積んだ薪が崩れないようにするためのストッパー的なものが必要なのです。

筋交いのようなものを入れる手もありますが、この場所に筋交いは無意味なため単純に垂直に2本の角材を入れることにします。

角材は手元にある野縁材(廃材)を再利用することにし、柱と面一になるように梁側を丸ノコを使って切り欠きます。

こうしたところで丸ノコを使うのは大変危険です。
そもそも材の刻み時に加工しておけば、こうした危険はことしなくても済むワケで、設計時に「後で考えれば良い」と思って横着した結果です・・・。

ともあれストッパーの角材を取り付け。

追加分の材にも塗装すれば(オイルステイン:VATON)、薪棚の完成です。

この薪棚は前後に2列積むタイプのため、後列の薪を出し入れできるように後方に通路的なスペース(幅60cm)を設けてあります。
どれだけの幅を確保すれば良いのか設計時に迷いましたが、60cmもあれば十分、薪を持って出入りできそうです。

薪棚が完成したので早速、雨ざらしになっている薪を運んで収納します。

やはり薪棚にちゃんと収納すると良いものです。

今回収納した薪は1年半前に伐採したものです。
前列(下写真で右側)がクロガネモチ(広葉樹)で、後列がスギ(針葉樹)です。

それぞれ1列(2.1×1.4×0.35≒約1m3)におよそ一杯です。
クロガネモチもスギも樹高15m程度の大きな樹だったのですが、薪にすると1本で約1m3になると言うことですね。

薪棚設置(4)本体作製

前回、薪棚の柱を据えるための沓石(延べ石を再利用)を設置しました。

いよいよ薪棚本体の作製に取り掛かります。

正面図
側面図

材料には、冬の間にチェンソーで自家製材した角材(杉)を用います。

これらを図面の寸法に従って木取り。

材料に余裕がないため、桁材は角材(85mm角)を半分に挽き割って使います(バンドソー使用)。

こうして木取りした材に、仕口(ホゾとホゾ穴)を墨付けします。

墨付け後、まずはホゾ穴(雌側)から加工することにしますが、太い角材に通しホゾをノミで掘るのは私のような素人には難しくて大変です。
このため、2年前に土蔵の出入り口を修繕する際に電動のカクノミ(中古)を購入しました。
こうしたカクノミはプロ用の道具で高価なのですが、プレカット工法の台頭により使われる機会が減っているのか、ヤフオクなんかだと送料込み数千円で入手できる状況になっています。

いずれにせよ、カクノミを使うと一瞬で、大工さんの手によるものかと思うようなホゾ穴を掘ることができます。

手ノミの出番は最後の仕上げだけです。

次にホゾ(雄側)を加工します。
一般的には丸ノコを使って加工しますが、チェンソー製材で材の直角が出ていないため(断面が平行四辺形、Max.5mm程度のズレ)、普通に上下から丸ノコの刃を入れると下図のようになって歪な形のホゾになってしまいます。

材の断面が平行四辺形になっていることを考慮して墨付けすれば良さそうにも思いますが、正確に墨付けするのは実際には難しそうです。
そこで思いついたのが、ここでもバンドソーを使う方法です。

これなら片面を基準にしてホゾの厚さを一定(今回は1寸)にすることができます。
結局、丸ノコは胴付け部にだけ使用してホゾ取り完了。

後で詳しく書くつもりですが、ホゾには鼻栓用の穴を設けてあります。

相欠きによる接合箇所(桁材の固定等)が一部あるため丸ノコを使って溝を切っておきます。

そして、全ての材の刻みが完了です。

たかが薪棚とは言え、多くの材と加工が必要になるものです。

加工が間違っていないことを祈りながら組み立てます。

ホゾ組みの場合、加工に手間がかかる一方、組み立ては一気に進みます。
加工の間違いも無かったようで一安心です。

心配事項と言えば、以前にも書いた桁材(荷重に対して十分な断面か?)ですが、実際に組んだものを見ても微妙な感じです・・・。

まだ完成ではないのですが、雨天で屋外での草刈り等ができないときに塗装を行なっておきます。
塗料にはオイルステイン(VATON、オーク色)を用いていますが、塗料の乗りがイマイチで色も薄いです。

あとは、床板を貼って全体をシルクの布で包めば、天蓋付きのベッドの完成です!(実際、野良猫の寝床になっています・・・)。