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井戸の再生(16)再生案の検討

前回、古井戸の状況を確認しました。

  • 井戸の構造:掘井戸(素掘り)
  • 水源の種類:浅井戸(自由地下水から取水)
  • 井戸側径:2尺(60cm)
  • 井戸深さ:約2.6m

確認の結果、井筒(側)の外側に穴があき、井戸内へ雨水や土砂が流入していることがわかりました(実のところは以前から穴があいているのを知っていましたが、忙しさにかまけて見て見ぬ振り状態・・・)。

孔壁が崩壊するのも時間の問題であるような状況であることから、対応策を考えてみます。

(1)修理する
修理する場合、素掘りの孔壁が崩れかかっていることから、側(がわ)を挿入し孔壁の崩壊を防ぐことになるのかと思います。
重量物の井戸側の挿入工事が簡易なものでないことは容易に想像でき、今後も使う見込みのない井戸にそこまでするのもどうか・・・

(2)放置する
そのまま放置すれば、いずれは孔壁が崩壊し(中途半端な状態で)埋まることになり楽チンです。
しかし、井戸は人間の都合で作ったものですし、自然に対してそんな無責任なことでよいのかと個人的に感じます。

(3)埋め戻す
そんなことで、埋め戻すのが最も現実的な方策ではないかと思っていたとき、お隣の方と話す機会があったため、この井戸のことを話してみました。
お隣の方は建築士さんですので、井戸の扱いもよくご存知で、埋め戻す場合には通常「息抜き」をおこなうことを教えていただきました。

そこで、前回作成した現況図に息抜き用のパイプ(VPφ20)を設けたのち埋め戻す案を考えてみました(下図で第1案)。
(息抜きを設ける理由をネットで調べると科学的、風水的な観点から様々あるようですが、その是非の判断は難しく記載は省略します・・・)

埋め戻しについては、帯水層は山砂を使用し、その上部は雨水等の直接の浸入を防ぐため粘性土を使うようにしています。

上図の第1案を描きながら、息抜き用のパイプ(VPφ20)を設けるならば、ついでにその鞘になるパイプ(VPφ75)も入れてはどうかと思いつき描いたのが下図の第2案です。

これであれば、鞘管(VPφ75)が新たな井戸になり、ポンプが必要になるものの鞘管内のパイプ(VPφ20)により揚水が可能です。
そして廃井にしなくてすみます。

井戸径がφ580mmからφ75mmに小さくなることで揚水量は小さくなるでしょうが、通常使わない井戸であることを考えれば十分です。
ちなみに、この古井戸(掘井戸)のように昔は人が井戸内に入って掘削したため必然的にφ600mm以上の井戸径となっています。
しかし、現在ではボーリングによる掘削が可能で、その場合は井戸径を小さくすることができるため、φ75mm程度の井戸(打込井戸)も存在します。

第1案と第2案を比べると、第2案のほうが必要となる材料(鞘管や井戸ポンプ)が増えますが、手間的にはそう変わりません。
であれば、第2案としたいところです。

今後の気候変動や、現在の水道水源が河川表流水に著しく依存している状況を考えると、50年、あるいは100年後の日本人にとって、こうした古井戸が掛け替えのないものになる可能性は十分にあるように思います。
そうであれば井戸を残す意味もありますが、問題はその能力が私にあるかですね(気力&体力だけはあるのですが・・・)。

実際に施工するとしても水が恋しくなる夏場になりますので、それまで他案を含め検討を続けていきたいと思います。

<続きます>

井戸の再生(15)古井戸の状況

自宅敷地内にある古井戸のことが少し気になり、現状を調べることにしました。

ところで、この井戸とは別の井戸になりますが、昨年、電動ポンプを設置し井戸水を利用できるようにしました(下写真)。

この井戸は主屋の勝手口付近にあり、昔は炊事・洗濯・風呂用として普段の生活で使われていたものです。

また、主屋の前にも井戸があり、こちらは来客用の井戸として使われていたと聞いています(下写真。こちらには手押しポンプを設置し利用できるようにしたいものです)。

元々はこの2井が我が家の井戸だったのですが、昭和初期及び戦後直後に隣家が町へ移り住んだことで、我が家は土地だけでなく井戸も倍増し、合計4井となりました。
そして、当地のような田舎でも昭和30年代には簡易水道が供用され、井戸が使われなくなりました。
亡き父も井戸の扱いには困ったようで、1井については父が若い頃に埋め戻したと聞いています。
その結果、現在残っている井戸は先の2井を含む3井となっています(下図)。

今回、現状を確認する井戸が上図で「井戸3」とあるものです。
ちなみに、上図で青線内が隣家だった敷地です。
今は畑になっていますが、井戸の位置から建物があったであろう位置を想定できます(上図で点線)。

下写真が「井戸3」の外観です。

これまでも気にはなっていたものの、ここまで手が回らず周囲の草刈りだけしている有り様です・・・

井筒(側)のうえに被せてある蓋(廃材のスレート)をどけて、井戸内の状態を確認します。

他の井戸と同じ掘井戸(側井戸)で、直径は約60cmです。
かなり水位が高く、測ると地盤より約1.5m下に水面があります。
また、井戸水が濁っているのが気になります。

井戸の深さも測定し図示すると下図のようになります。

比較のため右側に「井戸2(昨年ポンプを設置)」を配置しています。
いずれの井戸も不圧地下水(自由水面から取水)ですが、同じ水脈と仮定し、地下水位を同じにしています。
そうすると、「井戸2」と「井戸3」では地盤高に70cm程度の高低差があることになりますが、実際にもこの程度の高低差があります。
したがって、あくまでも素人考えですが同一の水脈で間違いなさそうです。

昨年ポンプを設置した「井戸2」も水位が高いと感じましたが、「井戸3」は地盤高が低い分、さらに(地盤に対する相対)水位が高いです。
人力(釣瓶)で井戸水を汲むしかなかった昔は、良い井戸だったのかもしれません。

ところで、我が家がある地区は小高い丘陵地(標高約30m)の上にあります。
それにも関わらず、このように地下水位が高いことに意外さを感じます。
そこで、土地の縦断図に先の井戸の絵を書き加えると下図のようになります。

丘陵の下に広がる水田の高さよりも地下水位のほうが高くなっています。
と言うことは、丘陵の地層内に不透水層があり、その上部に滞水していることになります。
丘陵の上にも関わらず容易に水を入手できたからこそ、遠い昔、ここに人が住むようになったのでしょうね。

井戸の状況確認から脱線してしました・・・

先ほど井戸内を確認したところ、地下水の濁りが気になりました。
実は、下写真のとおり井筒(側)の外側の地盤が崩れ、穴があいているのです。
このため、雨が降るとこの穴から土砂を含む雨水が流入し、井戸の水を濁しているようです。

ここは普段、人が入ってくるところではありませんが、万が一、人が転落すれば大変です。
早速にでも、なんらかの危険防止措置を講じておくことにします。

さて、このような危険な状態にある井戸を今後どうするか?

  1. 修理する
  2. 他にも井戸があることから、今後もこの井戸を使うことはないかと思います。
    そのため、修理までする必要があるのか悩むところです。

  3. 埋め戻す
  4. 施工が容易で、転落の危険もなくなりますが・・・
    迷信もあるのかもしれませんが、井戸を埋めると災いがあると昔から言われており躊躇します。

  5. そのまま放置する
  6. 放置すれば、遠からず先の穴から孔壁が崩れるものと思います。
    自然に埋まることになるものの・・・

今回現状を把握したことで、そのうち良いアイデアが浮かぶことに期待し、とりあえずはペンディングということで。

<続きます>