きつくり(庭木の剪定)」カテゴリーアーカイブ

庭木の剪定(29)シラカシの伐採でリベンジ!

前回、庭木のアラカシを伐採しました。
その伐採で伐倒方向とは真逆に倒してしまうと言う失敗を犯したものの、今シーズンの剪定は無事終えられました。

ところで、近所にいつも様々教えていただいている長老のお宅があります。
長老のお宅にも我が家と同じような庭があり、昨シーズンまではご自身で剪定(当地では「きつくり」と言います)を行ってみえました。
しかし、80代半ばを過ぎて危険なこともあって、「伸びて鬱陶しいところだけでも適当で良いので剪定してくれないか」と頼まれました(ご子息は結婚により家を離れています)。
以前だと自分のところの剪定だけで手一杯で、とても余所の庭まで手を出せる状態ではなかったのですが、我が家の庭にかかる労力が半分以下に減ったことで少し余裕があります。
それと、我が家は祖父が早くに亡くなって苦しい時代があったのですが、その時この長老のご一家には様々に助けていただいたと聞いており、今こそ恩返しの機会だと喜んで引き受けることにしました。

剪定作業は2本の大木を除いて刈り込み鋏を使ってザッと行い、半日もかからず完了しました。
問題は2本の大木(シラカシとヤマモモ)です。
この2本の大木について、長老は「2本とも老木であるし、今後も剪定の手間がかかることから伐採できるものならこの機会に伐採してほしい」とのこと。
2本のうち1本のシラカシについては、幹からの胴吹きが多いことや太い枝が枯れていることから相当衰弱していることが見て取れます。
もう1本のヤマモモについては、老木ではあるものの樹勢はあります。
このため、今回伐採するのはシラカシのみとし、ヤマモモについてはとりあえず剪定が容易になるように少しコンパクトに仕立て直してはどうかとお伝えし、そうすることに。

まずはシラカシの伐採からです。
このシラカシの樹高は6m程度で、幹の直径が30cm強あります。
庭木で高さを抑えているため幹の上部も太く、重心が高い位置にあります。
枝葉を落として幹の傾きを確認すると、離れがある方向(西)に若干傾いており、その方向に倒れれば離れに当たってしまいます。
また、その近くには軽トラ(移動不可)も停まっています。
幸い東側に広いスペースがあるため、その方向に伐倒できます。
さすがに先のアラカシの伐採時のような失敗は許されませんので、伐倒方向にロープで牽引しながら伐倒することにします。

ロープの牽引はお隣の方に助っ人をお願いし、容易にロープを引けるように軽トラをアンカーにしてローププラー(簡易的な牽引機)を取り付けてあります。

ところで、ロープを引くと下図のとおり受け口の位置を支点としてテコの原理が働くため(→ロープを掛ける位置が高いほど、ロープが長いほど力が大きくなる)、伐倒する木に傾きがなければロープを直接、手で引くだけでも十分な場合があります(傾きがなくても風などの影響を考慮する必要有り)。

しかし、今回の場合は木が伐倒方向とは逆に傾いているため、それを引き起こす力も必要になります。
そして、それに対応するロープやアンカー、牽引機を用いる必要があるわけですが、私が伐木関係の書籍を読んだ限りでは、それらの具体的な選定方法に関する記載を目にしたことがありません。
おそらく市販の道具は十二分に安全にできているのだと思いますが、今回のどの程度の牽引力が必要になるのか算出して確認してみることにします。

<以下、素人考えによるもので安全の保証は全くありません。重大な事故に繋がるおそれのあることにご留意ください>

中学か高校の理科で習った力のモーメントを思い出すと、木の重量(Mg)によるモーメントM1とロープの牽引(T)によるモーメントM2との釣り合いからロープの牽引力Tを算出すれば良さそうです。

上図から

M1 = Mg・h/2・sinα
M2 = T・h・cosα・cosβ

となり、M1 = M2から

T = Mg/2・tanα/cosβ

となります。
つまり、木の重量Mg、木の傾斜角α、ロープの索引角βからロープの引張力Tを算出できることになります。

木の重量Mgは超概算で幹の直径0.3m、樹高6m、比重1、安全率2(枝葉の重量等)として下式により求めると850kgfになります。

Mg = π/4×0.3^2×6×1×2 ≒ 850kgf

これに木の傾斜角α及びロープの牽引角βをそれぞれ3°、30°としてロープの牽引力Tを求めます。

T = Mg/2・tanα/cosβ = 850 / 2×tan5°/ cos30°≒ 26kgf

牽引力は26kgfとなり、30kgの米1袋(半俵)を持ち上げるぐらいの力が必要になることになります。
ほかにも風圧等が作用することを考えれば、木を引き起こす場合にはローププラー(今回使用したものの許容荷重は1,500lb≒680kgf)や動滑車(倍力)の使用は必須と言えそうです。

上式で木の傾斜角αの値を変えて算出すると、ロープの牽引力Tは次のとおり変化します。

  • 1° ・・・9kgf
  • 3°・・・26kgf
  • 5°・・・43kgf
  • 10°・・・86kgf

今回使用したロープ(直径1/2″)の切断荷重は14kN(使用荷重はその1/10)ですので、今回の木で傾斜角が10°くらいまでであれば問題ないことになります。

とりあえず使用機材の能力で問題ないことを確認できたため作業に着手します。
伐倒方向に向けて正確に受け口を作ります。

次に受け口の反対側から追い口を切りますが、この方向には木の傾きによる力がかかっています。
チェンソーのガイドバーが挟まれてしまわないようにロープを軽く張った状態にして追い口を切ります。

ツルの厚さが直径の1/10になるところまで切ったら退避。
助っ人に合図し、ローププラーでロープを引っ張ってもらうとズドーン。

今回は狙ったとおりの方向に倒せました。

切り株は邪魔にならないように低いところで切り直しますが、その前に受け口や追い口が正しく作られていたかどうかチェックしておきます(特に問題ないようです)。

伐倒した木の処分も頼まれていますので、玉切りしたうえ斧で割って薪にします。

カシの木なので良い薪になります。
庭木はイジメてあるため割るのに苦労しますが、その分火持ちも良さそうです。

もう1本の大木のヤマモモについては伐採せずに、ひとまわりコンパクトになるよう剪定。

全ての剪定が無事完了し、長老にも満足していただけました。
長老から今回の剪定と伐採に要した費用を払いたいと言っていただきましたが、実際にかかったのはチェンソーの燃料ぐらいです。
その代わりに処分したいと聞いていた古い建具や古材(全て無垢材)を軽トラに一杯頂いてきました(こうしたものも、これまでは我が家のものを処分するのに精一杯だったのですが、片付いてきていて少し余裕があります)。

これらを解体し、ウッドボイラーが設置してある倉庫に収納。

ウッドボイラーの燃料や薪ストーブの焚き付けとして活用させていただきます!

庭木の剪定(28)アラカシの伐採で大失敗!

昨年のブログは更新頻度を週一にしたこともあり、ブログ記事のほとんどが工事日誌的なものになってしまいました。
もちろん敷地や田畑の管理などルーチン的な作業も継続して行なっていますが、その中で大きな割合を占めているのが庭木の剪定です。
我が家の庭は広くて庭木も多いため、以前は10月から作業を始めるものの年末に至っても終えられないような状況でした。
これではいけないと、剪定にかかる負担を低減すべく、これまでに次のことを行なってきました。

  • 老木や剪定作業に支障となる木の伐採(これまでに4本実施)
  • 樹高が高い木を低く仕立て直す(これまでに4本実施)
  • 剪定方法の変更(透かし剪定から刈り込み剪定へ)

この結果、庭木の剪定にかかる手間と時間が大幅に減り、昨秋の10月下旬には剪定時期の遅いキンモクセイとマツ、そして下写真で朱色矢印で示すアラカシの計3本を除いて完了しました。

このアラカシは我が家の庭で最も大きく(樹高6m程度)、上部は三脚では届かないため木に登って剪定しなければなりません。
庭木の剪定方法を透かし剪定から刈り込み剪定に順次切り替えてきていますが、今シーズンからは葉の大きいアラカシも刈り込み剪定で行なうようにしています。
刈り込み剪定には刈り込み鋏を使いますが、さすがに木に登った状態で両手で刈り込み鋏を扱うと言うのは危険です。
そこで、三脚(10尺:3m)を使って剪定できる高さまで低く仕立て直すことにします。

ちなみに、同様の理由から昨シーズンには下写真のカイヅカイブキを低く仕立て直しました。

上部を切り落としたため、頭でっかちの樹形になってしまっています。
自然な?三角形の樹形にするには上部の玉(玉散らし)も小さく仕立て直す必要がありますが、一度に行うと木に負担がかかるため昨シーズンは手をつけませんでした。

その後1年が経過し、樹勢が落ちることもありませんのでしたので、上部の玉を小さく仕立て直しました。

今シーズンはここまでとし、来シーズン以降も少しずつ手を入れていくしかなさそうです。
木を小さくするのは大変なことだと痛感します。

脱線してしましたが、今回低く仕立て直すアラカシの現状です。

上写真で朱色破線で示すのが三脚(10尺:3m)の天端高です。

幹を寸胴切りする位置を決めるため、上部から枝葉を落としていきます。

上写真で葉があるところは何とか三脚から剪定できそうですが、もう一段低くしておいた方が良さそうです。

さらに一段分、枝葉を落とします。

この高さ(3m程度)なら三脚から安全に剪定できます。
この高さで幹を寸胴切りしますが、カシで硬木のうえ幹が太いため手鋸でと言うわけにはいきません(枝の切断にはトップハンドルの充電式チェンソーを使用しました)。
最初はたかが庭木、三脚に登ればエンジン式チェンソーを使えると安易に考えていたのですが、こんな太く重いものが切断時にコントロールを失って三脚側に倒れる可能性があることを考えれば絶対禁止です。

そこで、低く仕立て直すことは諦め、思い切って根元から伐採することにします。
木を低く仕立て直すのは先のカイヅカイブキのとおり実際には大変ですし、アラカシであればヒコバエや切り株から萌芽してくるため、無理に仕立て直すよりも伐採して萌芽更新させるほうが良いのではないかとの思いもあります。

伐倒時に他の庭木等を巻き込まないように全ての枝葉を払っておきます。

この状態で幹の傾きを確認して伐倒方向を検討します。
写真では分かりにくいですが、上写真で手前左方向に少し傾いています。
傾きが小さいことと、この方向には他の庭木があることからクサビを使って反対の畑側に倒すことにします。

ところが、いつも通り伐倒方向に正確に受け口を作り、反対側から追い口を切ってクサビを打ち込むもクサビが入っていきません(プラ製から金属製のクサビに変えても同様)・・・。
ツルの厚さ(幹の直径の1/10)が大きいためではないかと考え(一般的に硬木ほどツルの厚さを小さくする)、ツルの厚さを小さくするように切っていたところ木が動き始めたため退避。
そして、なんと真逆の方法(木の傾きの方向)に倒れてしまいました・・・。

たまたま他の庭木の間をすり抜けて倒れたため影響は無かったとは言え、重大事故に繋がってもおかしくない大失敗です・・・。
これまで、それほどの経験があるわけではありませんが、今回のように伐倒方向のコントロールを失ったのは初めてです。
今考えると失敗の原因はいくつもありますが、一番大きな過ちは、たかが庭木と捉え、これまでの経験を過信して横着してしまったことだと思います。
太い庭木で重心の位置が高いことから、木の傾きを把握した時点で伐倒方向にロープで牽引するようにしていれば、少なくともこのようなとにはならなかったはずです。

倒木の頂部は芝庭に少しかかり、その衝撃で縁石用のレンガが1個無くなっています。

どこかへ吹き飛んでしまったのかと思いましたが、実は完全に地中に埋もれているのです。
これだけの力を及ぼすものが人体の上に落ちてくれば骨折どころで済むものではなく、改めて油断禁物、細心の注意を払って作業しなければならないと感じています。

最も大きな庭木を伐採したことで庭が寂しくなるのではないかと思いましたが、特に違和感なく、全体のバランスも悪くないように感じます。

その後、11月に入ってキンモクセイの花が終わるを待って、残るキンモクセイとマツ(もみあげ)を剪定して今シーズンの剪定が全て完了です。