前回で薪棚が完成しました。
薪棚の構造材には2寸5分(75mm)角の母屋材を使いましたが、その端材が余っています。
今夏も酷暑で、とても日中に屋外で作業できるような状況ではありませんので、この端材を使って何か工作をすることにします。
太さと長さから思い浮かんだのが木製梯子(の踏み桟)です。
ところで、昔は今のようなアルミ製の梯子は無く、下写真で朱色矢印で示す木製の梯子が使われていました。
上写真の梯子は主屋(古民家)の厨子二階(屋根裏)に上がるために掛けてあります。
厨子二階は採光、自然換気、煙突、電気配線等の管理スペースとして活用しており、定期的に上がります。
このため、常時梯子を掛けた状態にしてあるのですが、問題は傷みが酷くグラついて危ないことです。
下写真は別のものですが、踏み桟のホゾの先端が破損して無くなっています。
これでは支柱と踏み桟が外れてしまいますので、釘留したり上写真のように針金で縛って外れないようにしてあるのですが、グラつきが解消しないばかりか危険です。
グラつきを無くすには、以前にミシン椅子を修理したときのように傷んでいる踏み桟(ホゾ)を新しく作り直して置き換えれば良さそうです。
と言うことで、修理すべくガレージへと移動。
しかし、分解してみると、踏桟のホゾに虫喰いがあるだけでなく、支柱(ホゾ穴)のほうも傷みが酷い状況・・・。
とても部分的な修理で済む状態ではなく、安全のため使うのも中止。
解体して薪にする前に、記録用に採寸していたところ今更ながら上手く作ってあることに気づきました。
細い杉の丸太1本を半分に挽き割り、梯子の左右の支柱にするとともに、余りを踏み桟にしているようです。
つまり、樹齢20年未満の杉の丸太1本が梯子に変身して立っている感じです。
であれば、杉の丸太から新しく梯子を作ったら面白そうです。
実はこう考えていたのは2年前のことです。
そして、薪棚に使わなかった丸太が1本残っており(下写真で朱色矢印)、それを冬の間にチェンソーで半分に挽き割っておこうと。
しかし、4m弱の長さが必要なのに対して3m強しかありません・・・。
新しい梯子を作るのは適当な木材が手に入ったときに延期することにして早2年が経過。
そして今回、踏み桟部分だけですが木材が手に入ったため、この機会に木製梯子を作ることにします(支柱部分の木材は購入することになります)。
この梯子を使う場所は決まっていますので(厨子二階への昇降用)、梯子の長さを下図より3.9mに決定。
勾配は75°にし、梯子の上端が2階F.L.から約80cm(労働安全衛生規則では60cm以上)突出するようにしています。
梯子の長さ以外の寸法は基本的に昔のものを踏襲して下図のとおりにしました(踏み桟の間隔は約1尺2寸:@366mm)。
踏み桟の仕口は、2本に1本は抜け止めのため通しホゾにして鼻栓を打つようにしてあります(上図で左側)。
踏み桟から作っていくことにし、薪棚の端材(75mm角)を半分に挽き割ります(75mm×約36mm)。
厚さ(約36mm)はちょうど良いぐらいですが、幅(75mm)が踏み桟としては大きいため約57mmに小さくしたうえ、自動カンナで56mm×35mmのサイズに仕上げます。
自動カンナを使う必要はないのですが、サイズを揃えておくとホゾの加工が機械的に行えるため自動カンナを使用しています。
踏み桟は2種類の長さがありますので、それぞれの寸法で切断します(通しホゾのもの:501mm×5本、止めホゾのもの:385mm×4本)。
ホゾを加工します。
通しホゾには鼻栓用の穴をあけることになりますが、支柱にあわせる必要があるため、とりあえずはここまでとします。
伝統的な梯子は,踏み桟を1本置きに鼻栓止とし、間の踏み桟は枘差しとし、両端の踏み桟はこの鼻栓止となるように桟を割り付ける。このようにすると梯子が菱型に剪断変形しても復元し易く、従って長持ちする。
これは床組で床梁と大引を交互に配置して建物を粘り強くする技術と同じで、しっかりした長押を持つ欄間もその長押と鴨居、欄間框からなる下弦材が軸組の剪断変形時に柱を外に押し、柱に曲げ変形を生むので、これが変形した軸組を速やかに復元させるという伝統建築の粘り強さの原動力です。
このような伝統技術を正しく後世に伝えることは大切なので、この梯子の再生の記事は素晴らしい記事でした。
コメントいただきまして、ありがとうございます!
梯子ひとつとっても昔のものは本当に木の性質をよく考えて作られています。
そのことに実際に作って改めて感じました。
梯子を作ってから1年が経ちますが、変形は生じておらず、逆に全体が馴染んで強くなっているようにも感じます。
木製梯子は機能面では鉄製梯子に敵いませんが、見た目や手触りなど優れた点も多く、後世に残ってほしいものです。