前回、古材(欅の一枚板)を再利用して仏間の床を作り直しました。
この床板は、20年程前に解体した離れの床の間に使われていたものです。
その床の間の隣には床脇(違い棚などがあるところ)もあったのですが、実はその床脇の床板(下写真、3×6尺)も残っています。
床の間は欅の一枚板でしたが、こちらは床脇と言うことでランクが落ちるようで、軽く柔らかい樹種で、2枚の板を矧いであります。
床の間と同様に、反り防止のため蟻桟が入れられていますが、こちらは2枚の板を剥ぐため下写真で朱色矢印で示す加工も施されています。
蟻桟と板材の双方に溝を切り、そこに楔状のものを打ち込むことで2枚の板を固定しているわけです。
金物を使わず、しかも手加工だけでなんでもやってしまう昔の技術には本当に感服します。
ただ、保管場所もとりますし、今回、欅の一枚板のほうを再利用できたことから、こちらは整理すべく分解します。
整理すると言っても可能な限り有効利用したいものです。
そこで思いついたのが、仏間(床板)の巾木として使うことです。
とりあえず適当なサイズで切り、壁と床との隙間を塞ぐ形で設置してみます。
底にある蟻溝が思った以上に目立ち、素人工事とは言え、これは厳しい感じです。
古材を再利用するのは諦め、次に思いついたのが、以前、神棚を移設した際に購入した檜の間柱材です(下写真で台の部分に利用)。
私自身、いつも古材や杉を使っているとおり、間柱材(特一)とは言え檜は使うのが勿体なくて残っていたのです。
仏間に使うのですから、ここは奮発して新材の檜を使うことにします(間柱材ですが・・・)。
バンドソーを使って挽き割ります。
さらにプレナーにかけてサイズを調整します。
もともと特一等級の下地材ですので、頭をひねって木取りしても、どうしても節が表面に出てしまいます。
死節の穴は木工パテ(合成樹脂)を使って塞いでおきます。
贅沢な欅の一枚板も良いですが、こうした間伐材的な節のある木材を大事に使うと言うのも良いもので、私自身にとってはこちらのほうが分相応のように感じます。
手前側になる角をトリマーを使って面取り(飾り)します。
ヤスリをかけて仕上げます。
パテ埋めした箇所もそれなりの仕上がりになりました。
こうして作った巾木を仏間に仮置きしてみます。
柱との取り合い部を現物に合わせて正確に切ります(大工さんだと柱側も切り欠いて素晴らしく綺麗に納めるのだと思います)。
一旦取り外して塗装したうえ、隠し釘を打って本設します。
塗装は床板に合わせて摺り漆(未施工)にすることも考えましたが、天井の廻り縁や柱のほうに合わせてオイルステイン(VATON、オーク)を用いることにしました(仏間で煤汚れがないため古色塗装はしません)。
壁と床との間にあった隙間は巾木により大部分は塞がりました。
しかし、下写真のとおり土壁の平面が完全でないため、僅かな隙間が残っています。
土壁は現在、「大直し」まで終わっており、次の「中塗り」において5mm程度塗り重ねますので、これにより壁と巾木との隙間を完全に塞ぐという塩梅です(現代の住宅では、壁材として合板や石膏ボードと言った工場生産の完全に平面が出た材料を使うため、こうした隙間が生じることがなくて楽で便利なのですが、手仕事の面白さも一緒に無くなってしまっているのではないでしょうか)。
と言うことで、中塗りを行う準備をします。
トロ舟に中塗土(1)、砂(2.5)及び水を加えて練ります。
本来は藁スサ(アク抜きされたもの)も加えるのですが、中塗土を購入する際に建材屋さんに頼んだところ、本職が購入するような大袋に入ったものしかないと言うことで購入しませんでした。
荒壁の際は、自分で藁を短く切ったものを使っているのですが、これだとアクが出て上塗りに悪影響を及ぼしかねないため藁スサなしとしました。
練った壁土を中塗りゴテを使って壁全面に塗っていきます。
今回は上塗りも行う予定ですので、表面の仕上がり具合よりも平面が出ることに注力します(と言っても凸凹まるけなのですが・・・)。
1面、2面と塗りあげ、最後の3面目(下写真で手前側)を塗り始めようとしたところ、壁チリのラインが妙に曲がっているのに気づきました。
大直しがうまくできておらず、一部分が凹んでいるのです。
この凹みの深さは1cm強と言ったところですので、中塗りでカバー(凹部のみ厚く塗る)できそうにも思いますが、ここは一旦中塗りを中止し、凹部について再度、大直しすることにします。
荒壁土を少量練り、凹部に塗り重ねます。
この面の中塗りは、大直しが乾燥するまで待つ必要があります(翌週末に実施予定)。
練った中塗土が下写真のとおり余っていますので、一週間、乾燥しないように水を加えてブルシートを掛けておきます。
現代の化学物質が配合された塗り壁材はすぐに硬化してしまうため、こうしたことができませんが、中塗土は田圃の土のように扱えます。
そして、壁塗りして乾燥させれば固結、さらに水を加えれば元の状態に戻って何度でも再利用することが可能なわけで、土と言う素材の優秀さを感じます。
一方、現代は科学知識を駆使して色々とやっていますが、結局のところは将来の世代に厄介なゴミを残しているだけなのではないかと危惧します(スウェーデンの少女が怒るのも当然です)。
翌週末、3面目を塗って中塗り完了です(下写真は乾燥が進んだ状態)。
上塗りは最後の仕上げとなりますので、その前に壁チリ(廻り縁や柱、巾木の壁に接する木部)の塗装を行なっておくことします。
壁チリは、これまでの作業で土などがついていますので、まずは掃除して汚れを取り除きます。
壁チリの掃除は手間がかかるのですが、水を少し含ませた刷毛(チリ箒)を使って洗い流すようにすると作業が捗ります(左官屋さんに教えていただきました)。
壁チリの木部を塗装する際、壁に塗料がついたとしても仕上げ塗りにより隠れます。
とは言え、アクのような感じで悪影響を及ぼしかねませんので、念のためマスキングテープ(下写真で黄色のもの)で養生しておきます。
ついでに柱の節穴をパテ埋めしておきます(木工用パテは着色が可能ですが、オイルステインとの相性は余り良くありません)。
床の巾木を塗装。
同様に柱と天井の廻り縁を塗装。
天井は、まだ開いたままの状態です。
今回、廻り縁の塗装ができたことから、次回、天井板を張ることにします。