ブログ」カテゴリーアーカイブ

古民家の自然換気(41)土壁の修復⑤裏返し&貫伏せ

前回、荒壁つけを行いました。

暑い季節のため乾燥・収縮も早く進み、一週間後の週末には下写真の状態にまでなりました。

これは、まだエツリ(竹小舞)の片面(母屋側)しか壁土がついていない状態ですので、反対側(下屋側)から裏返しを行うことで下地と一体化させます(下図で「①裏返し」)。

この上部には貫(新設)がありますので、裏返しに続けて貫伏せを行うことにします(下図で「②貫伏せ」)。
さらに、この上部は土壁が剥離してエツリだけが残っている状態になっていますので、貫伏せに続けて荒壁つけを行います(上図で「③荒壁つけ」)。
このようにややこしく書くと「①裏返し」「②貫伏せ」「③荒壁つけ」のように区分されるものの、コネた壁土をつけることに変わりはありません。

土壁の剥離箇所は下写真の状態で、すべてが剥離しているわけではなくて辛うじて残っているところもあります(下写真は母屋側から撮影)。

このように中途半端に剥離しかけているものは全て取り除いたうえ、新たに壁土をつけ直すことにします。

剥離した壁土が、壁と床との隙間に挟まってしまうため、床板まで取り外す羽目に・・・。
また、上写真で壁の向こう側(下屋側)にブルーシートが写っていますが、これは直下にあるシステムキッチンの養生です。
どのような作業も同じだと思いますが、メインの作業よりもこうした段取りのほうに手間や時間を要するものです。

剥離しかけていた土壁を取り除き、すっきりしました(下写真は下屋側から撮影)。

これから①裏返し、②貫伏せ、③荒壁つけを続けて行うことになりますので、貫伏せに用いるシュロの皮を前もって準備しておきます。

現在では寒冷沙を用いることがほとんどかと思いますが、自然素材にこだわり(<買わなくても済む)、里山にあるシュロの木から採取してきました。

裏返しを行い、それが終わったところで壁土を糊のように使って貫にシュロ皮を貼り付けます。

貼り付けたシュロ皮のうえに壁土をつけたのち、その上部について荒壁つけを行います。

上写真は翌朝に撮影したもので、裏返しを行ったところは表側(母屋側)の壁土に水分が吸収されるため既に亀甲状のひび割れが生じています。

実際、表側は下写真のとおりエツリの形状で紋が浮かんでおり、水分を含んでいるのがわかります。

荒壁つけを行ったところは、反対側(母屋側)のエツリの隙間からヘソが出ていますので、それを撫で返しておきます(裏撫で)。

もう1面の壁(荒壁つけ&裏撫でまで終わっている状態)も同様に作業を行います。

裏返し、そして貫伏せ用のシュロ皮の貼り付け。

貫伏せ、そして荒壁つけ。

今日予定していた作業はこれで完了です。
ところで、こうした左官作業を行うとき、私のような素人は材料の量の見当がつかずに作りすぎて余ってしまうことがあります。
今回も少し余ってしまいましたので、それを使って別の箇所の補修を行なっておくことにします。
場所は小屋裏(厨子二階)で、小さい面積ですが壁土が剥離しています。

壁土を塗りつけます。

荒壁用の土を使っていますので乾燥すれば表面にひび割れが生じますが、小屋裏ですので十分でしょう。
こうした補修が容易に行えるのは土壁の利点ですね。

<続きます>

古民家の自然換気(40)土壁の修復④荒壁つけ

前回、土壁の下地を作るべくエツリ(小舞掻き)を行いました。

このエツリ(竹小舞)に壁土をつけて荒壁を作り、その後、中塗り、上塗りと順に行って土壁を仕上げることになります。
このうち荒壁が土壁の本体となる部分で、作業量も次のとおり多くなります。

  • 荒壁つけ
  • 裏返し
  • 貫伏せ
  • 大直し

このため、数回に分けて行う必要があるのですが、今回は中途半端な状態になっている既存の壁と一体化する必要がありため、これを考慮して作業を進めていかなければなりません。
そこで、まずは先般エツリを行なったところ(新たに設けた貫の下部)に母屋側から壁土をつけることにします(下図で朱色着色箇所)。

作業場所の真下には台所のシステムキッチンがあるため、養生や足場の確保で作業は苦労しそうです・・・。
さらに土壁(垂れ壁)の下屋側にはレンジフードまであり、現状では壁前に立つことさえできません。
そこでレンジフードの前面カバーなどを取り外して最小限の作業スペースを確保しておきます。

レンジフード上部のダクト配管箇所は、石膏ボードで覆いが作られていたのですが(上写真でクロスが貼られていない部分)、今回、養生を行なった機会に解体・撤去しました。
上部のダクト配管が丸見えの状態になったものの、レンジフードの清掃・点検がやりやすくなったのではないかと思います(ダスキンなどに頼まず自ら行いますので、見た目より清掃・点検のしやすさ重視です)。

作業スペースを確保できたところで、次に壁材の準備です。
壁土は3年前の改修工事(減築箇所)で発生したものが残っていますので、これを使います(いろいろと使いましたが、今回で全て使い切る予定)。
スサ用の藁も、屋根裏に断熱用として敷かれていたムシロを再利用します(100年以上前のもの)。

壁土は上写真のとおり茶色く、山で土取りしたと思われる粘性土です。
ネットで壁土の写真を検索すると、田圃の土のような灰色のもの(荒木田土)を見かけることが多いですが、それらとは異なります。
ところで、当地には古代(古墳〜鎌倉時代)に土師器や須恵器が生産されていた古窯趾があります。
また、戦後まで瓦の製造も行われており、当地の名前が入った瓦が京都の寺院などで使われていると聞いたこともあります。
このように製陶が盛んだったのは近くで原料となる粘土が入手できたわけで、同様に壁土用の粘性土も容易に山から採取できたのでしょう。
山裾などで不自然な地形になっているところを見かけることがありますが、ひょっとすると壁土を採取した跡なのかもしれません。

さて、スサ用の藁を刈り込み鋏で短く切って投入し、水を加えてコネます。

土・スサ・水の配合については、コンクリートのように厳密にしなくとも自然素材だけあって感覚で良い具合を掴めます。
と言いつつ、スサを入れすぎてしまいコネづらくて大変・・・。

こうしてコネた壁土を中塗り鏝を使ってエツリにつけて均します。

もう1面も同様に。

「素人にしては上出来ではないか」と満足(^_^)
しかし、以前に左官屋さんから指摘を受けたのですが、荒壁つけの段階で、このように平滑に仕上げる必要はないそうです。
逆にもっとラフにして、次の大直しや中塗りとの結合が高まるようにすべきだとのことでした(^_^;
私のような素人は、やる必要のないところで無駄に綺麗に仕上げて満足し、その一方で肝心の仕上げ塗りでダメダメの結果になってしまうと言う・・・。

さて、最後に裏撫で行うのを忘れてはなりません。
先に作業スペースを確保したレンジフードと丸太梁との間から入ります。
壁土をつけた反対側はエツリの隙間からヘソが出ていますので、それをコテを使って撫で返しておきます。

裏撫でしたことでエツリとの固着がより強固になったことでしょう。

<続きます>