主屋再生」カテゴリーアーカイブ

古民家の自然換気(42)下屋の天井(断熱)

前回、下図の「①裏返し」「②貫伏せ」「③荒壁つけ」について、下屋側から壁土をつけました。

土壁の作業はまだ残っていますが(翌週末に予定する大直し等)、下屋側からの作業については前回で完了です。

この下屋については、以前のブログ記事にも記載したとおり、屋根裏の熱い空気が居室内に入ってきてしまう状態になっています。

このため、盛夏を迎える前に対応すべく今回の一連の作業を行っているのですが(ブログ記事は遡って書いていて実際には6月から作業開始)、土壁部分についてはとりあえず塞がった状態になりました。

そして、この土壁に係る作業も下屋側から行う分については全て完了しましたので、上図で朱色着色箇所に天井を設けて断熱を図ることにします(天井の設置を先行すると土壁の作業に支障となる)。

天井板を張るためには、その受け材(廻り縁)を全周に廻す必要があります。
こうした受け材には、他の場所のものを見ると7分(21mm)×1寸8分(54mm)程度の角材が使われています。
手持ちの木材を確認すると、1寸5分(45mm)×1寸8分(55mm)の端材がありますので、これを半分に挽き割ることで木取りできそうです。

ちなみに、この端材は昨年に取り付けた付け鴨居(的なもの)に用いたもので、貧乏な我が家にとっては高級な上小・無節です。
ちょうど良い使い道が見つかりました。

バンドソーを使って縦挽き。

自動カンナ盤で7分の厚さに調整。

ビス留め箇所について下穴を加工。

塗装。

この内の1本についてはクロス仕上げの壁に取り付けることになります。
いつもは古色塗りをすることが多いのですが、クロス壁のところに古色塗りはどうにも違和感が生じるため、今回の塗装にはオイルステイン(バトン:オーク)を使っています。

先の木材からは短辺側のものまでは木取りできなかったため、同サイズの垂木材から木取りして塗装(垂木材のため節があります・・・)。

長辺側を取り付け。

石膏ボード下地の壁側(上写真で右側)は間柱の位置でビス留め。
反対の丸太梁側は適当な間隔で釘留めしています。

ちなみに、昔は上写真で右側にさらに下屋が続いていて、そこに風呂がありました。
20年ほど前のリフォームにおいて、この部分を減築して新たに壁を設けたため土壁ではなくて石膏ボード下地の壁になっているのです。

また、上写真で右側には電気ケーブルが写っていますが、これも20年前のリフォーム時に配線したものです。
3年前の改修工事で電気関係は厨子二階に配線して点検できるようにしましたので、いずれはこの電気ケーブルも移設したいと考えています。

短辺側も取り付け。

これで天井板を張れる状態になりました。
天井板は既に手元にあるのですが、天井板を張ってしまうと先に書いた電気ケーブルの移設ができなくなってしまいます。
そこで、当面は断熱材だけを仮置きした状態にしておくことにします。

<続きます>

古民家の自然換気(41)土壁の修復⑤裏返し&貫伏せ

前回、荒壁つけを行いました。

暑い季節のため乾燥・収縮も早く進み、一週間後の週末には下写真の状態にまでなりました。

これは、まだエツリ(竹小舞)の片面(母屋側)しか壁土がついていない状態ですので、反対側(下屋側)から裏返しを行うことで下地と一体化させます(下図で「①裏返し」)。

この上部には貫(新設)がありますので、裏返しに続けて貫伏せを行うことにします(下図で「②貫伏せ」)。
さらに、この上部は土壁が剥離してエツリだけが残っている状態になっていますので、貫伏せに続けて荒壁つけを行います(上図で「③荒壁つけ」)。
このようにややこしく書くと「①裏返し」「②貫伏せ」「③荒壁つけ」のように区分されるものの、コネた壁土をつけることに変わりはありません。

土壁の剥離箇所は下写真の状態で、すべてが剥離しているわけではなくて辛うじて残っているところもあります(下写真は母屋側から撮影)。

このように中途半端に剥離しかけているものは全て取り除いたうえ、新たに壁土をつけ直すことにします。

剥離した壁土が、壁と床との隙間に挟まってしまうため、床板まで取り外す羽目に・・・。
また、上写真で壁の向こう側(下屋側)にブルーシートが写っていますが、これは直下にあるシステムキッチンの養生です。
どのような作業も同じだと思いますが、メインの作業よりもこうした段取りのほうに手間や時間を要するものです。

剥離しかけていた土壁を取り除き、すっきりしました(下写真は下屋側から撮影)。

これから①裏返し、②貫伏せ、③荒壁つけを続けて行うことになりますので、貫伏せに用いるシュロの皮を前もって準備しておきます。

現在では寒冷沙を用いることがほとんどかと思いますが、自然素材にこだわり(<買わなくても済む)、里山にあるシュロの木から採取してきました。

裏返しを行い、それが終わったところで壁土を糊のように使って貫にシュロ皮を貼り付けます。

貼り付けたシュロ皮のうえに壁土をつけたのち、その上部について荒壁つけを行います。

上写真は翌朝に撮影したもので、裏返しを行ったところは表側(母屋側)の壁土に水分が吸収されるため既に亀甲状のひび割れが生じています。

実際、表側は下写真のとおりエツリの形状で紋が浮かんでおり、水分を含んでいるのがわかります。

荒壁つけを行ったところは、反対側(母屋側)のエツリの隙間からヘソが出ていますので、それを撫で返しておきます(裏撫で)。

もう1面の壁(荒壁つけ&裏撫でまで終わっている状態)も同様に作業を行います。

裏返し、そして貫伏せ用のシュロ皮の貼り付け。

貫伏せ、そして荒壁つけ。

今日予定していた作業はこれで完了です。
ところで、こうした左官作業を行うとき、私のような素人は材料の量の見当がつかずに作りすぎて余ってしまうことがあります。
今回も少し余ってしまいましたので、それを使って別の箇所の補修を行なっておくことにします。
場所は小屋裏(厨子二階)で、小さい面積ですが壁土が剥離しています。

壁土を塗りつけます。

荒壁用の土を使っていますので乾燥すれば表面にひび割れが生じますが、小屋裏ですので十分でしょう。
こうした補修が容易に行えるのは土壁の利点ですね。

<続きます>