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古民家再生:壁の仕上げ塗りと仏壇

3年前に行った主屋(古民家)の改修工事において、北西角の下屋部分はシロアリ被害が酷かったことから減築しました。

減築に伴い、内側に控えた箇所に新たに壁を設けることになりました。
壁はラスボード下地で、そこまでは大工さんに行っていただき、その後の左官工事(石膏プラスター+中塗り)は左官屋さんの手ほどきを受けてDIYにて行いました。

上写真は中塗り直後のものです(この時点では天井や畳は古い状態)。

ちなみに、下写真で奥の一番大きな壁は手本として左官屋さんに塗っていただいたところで、そのほかはDIYによるものです。
こうして遠目で見れば、本職も素人も変わりない出来栄えです(もちろん実際には歴然とした差があります)。

まだ中塗りの段階なのですが、表面をそれなりに仕上げておき(コテ押さえ)、2〜3年して余裕ができてから上塗り(仕上げ塗り)をしようと考えていました。
一向に余裕はできないものの、時だけは過ぎて3年が経ったことから仕上げ塗りを行うことにします。

仕上げ塗りの壁材は、統一感をもたせるため、3年前に客間側を左官屋さんに塗っていただいたものと同じもの(色)を使います。

この壁材はキング鈴井商会の「エコロジー」で、珪藻土を主成分とするものです。

当初は大手メーカーの聚楽壁(酢酸ビニル樹脂配合)が念頭にあったのですが、左官屋さんのオススメで、この壁材にしました。
合成樹脂を含まないうえ、自然なテクスチャーで上品な感じがして大変気に入っています。
ただ、今回壁塗りをするため左官屋さんご用達の建材屋さんで購入したのですが、価格が安物の2〜3倍ほどと高価なのが欠点です・・・。

価格はさておき、最大の問題は本職が使う壁材を私のような素人が扱えるのかです。
写真はありませんが、取説に従って練ってみると、これまでに扱ったことのある漆喰や聚楽とは違ってフワフワした感じがします。
パッケージに記載の仕様を確認すると、成分のひとつにパルプ繊維とありますので、これがフワフワ感の要因のようです。

繊維が配合されているため、表面の仕上がりがツルツルではなくて自然な感じになるのかもしれません。

そして、施工途中の写真はなくて一気に完成。

完成度は別として、私のような素人でもそれなりに塗ることができました。

近づいて見ても、興味のない人であればDIY施工とは気づかないことでしょう。

下写真のような小壁は塗りづらいのですが、小手先のコテさばきで乗り切りました。

窓から見える裏庭の景色も、新しい壁によって美しくみえるように感じます。

ちなみに、この部屋は昔、亡き祖母が使っていたのですが、そのときは下写真(改修工事前に撮影)のように暗くて薄気味悪い感じでした。

祖母の生前に改修してあげれば喜んでくれたことと思いますが、とりあえずは無事、仕上げ塗りまで終わったことを仏前に報告しておきましょう。
と言うことで隣の仏間に行くと、どうにも仏壇の前にしつらえてある襖が気になります。

この襖は慶事などで祝いの席を設ける際に仏壇を隠すためにあるようです。
我が家の要である仏壇を隠す必要はないようにも思いますし、この襖は片側が床柱(丸太)に取り付けてあるため、開けた時に傾いた形になって気持ち悪いのです。

襖自体も経年による汚れ(シミ等)が目立ってきていますので、この際、撤去することにします。

撤去完了。

二重にあった扉が仏壇のものだけになってスッキリしました。

ちなみに、この仏壇は明治18年(132年前)に私の高祖父(4代前)が仏壇屋(荘五郎)さんに作ってもらったもので、古民家の主屋(明治44年築)よりも古いものになります。
このように古いですし、仏壇屋さん曰く1間幅の仏壇を作るには1千万円近くかかるとのことで、これは大変なことだと思っていました。
しかし、こうして見ると状態も悪くなく、あと100年は大丈夫のようにも見えます。
古民家同様に大切にしていけば良いのかも。

仏壇の左右の端には下写真のとおり紙を剥がした跡がありますが、これは祖母が仏壇との隙間から汚れた荒壁が見えるのを嫌って目隠ししたものだそうです。

また時間ができたときに仏壇を一旦移動させて壁を綺麗に塗り直せば(中塗り)、祖母も満足することでしょう。

とりあえずは紙片を綺麗に剥がしておきます。

ゴタゴタしてしまいましたが、仏前に仕上げ塗り完了の報告です。

古民家の自然換気(43)土壁の修復⑥大直し

前回、下屋に天井(当面、断熱材のみ)を設けました。

土壁については、下屋側から作業がすべて終了し、下図で「2-1裏返し」「2-2貫伏せ」「2-3荒壁つけ」まで終わった状態になっています。

このうち「2-3荒壁つけ」の反対側(母屋側)について、今回、裏返しを行うことにします(上図で「3-1裏返し」)。
「2-3荒壁つけ」では屋根の受け材(垂木掛け)が支障になって既存の土壁に繋げていないのですが、今回の「3-1裏返し」により既存の壁と一体化できることになります。

この下方(天井下)は前々回に「1荒壁つけ」が終わっていますが、居室内に位置するため最終的には中塗り・上塗りまで行って仕上げる予定です。
その準備として、今回、さらに壁土をつけて平面の精度を高めることにします(上図で「3-2大直し」)。

まずは「3-1裏返し」から。
先週末に反対側(下屋側)から荒壁つけを行いましたが、1週間が経過して下写真の状態にまで乾燥が進んでいます。

先にも書いたとおり現状では既存の壁と繋がっておらず、2cm弱の隙間があります。
この隙間を利用してPF管(可とう電線管)を通しておきます。

3年前の改修工事において、電気ケーブル類は点検が可能なように厨子二階(小屋裏)に配線し直しましたので、ここで壁を貫通させて下屋内の照明器具などに配線するようにしたいと考えています。

裏返しは、前回と同様に行なって完了(下写真は1週間後に撮影したもの)。

この場所は厨子二階(小屋裏)のため荒壁で仕上げて問題ないのですが、既存の壁との接続箇所に不安があったため、大直しを行えるように荒壁の仕上げ面を既存壁のツラから2分程度控えてあります(今のところ、その必要はないようです)。

これでようやく、既存の壁から丸太梁までが土壁で一体化されました。

<Before>

<After>

割れや剥離していたところが修復され、見た目的にも安定感が増しました。

次に「3-2大直し」を行います。

現状は、下写真のとおり「1荒壁つけ」までできています。

さらに壁土をつけて平面の精度を高めることで、今後の中塗り・上塗りに備えるわけです。

このように土壁は荒壁つけ・大直し・中塗り・上塗りのように何回かに分けて施工されますが、これはそれぞれに求められる強度や仕上がりを考慮してのことだと思います。
そして、仕上げに近づくにつれ貧配合(砂の割合大)になっていきますので、今回の大直しにおいても砂を混入することにします。

とは言え、素人ゆえに適当な配合量など分かりませんので直感で1/4(体積比)程度としました。
コテに取ってみると、いわゆる「サクい」状態になっているのが分かります。

サクくなるほど私のような素人には扱いづらくなるのですが、なんとか無事完了(下写真は1週間後に撮影)。

上写真の面については、既存の壁と取り合いがありますので、今後、中塗りをすることを考慮し、既存壁のツラから2分程度控えています。

見た目は別にして、土壁の強度面ではこれで当初の目的を達成しました。
今後の中塗り・上塗りについては、荒壁が完全に乾燥した後になりますが、早くても秋以降の予定です(未定)。