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仏間の改修(2)土壁を補修

前回、仏間から仏壇を出すことができました。

そして、仏間の状態を確認したところ、天井が落ちかかっていたことから天井を作り直すことにし、廻り縁を取り付けるところまでできました。

この廻り縁に載せる形で板を張れば天井になるわけです。

天井板にはちょうど手元に杉の羽目板がありますので、これを使うことにします。

この羽目板は、4年前にホームセンターで購入したものです。
4年前の主屋の改修工事においては、外壁のシブキ板張りを、大工さん(材木屋さん)に手配してもらった羽目板を使ってDIYで施工したのですが、施工ミスから3枚不足したため、上写真の羽目板をホームセンターで買ってきたのです。
しかし、大工さんに手配してもらったものと比べてみると、同じ杉の羽目板でも全然違うのです。
大工さんに手配していただいものは赤身材で板厚もあるのに対し、ホームセンターで購入したものは白太部分が多くてペラペラ(外装用としては不適)。
結局、ホームセンターで購入したものは外壁には使わず、いずれ内装用にと思ってストックしてあったわけです。

ただ、3枚では足りませんので、ホームセンターに買いにいったところ半坪1,700円の格安品を発見!
喜んで1束6枚(半坪)を購入し、帰宅後に束を解いてみると・・・。

節が多いのは当然としても、全ての板に結束の日焼け跡があると言うことは、長期在庫品で、一番上と下の日焼けして売り物にならないものを集めてホームセンターで処分しているようです。
そんな見た目の悪い余りモノでも、私の価値観では綺麗な合板よりも、こちらの無垢板のほうを良とします。
それに「余りモノには福がある」とも言いますし(^_^)

見た目が悪いのは、手間をかけてカバーです!
まず、プレナーにかけて表面を少し削ってみます。

若干、日焼け跡が薄くなったものの効果はそれほどです。
最終的には柿渋を塗って仕上げるつもりですので、それに期待することにします。

今回新たに購入したものは、板の両端が「本実」加工されており、その雄と雌を組んで継ぐようになっています(「目透かし」も有り)。

一方、以前に購入したものは、単純な「相じゃくり」です。

2種類の実があることから両者(下写真で左側:相じゃくり、右側:本実)を継ぐところが1箇所生じますが、そのままでは継げません。


簡単なのは両者の実部分を切り落として突き付ける方法ですが、隙間が生じて天井から埃やゴミが落ちかねません。
そこで、本実のほうを単純な相じゃくりに加工し直して継ぐことにします。

テーブルソーに溝切りカッターを装着し、目透かしを加えた幅で溝を切ります。

これで両者を相じゃくりにて継げるようになりました。

目透かしをいれているものの、少し感じが異なるように感じて確認すると、本実のものは溝の両肩が面取りしてあります。

この辺りは好みの問題でしょうが、見た目を揃えるため同様に面取りしておきます。

わずかな面取りですが、随分と見た目の印象が変わるものです。

相じゃくりのほうは目透かしが入っていないため、目透かし分だけ溝幅を広げ、溝の両肩を面取りして見た目を揃えます(下写真は面取り前)

全ての板を組み、継ぎや見た目が揃っているか確認します。

板の色の差が目立ちにくいようにバラして配置しています。

サンダーをかけたうえ柿渋を塗布して仕上げます。

しばらくの間、日の当たるところに置いて変色を促すことにします。
その間に、天井が無い今のうちにやっておいたほう良い作業を進めることにします。
その一つが屋根裏換気口(自然換気)の設置です。

母屋については、夏の暑さ対策を兼ねて換気口を設けてありますが、この仏間を含めて下屋部分には換気口がひとつも無い状態です。

古民家は隙間があるため換気口が無かったとしても問題ないと思いますが、夏場は熱気が溜まってモンモンとしていますので、下屋の起点(終点)となるこの場所に設けることにします。

屋内側から設置位置を決め、目印としてドリルで小穴をあけます(下写真で白い紙状のものは透湿防水シート)。

この小穴を中心にして屋外側からコアドリル(φ110mm)で穿孔。

換気用ガラリ(+長さ200mmのSUパイプ)を嵌め、周囲をシーリングします。

天井だけでなく壁も補修が必要ですが、壁の補修についても天井がないほうがやりやすいため、天井を張る前に行うことにします。
壁の現状は下写真のとおりです。

壁はもちろん土壁で、荒壁の状態です(土壁の場合、「荒壁」→「中塗り」→「上塗り」の順に仕上げていきます)。
仏壇で隠れるため荒壁のままなのでしょうが、実際には仏壇との隙間から汚れた荒壁が見え、それを嫌がった亡き祖母は隙間を塞いだり、襖のようなもの(昨年撤去)で隠したりしたようです。
そうしたこともあり、今回、壁の亀裂を修復するとともに中塗りを行なって壁を綺麗にすることにします(中塗りだと砂が落ちて掃除がしにくいため、結局は上塗りまで行うことにしました)。

中塗りで壁の亀裂も埋められそうですが、ここは丁寧に荒壁土を使って亀裂や欠損箇所を埋めることにします(強度を期待)。
荒壁土は少しあれば十分なため、左官バケツにスコップを使って練ります。

土壁が珍しくなった現在、土壁の補修と言うと経験と技術が必要なことに思われますが、実は粘土遊び同然なのです。
下写真のような欠損箇所や亀裂の周囲にたっぷり水打ちし、コテを使って荒壁土を埋めるだけです。

周囲の土としっかり一体化して、見た目も綺麗に仕上がります(下写真は乾燥後)。

本来、土壁は私のような素人にも扱いやすいものですし、何より繰り返して使うことができるサステーナブル(持続可能)な建材として環境にも優しいです。
現在、壁材として多用されている石膏ボードも環境に優しい建材として宣伝されていますが、これは火力発電所の脱硫工程において排出される副産物を<再利用>していることを捉えてのことで、本来は人間にも地球にも優しいものではないはずです(現在の石膏ボードは吉野山の天然石膏を使っているわけではありません)。
廃棄物のような代物を売却できる電力会社にとっては優しい建材と言えなくありませんが・・・。

閑話休題。
壁の亀裂等を修復した後、中塗りをするつもりでしたが、先に取り付けた廻り縁と土壁(荒壁)との隙間を確認すると広いところ(壁の中央付近)で2cm近くあるのです。

中塗りは厚く塗ってもせいぜい1cmですので、この隙間を中塗り(1回)だけで埋めるのは難しいです。
そもそも、こうした隙間ができるのは荒壁の段階では平面が十分に出ていないためです。
やはり、中塗り前に大直しを行う必要があると言うことです。

大直しを行うことにし、トロ舟に荒壁土+藁スサ+砂(基本的に仕上げに近づくにつれ砂の混合割合が増す形で、今回の大直しでも砂を配合)を入れて練ります。

練った壁土を中塗りコテを使って壁全体を塗ります(下写真は翌日に撮影したもので、乾燥が進んでいます)。

大直しにより廻り縁との間にあった隙間も埋まりました。

中塗りは、大直しが完全に乾燥した後に行います。

仏間の改修(1)仏壇を移動

今年の夏、下写真の薪棚を作りました。

薪の消費量に対し、この薪棚の容量だけでは足りず、あと2箇所の薪棚を設置する計画です。
その内の1箇所は下写真のとおり主屋(古民家)の軒下を有効利用する形で設けたいと考えています。

ところで、この場所は4年前の改修工事において減築した箇所(下写真で朱色破線)にあたります。

減築に伴い、上写真で手前側については外壁を新設したため、その際に床下換気口(特大サイズ)を設けてもらいました。
一方、奥側(薪棚設置予定箇所)については元々あった内壁(土壁)を外壁にしたことから床下換気口がありません。
ここに薪棚ができると床下換気口の設置工事が難しくなっていまうので、薪棚に先んじて床下換気口を設置するのが良さそうです。

床下換気口を設けるにはコアドリル(φ110mm)で土壁を穿孔しますが、柱や土台を避けるため慎重に穿孔位置を決定する必要があります。
この屋内側は仏間(下写真)で、その床下を確認すれば一目瞭然なのですが・・・。

実は仏壇が一間幅のラージサイズで重量があるのか、どうしても動かせないのです。
このため、4年前の改修工事の際は仏像や位牌などの中身だけ移動して仏壇は残置した状態(下写真で朱色矢印)で工事していただきました。

柱や土台などの構造部分は四方から工事していただけたのですが、天井や壁、床の内装部分は仏壇があるため手付かずの状態のままです。
他と同様に酷い状態なのだと思いますが、仏間がどうなっていようと日常生活に支障がないことを良いことに知らぬふりをしている有り様です・・・。

ところで、私自身が理想の家と考えるのは鴨長明の方丈庵です。
方丈庵は約3m四方の小さく粗末な家で、四方の壁(土壁)さえもなかったそうです。
そんな何もない家にも関わらず、最も奥の上座には仏像の掛け軸が掛けられ、読経するスペースが設けられていたとのこと。
物や金銭、名利を追い求めたところで結局得られるのは虚しさだけであることは方丈庵を見るまでもなく承知しているはずなのですが、慌ただしい現代の生活にかまけて実際には真逆の方向に向かっているのが正直なところです。
こうした反省もあって、やはり家には方丈庵を倣って日々の生活において心を静かにする場が必要なのではないかと感じています。
我が家でそのような役割を担うのが仏間になりますが、その天井や床が落ちていては心も穏やかになりませんので、この機会に、どうにかして仏壇を移動して修繕すべきは修繕することにします。

何はともあれ仏壇の移動です。
秘密兵器として、家具を移動するための「トローリー」なるものを使ってみることにします。

ホームセンターで購入するつもりでしたが、百均でパチもんが1個100円で売っていましたので、それを2個購入しました。

トローリーに仏壇を載せて前方の部屋に引き出すとして、部屋の畳をはずします。
そこに仏間と同一レベルの道(仮床)を設けてトローリーがスムーズに走れるようにします。

角材を組んで合板を張ります。

角材の高さを調整して仏間側のレベルに合わせます。

早速、仏壇の下にトローリーを差し込みたいところですが、実は長押と仏壇(上端)とのクリアランスが小さくて無理なのです。

仕方なく、ある程度のところまで仏壇を引きずって前に出します。

長押と仏壇(上端)との間はギリギリです。

ここまで出せれば、あとはトローリーに載せて移動できます。

こうして何とか仏壇を仏間から出すことができました。

これまでどうしても動かせなかった仏壇ですが、今回移動させたことで、その原因がわかりました。
実は仏壇が下図(側面図)のとおり奥の壁に接して据え付けられており、それをこれまでは手前を持ち上げようとしていたため微動だにしなかったのです。

側面図

なぜ仏壇が壁に接して据え付けられているのかと言うと、仏壇の奥行きが仏間に対して大きく、そうでもしないと仏壇が前方に飛び出してしまうためのようです(それでも一部が敷居に載っている状態)。
この仏壇(明治18年製)は主屋(明治44年築)よりも古いもので、サイズの基準が先代の主屋をベースにしているようです。

いずれにせよ、仏壇を移動したことで仏間の状態を確認できるようになりました。

まず目につくのは土壁に生じている割れ目です。
割れ目の形状や間隔から貫伏せの箇所(壁土の塗り厚が薄い)で生じているようです。

割れ目からも貫と思われる木材が確認できます。

昭和東南海地震(昭和19年)で土壁に亀裂が入ったと聞いていますので、そのときに生じたものなのかもしれません。

下写真のように欠けているところもありますが、これは地震ではなくネズミが齧ったものでしょう。

床のほうに目を移すと、ゴミが散乱していて汚れていますが、床板はしっかりしています。

一方、天井はどうでしょうか?

写真でみると悪くないようにもみえますが、実は中央付近から天井が落ちかけています。

天井を支えている廻り縁が腐朽しているのです。

雨漏りの形跡はないのですが、なぜこれほど腐朽しているのか??
以前、仏間の裏側に廊下があったのですが、裏側を通るのは良くないとのことで締め切って荷物置き場になっていたのです。
当然、換気も良いはずがなく、こうした腐朽を進めてしまったようです。

これでは新しく作り直すしかありませんので撤去します。
屋根は4年前の改修工事により新しくなっているものの、天井には100年以上にわたるゴミや埃が積もっおり、たかが1畳の広さですが全身埃まみれになっての作業です・・・。

それでも無事撤去。
作り直す際の参考にするため撤去した廻り縁を確認します。

腐朽部分です。

部材同士は下写真のホゾで組まれています。

奥から手前に向かって部材を積み重ねて組んでいくようになっています。
適当に釘留めしてあるのかと思いましたが、仕事が丁寧です。

柱側を確認すると、廻り縁を取り付けるための切り欠きが設けられています。

同様にして廻り縁を作り直すとし、採寸して図面を起こします。

手間はかかりますが、部材同士の組み方も当初のものを倣っています。

廻り縁に使う材は、手元にある垂木材(75×45mm)を半分に挽き割って使うことにします(→35×45mm)。

この垂木材は亡き父が農作業用に使っていたものですが、節が少なくて廻り縁にするのにちょうど良かったです。

木取りした材にホゾ穴をあけます。

次にホゾを加工。

ホゾ穴にホゾをのせる形で組むことになります。

見える2面にヤスリがけして部材の完成です。

まずは、奥側の廻り縁を柱の切り欠き部にビス留めして取り付けます。

次に両側面の廻り縁(ホゾ)を先の廻り縁(ホゾ穴)にのせる形で取り付けます。

これらに手前側の廻り縁をのせれば、四方に廻り縁をまわせたことになります。

この廻り縁の上に板を張れば天井になります。