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仏間の改修(4)巾木と中塗り

前回、古材(欅の一枚板)を再利用して仏間の床を作り直しました。

この床板は、20年程前に解体した離れの床の間に使われていたものです。
その床の間の隣には床脇(違い棚などがあるところ)もあったのですが、実はその床脇の床板(下写真、3×6尺)も残っています。

床の間は欅の一枚板でしたが、こちらは床脇と言うことでランクが落ちるようで、軽く柔らかい樹種で、2枚の板を矧いであります。

床の間と同様に、反り防止のため蟻桟が入れられていますが、こちらは2枚の板を剥ぐため下写真で朱色矢印で示す加工も施されています。

蟻桟と板材の双方に溝を切り、そこに楔状のものを打ち込むことで2枚の板を固定しているわけです。

金物を使わず、しかも手加工だけでなんでもやってしまう昔の技術には本当に感服します。

ただ、保管場所もとりますし、今回、欅の一枚板のほうを再利用できたことから、こちらは整理すべく分解します。

整理すると言っても可能な限り有効利用したいものです。
そこで思いついたのが、仏間(床板)の巾木として使うことです。

とりあえず適当なサイズで切り、壁と床との隙間を塞ぐ形で設置してみます。

底にある蟻溝が思った以上に目立ち、素人工事とは言え、これは厳しい感じです。

古材を再利用するのは諦め、次に思いついたのが、以前、神棚を移設した際に購入した檜の間柱材です(下写真で台の部分に利用)。

私自身、いつも古材や杉を使っているとおり、間柱材(特一)とは言え檜は使うのが勿体なくて残っていたのです。
仏間に使うのですから、ここは奮発して新材の檜を使うことにします(間柱材ですが・・・)。
バンドソーを使って挽き割ります。

さらにプレナーにかけてサイズを調整します。

もともと特一等級の下地材ですので、頭をひねって木取りしても、どうしても節が表面に出てしまいます。
死節の穴は木工パテ(合成樹脂)を使って塞いでおきます。

贅沢な欅の一枚板も良いですが、こうした間伐材的な節のある木材を大事に使うと言うのも良いもので、私自身にとってはこちらのほうが分相応のように感じます。

手前側になる角をトリマーを使って面取り(飾り)します。

ヤスリをかけて仕上げます。

パテ埋めした箇所もそれなりの仕上がりになりました。

こうして作った巾木を仏間に仮置きしてみます。

柱との取り合い部を現物に合わせて正確に切ります(大工さんだと柱側も切り欠いて素晴らしく綺麗に納めるのだと思います)。

一旦取り外して塗装したうえ、隠し釘を打って本設します。

塗装は床板に合わせて摺り漆(未施工)にすることも考えましたが、天井の廻り縁や柱のほうに合わせてオイルステイン(VATON、オーク)を用いることにしました(仏間で煤汚れがないため古色塗装はしません)。

壁と床との間にあった隙間は巾木により大部分は塞がりました。
しかし、下写真のとおり土壁の平面が完全でないため、僅かな隙間が残っています。

土壁は現在、「大直し」まで終わっており、次の「中塗り」において5mm程度塗り重ねますので、これにより壁と巾木との隙間を完全に塞ぐという塩梅です(現代の住宅では、壁材として合板や石膏ボードと言った工場生産の完全に平面が出た材料を使うため、こうした隙間が生じることがなくて楽で便利なのですが、手仕事の面白さも一緒に無くなってしまっているのではないでしょうか)。

と言うことで、中塗りを行う準備をします。
トロ舟に中塗土(1)、砂(2.5)及び水を加えて練ります。

本来は藁スサ(アク抜きされたもの)も加えるのですが、中塗土を購入する際に建材屋さんに頼んだところ、本職が購入するような大袋に入ったものしかないと言うことで購入しませんでした。
荒壁の際は、自分で藁を短く切ったものを使っているのですが、これだとアクが出て上塗りに悪影響を及ぼしかねないため藁スサなしとしました。

練った壁土を中塗りゴテを使って壁全面に塗っていきます。
今回は上塗りも行う予定ですので、表面の仕上がり具合よりも平面が出ることに注力します(と言っても凸凹まるけなのですが・・・)。

1面、2面と塗りあげ、最後の3面目(下写真で手前側)を塗り始めようとしたところ、壁チリのラインが妙に曲がっているのに気づきました。

大直しがうまくできておらず、一部分が凹んでいるのです。
この凹みの深さは1cm強と言ったところですので、中塗りでカバー(凹部のみ厚く塗る)できそうにも思いますが、ここは一旦中塗りを中止し、凹部について再度、大直しすることにします。

荒壁土を少量練り、凹部に塗り重ねます。

この面の中塗りは、大直しが乾燥するまで待つ必要があります(翌週末に実施予定)。
練った中塗土が下写真のとおり余っていますので、一週間、乾燥しないように水を加えてブルシートを掛けておきます。

現代の化学物質が配合された塗り壁材はすぐに硬化してしまうため、こうしたことができませんが、中塗土は田圃の土のように扱えます。
そして、壁塗りして乾燥させれば固結、さらに水を加えれば元の状態に戻って何度でも再利用することが可能なわけで、土と言う素材の優秀さを感じます。
一方、現代は科学知識を駆使して色々とやっていますが、結局のところは将来の世代に厄介なゴミを残しているだけなのではないかと危惧します(スウェーデンの少女が怒るのも当然です)。

翌週末、3面目を塗って中塗り完了です(下写真は乾燥が進んだ状態)。

上塗りは最後の仕上げとなりますので、その前に壁チリ(廻り縁や柱、巾木の壁に接する木部)の塗装を行なっておくことします。
壁チリは、これまでの作業で土などがついていますので、まずは掃除して汚れを取り除きます。
壁チリの掃除は手間がかかるのですが、水を少し含ませた刷毛(チリ箒)を使って洗い流すようにすると作業が捗ります(左官屋さんに教えていただきました)。

壁チリの木部を塗装する際、壁に塗料がついたとしても仕上げ塗りにより隠れます。
とは言え、アクのような感じで悪影響を及ぼしかねませんので、念のためマスキングテープ(下写真で黄色のもの)で養生しておきます。

ついでに柱の節穴をパテ埋めしておきます(木工用パテは着色が可能ですが、オイルステインとの相性は余り良くありません)。

床の巾木を塗装。

同様に柱と天井の廻り縁を塗装。

天井は、まだ開いたままの状態です。
今回、廻り縁の塗装ができたことから、次回、天井板を張ることにします。

仏間の改修(3)床を作り直す(欅一枚板)

前回、土壁に生じていた亀裂や欠損箇所を補修したのち、壁全体に対して大直し(平面を出す)を行いました。

乾燥後、中塗り・上塗りを行なって壁を仕上げることになりますが、その前に床をどうするか検討しなければなりません。
と言うのは、壁と床(巾木)との間を埋める形で中塗りするため、中塗りすると床をさわるのが難しくなるからです。

で、床の現状は言うと下写真のとおりです。

上写真は仏壇を移動した直後に撮影したもので汚れていますが、床自体はガタツキもなく、しっかりしています。
柱などの構造部分は4年前の改修工事において直してもらってありますので、掃除して柿渋を塗っておけば十分な感じです。
しかし、そもそも今回仏間の改修に着手したキッカケは床下換気口を設置するため仏間の床下に入りたかったのであり、これで床をめくらなければ本末転倒です。
それと他の場所の床は4年前の改修工事により新しくなっていますので、今回床をめくるついでに仏間の床も新しく作り直すことにします。

まずは床板(4分厚程度の薄板)を剥がします。

1寸2分の間隔で根太が入っています。

根太や根太掛けも取り外し、床下に降りられる状態になりました。

取り外した木材はボイラーの燃料として有効利用します。


上写真で左側のものは根太掛けとして使われていたものですが、製材で丸太から柱材など取った残りの端材をうまく利用しているのがわかります。
当時は製材も手作業で、それゆえに、このように無駄なく利用することも可能だったのでしょうね。

床下に降りて状態を確認します。

4年前の改修工事において取り替えた土台等の状態も良好でひと安心です(土台の色が朱色なのは、新材の檜に防虫・防腐の柿渋を塗布してあるためです)。

次に床下換気口の設置位置を検討します。

西側で土台の直上(上写真で「1」)が良いのですが、貫とのクリアランスが85mmしかありません。
φ100mmの換気口を設置しようとすると貫を切り抜くことになりますが、貫は土壁を支えている部材のため可能な限り避けたいです。
貫を避け、その上部(上写真で「2」)に設置すると換気口の位置が地盤高+430mmと高くなり、屋外側に設置予定の薪棚により遮られてしまいます。
どうしたものかと思いつつ北側に目を移すと、北面は貫の位置が高く、土台との間(上写真で「3」)に換気口を設置できるだけのクリアランスがあります。
風向きや建物の配置から本当は西面に設置したいのですが、仕方なく北面に設置することにします。

施工については、土壁がないため容易です。
設置箇所の透湿防水シート(下写真で白色のもの)をカッターナイフで切り、ドリルで中心に穴をあけます。

ドリルであけた穴を中心にして屋外側からコアドリル(φ110mm)で穿孔し(土壁のつもりでコアドリルを準備しましたが、壁板だけであればジグソー等で穿孔可能)、SUS製の丸型ガラリを取り付けます。

このガラリの屋内側には、換気口から雨水が浸入した場合でも土台にかからないように塩ビ管(換気用規格のSUパイプ)を取り付けおきます。

結局、仏間の北面に屋根裏換気口と床下換気口が設置されました。

SUS製の丸型ガラリは古民家と不釣り合いですが、裏手なので機能面と価格(丸型ガラリは1個1,000円未満と安価)を重視です。

床下換気口を設置できたので、床を作っていくことにします。
根太を組み、床板として杉の野地板でも張ろうと考えていたのですが、下写真の古材を使ってはどうかと思いつきました。

これは20年ほど前に解体した離れで床の間の床板として使われていたものです。
床の間に使われていた柱や角材は解体業者がほしいと言って持って帰ったそうですが、床板は不要だったらしく、亡き父が農作業にでも使おうと倉庫に置いてあったのです。
これを仏間の床板として再利用できれば、倉庫も片付いて一石二鳥です。
とは言え、問題はこのようなデカくて(3×6尺)重い材を私のような素人が扱えるかです。
このような板が使われる床の間の造作は大工さんでも棟梁級の方が行うと聞いたこともあります。
まあ、今の時代、普通であればとうの昔に捨てられていて当然のものですから、仕上がりはどうであれ再利用できればラッキーと言うぐらいの軽い気持ちで臨むことにしましょう(^_^)

さて、この板の裏側には反り防止のために「蟻桟(吸い付き桟)」と呼ばれるものが入っています。
蟻桟は、板の幅方向に蟻(溝)を切り、その溝に対して台形をした蟻桟(ホゾ)を横からスライドさせる形で入れてあります。
その蟻桟のひとつが、どういう訳か下写真のとおり一部外れています。

叩いて入るものではありませんし、無理に外せば蟻桟や板が割れかねません。
やはり、蟻桟を入れたときの逆の手順で外したうえ、再度、入れ直すのがベストです。
私自身は蟻桟なんて高度な加工を行なったことがないのですが、木工入門書で「蟻溝は先細りになっており、蟻桟を横からスライドさせて入れていくにつれ締まるようになっている」と読んだことがあります。
と言うことは、溝幅が狭い方から蟻桟を押し出してやれば良いわけで、実際そうやってみるとうまい具合に外せました(こうした仕組みを知らなかったら間違いなくバールで無理やり外していたはずです)。

今度は溝幅が広いほうから蟻桟をスライドさせて入れ直せば復旧完了です。

反対の表面は汚れや傷がたくさんあるため、サンダーをかけて塗膜(拭き漆)とともに落とします。

サンドペーパーの番手は#60から始めたのですが、古材の欅は硬く、表面の塗膜が削れた後はほとんど削れていきません。

それでも#500の仕上げ段階になると良い感じになりました。

いくらサンダーをかけても下写真のような深い傷は残っています。

こうした傷は木工用のパテを使って埋めておきます。

パテの乾燥後、サンドペーパーで研ぎ落とせば平滑に仕上がります。

幅3尺(約90cm)で木目が緻密と言うことは、相当な樹齢の木だったはずです。

仏間の広さに対して板のほうが若干大きいため、丸ノコで切って仏間の寸法に合わせます。

巾木で調整できるとは言え、柱部分の切り欠き部分など、正確に加工できているのか自信ありません・・・(こうしたところで一枚板は扱いにくいです)。

この板の板厚は機械製材によるものと違って場所によって微妙に異なっています。
このままでは設置に支障がありますので、先の蟻桟(根太を兼用)の端部(根太掛けに載る部分)を削って高さが一定になるようにします。

加工は0.5mmの精度に収めたいところですが、トリマーを使えば素人でも可能です。

板厚によって切削量は異なりますので、それぞれノギスで正確な高さ(h)を測ったうえ切削量(=h−46.5)を求めて加工します。

切削量は上写真に記載のとおり0mm〜5.8mmと差があります(蟻桟の高さを含むため板厚の差はもう少し小さいです)。

床板のほうは一旦置いておき、仏間側の作業に移ります。

床板には根太を兼ねる蟻桟が入っており、先に調整したとおり床板厚さ+根太高さ=46.5mmになっています。
床板の天端を下写真の敷居天端に合わせようとすると、敷居天端から46.5mm下がったところに根太掛けを設置すれば良いことになります。

ところで、敷居には上写真で緑色矢印で示すとおり切り欠きがあります。
多分、ここには敷居が下がらないように支える部材が入っていたような感じです。
そこで、根太掛けを設置する前に端材を利用して取り付けておきます。

敷居の天端を基準にして根太掛けを設置。

根太掛けには、杉の間柱材(90×27mm)を用いています。

中間(@3尺)に束柱を設けます。

同じレベルで反対側(西側)にも根太掛けを設置。

こうしてできた根太掛けに、先の一枚板を据え付ければ床のできあがり・・・

のはずなのですが、実際には床板は重いわ、三方の壁との間に手を入れるスペースも無くて苦戦・・・。
なんとか入ったと思えば、床板のサイズが少し大きかったようで手前側が敷居に載った状態です。

下写真で柱部分の切り欠きのサイズが小さかったようです。

修正して無事据え付けられました。

上写真を見ると壁との間に隙間が生じていますが、この隙間については今後設置する巾木により隠れるので問題ありません。

現時点で確認しておくべきところは敷居との取り合いです。

敷居の反りにより僅かに隙間があるところもありますが、素人工事なので合格と言うことにしておきましょう。

今回の作業により古く汚れていた床が、欅の一枚板の床に変わりました。

<ビフォー>

<アフター>

床板(欅、塗装無し)と敷居(桜、摺り漆仕上げ)との見た目の違いが大きいですが、最終的には床板も摺り漆で仕上げたいと考えています(以前、文机の再生摺り漆に初挑戦しましたが、実はこの予行練習を兼ねていたのです)。