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井戸の再生(17)地下水の流れ

前回、下図で井戸3とある古井戸の再生案を検討しました。

井戸1、2、3は下図のとおり地下水位高が同じであることから、同一の水脈であると考えています(あくまでも素人考えです)。

では、この地下水はどの方向に流れているのでしょうか?
地盤高は井戸1から3に向かって低くなっており、地下水の底となる不透水層も同様の勾配であると考えると、地下水は井戸1から3に向かって流れていることになります。

そう考えていると、その先の山裾に農業用のため池跡があることに気づきました。

ここは我が家の敷地ではありませんが、以前、土地の相続登記をおこなう際に法務局で交付してもらった公図(旧土地台帳の添付図)から地目が「ため池」の土地があることを知りました。
現状では薮と化しており、ため池があったとは思えません。
地元の長老に尋ねたところ、昔(昭和30年代頃まで?)は水田用に小さなため池があったと教えていただきました。

ということは、この周辺(山裾)から地下水が湧出しており、それを見た古人がここに農業用ため池を設けたように考えられます。


(水平・垂直方向の縮尺は異なります。実際の斜面は20°程度の勾配です。)

現地を確認すると農業用ため池らしき痕跡が残っています。

水は溜まっておらず、山側から湧水があるような気配もありません。
山は荒れ、井戸も使わなくなったことで、水みちも変わったのかもしれません。

井戸もため池も今の世にあっては無用の長物ですが、これらの遺構からは、古人が水の流れなど熟知し、うまく自然とつきあっていたことが偲ばれます。

次項も思いつき程度のものですが、地下水の流れがこの方向にあることを示しているのかもしれません。

  • 地下水の流出側になる山の斜面に竹が少ない
  • 下図で黄色の着色箇所は周囲に比べ竹が少ないです(感覚的に1/3程度の密度)。
    竹は成長に多量の水を必要にするにも関わらず、水の流れがあるところを嫌うということを聞いたことがあります。
    真偽は不明ですが、水の流れを嫌って竹が生えにくいのかもしれません。

  • 井戸の下流側にフキが群生している
  • 下図で緑色の着色箇所にはフキが群生しています。
    フキは沢筋など水が豊富で、半日陰のところに自生します。
    ただ、ここのフキは栽培種のような感じですので、戦前に祖父がこの場所に柿の木を植えたときにフキも植えただけなのかもしれません。
    それでも絶えることなく現在も群生しているということは水が豊富なのでしょう。

<続きます>

井戸の再生(16)再生案の検討

前回、古井戸の状況を確認しました。

  • 井戸の構造:掘井戸(素掘り)
  • 水源の種類:浅井戸(自由地下水から取水)
  • 井戸側径:2尺(60cm)
  • 井戸深さ:約2.6m

確認の結果、井筒(側)の外側に穴があき、井戸内へ雨水や土砂が流入していることがわかりました(実のところは以前から穴があいているのを知っていましたが、忙しさにかまけて見て見ぬ振り状態・・・)。

孔壁が崩壊するのも時間の問題であるような状況であることから、対応策を考えてみます。

(1)修理する
修理する場合、素掘りの孔壁が崩れかかっていることから、側(がわ)を挿入し孔壁の崩壊を防ぐことになるのかと思います。
重量物の井戸側の挿入工事が簡易なものでないことは容易に想像でき、今後も使う見込みのない井戸にそこまでするのもどうか・・・

(2)放置する
そのまま放置すれば、いずれは孔壁が崩壊し(中途半端な状態で)埋まることになり楽チンです。
しかし、井戸は人間の都合で作ったものですし、自然に対してそんな無責任なことでよいのかと個人的に感じます。

(3)埋め戻す
そんなことで、埋め戻すのが最も現実的な方策ではないかと思っていたとき、お隣の方と話す機会があったため、この井戸のことを話してみました。
お隣の方は建築士さんですので、井戸の扱いもよくご存知で、埋め戻す場合には通常「息抜き」をおこなうことを教えていただきました。

そこで、前回作成した現況図に息抜き用のパイプ(VPφ20)を設けたのち埋め戻す案を考えてみました(下図で第1案)。
(息抜きを設ける理由をネットで調べると科学的、風水的な観点から様々あるようですが、その是非の判断は難しく記載は省略します・・・)

埋め戻しについては、帯水層は山砂を使用し、その上部は雨水等の直接の浸入を防ぐため粘性土を使うようにしています。

上図の第1案を描きながら、息抜き用のパイプ(VPφ20)を設けるならば、ついでにその鞘になるパイプ(VPφ75)も入れてはどうかと思いつき描いたのが下図の第2案です。

これであれば、鞘管(VPφ75)が新たな井戸になり、ポンプが必要になるものの鞘管内のパイプ(VPφ20)により揚水が可能です。
そして廃井にしなくてすみます。

井戸径がφ580mmからφ75mmに小さくなることで揚水量は小さくなるでしょうが、通常使わない井戸であることを考えれば十分です。
ちなみに、この古井戸(掘井戸)のように昔は人が井戸内に入って掘削したため必然的にφ600mm以上の井戸径となっています。
しかし、現在ではボーリングによる掘削が可能で、その場合は井戸径を小さくすることができるため、φ75mm程度の井戸(打込井戸)も存在します。

第1案と第2案を比べると、第2案のほうが必要となる材料(鞘管や井戸ポンプ)が増えますが、手間的にはそう変わりません。
であれば、第2案としたいところです。

今後の気候変動や、現在の水道水源が河川表流水に著しく依存している状況を考えると、50年、あるいは100年後の日本人にとって、こうした古井戸が掛け替えのないものになる可能性は十分にあるように思います。
そうであれば井戸を残す意味もありますが、問題はその能力が私にあるかですね(気力&体力だけはあるのですが・・・)。

実際に施工するとしても水が恋しくなる夏場になりますので、それまで他案を含め検討を続けていきたいと思います。

<続きます>