月別アーカイブ: 2020年7月

一斗枡の再生(1)塗装と墨入れ

前回、亡き祖母愛用?のミシン椅子を再生しました。

このミシン椅子のほかにも昔のものをこれまでに再生してきました。

  • 父の五月人形 →(再生)→ 市の郷土資料館に寄贈
  • 祖母のミシン台 →(再生)→ テレビ台として利用
  • 祖母の茶箪笥 → (再生)→ 玄関の飾り棚として利用
  • 祖父の文机 → (再生)→ テレビ台として利用
  • 祖母のミシン椅子 →(再生)→ ダイニングテーブルの椅子(予備)

これらの再生はモノに溢れた家の片付けの一環で、ボロボロのものや使うあてのないものは処分しています。
家の片付けはいまだに進行中ですが、軽トラ150車近くのモノ(ゴミ!?)を処分して9 割以上完了したように感じています。
残るは1割。
そのひとつが下写真の一斗枡です。

これは昔、お米を計量するのに使われた道具です。
この円筒形の枡にお米をすり切り一杯入れると1斗になるわけです。
現在、斗の単位が使われることは稀ですが、1斗缶の名称に残っているとおり1斗=約18リットルです。
また、1斗=10升=100合になります。
現在、お米は重量の単位(1袋30kg。半俵)で売買されていますが、昔は今のように重さを量るのが容易ではなかったため、このような枡を使って体積で計量したのだと思います。
ちなみに、1斗のお米の重さは約15kgあるため4斗で約60kg(=約15kg/斗×4斗)。つまり1俵になります。

で、この一斗枡ですが、全体的に汚れており、補強の鉄部もサビが酷い状態です。
このためバラして薪にするつもりでいたのですが、以前、プランターカバーを作ったことで、この一斗枡もプランターカバーにちょうど良い大きさだと思うようになりました。

プランターカバーと言えども、汚れやサビが酷いままと言うわけにはいきませんので手入れすることにします。
まず、木部の汚れと鉄部のサビを落とします(ワイヤブラシとサンドペーパーを使用)。

サビを落とすだけでも随分とマシになるものです。

ただ、このままでは再びサビてしまうため塗装することにしますが、問題は色です。
当初は朱色(サビ止め?)で塗装されていました。
一方、今回は木部に柿渋を塗布する予定で、時間の経過により赤く発色してきます。
鉄部を朱色で塗装すると木部とのコントラストが小さくなってボヤけた感じになりそうです。
そこで、輪郭の鉄部は木部より濃くなるように黒色で塗装することにします。

マスキングテープで木部を養生して塗装。

塗料はアクリル樹脂塗料(百均のものです)を使用しています(水性のため2度塗り)。

100円塗料と言えども綺麗に塗装できます(塗装の仕上りの良否は下地処理によるところが大きいです)。

輪郭が締まって良い感じになってきました。

枡の正面には下写真のとおり焼印により刻印されています。

焼印を見ると、尾張名古屋の「カネキ」と言う屋号のところが製造したようです。
これを見た姪が、この焼印は消さずに残すほうが良いと言います。
そこで、焼印により文字や図柄が凹んでいることを利用して墨入れすることにします。
墨入れは墨汁を使うと後の柿渋の塗布で滲むため、先に鉄部の塗装で使用したアクリル樹脂塗料(黒色)を使います。

砥の粉で目止めしたうえ墨入れ。

すり減って凹凸が無くなってなっているところがあって難しいです。

塗料の乾燥後、サンドペーパーをかけてはみ出している塗料を除去します。

<続きます>

ミシン椅子の再生(3)布地を張り替える

前回、ホゾに虫喰いがあった部材(中貫)を作り直しました。

部材が全て揃ったことから組んでいきます。

上写真の状態まで組んで座板を取り付けようとするも、後脚と座板との接合部(相欠き)が嵌まりません・・・。
座板も一緒に組む必要があるのです。
再度分解し、今度は座板を含めて組みます。

上写真で座板と前脚との接合部(朱色矢印)に板状のものが飛び出しています。
ここはホゾ接合になっているのですが、前回のブログ記事に記載のとおり脚を短く切ってホゾを作り直しました。

そのときは単純に脚が短くなるだけだと安易に考えていたのですが、後になって、そう単純にはいかないことが判明・・・(後脚との関係から)。
そこで、前脚が当初の高さになるように、座板側に下写真の板(四角の穴はホゾ穴)を貼って嵩上げすることにしたのです。

背板の取り付けなどに釘やビスを使っているところがありますので、当初と同様にビス留めします(下写真で朱色矢印)。

中貫を新しく作り直したことにより酷かったグラつきも無くなりました。

ついでに応急処置の釘留めによりあいていた穴もパテで塞いでおきました(上写真で朱色矢印)。

ところで、上写真のとおり新材部の色が旧材と異なり目立ちます。
これはこれで陶磁器の金継ぎのようにアリかもしれません。
しかし、旧材部の塗装が薄くなって汚れた感じになっているため、全体を塗装し直すことにします。
塗装についても当初と同じ方法で行いたいと思いますが、果たして何の塗料が使われているのでしょう??

この椅子が作られたのは昭和初期で、その頃には既に舶来のペンキもあったと思います。
しかし、見たところ合成樹脂系の塗装ではなく、おそらく茶色の顔料を柿渋で塗布したうえ油で磨いて仕上げているのではないかと思います。
そこで、茶色の顔料(シマモト「顔力」アンバー赤口)を購入して塗装(仕上げに蜜蝋ワックスを塗布)。

当初より赤味が強いですが、これはこれで良い感じです。
購入した顔料に成分は記載されていませんが、この色合いから弁柄(朱)と松煙(黒)を配合しているとみました(買わなくても自分で配合できました)。

これでようやくクッションと布地を張り替えられる状態にまできました。
椅子用の布地はネットを検索すると様々な生地や図柄のものがありますが、特にこだわりはないためフリマで出品されていた端切れを購入。

生地の種類はわかりませんが、電車のロングシートに使われているものに似ていて丈夫そうです。
色も木部の濃い色に映えて良いです。

まずは、元のクッション材を配置。

布地を被せ、座板の裏側でタッカーを打って固定します。

椅子用の布地だけあって伸縮するため、シワができることなく張れました。

ただ、丸く張るため、どうしても側面にヒダができてしまいます。
当初はどう処理してあったのだろう?と当初の写真を確認すると上から別の布地を重ねて隠すようにしてあります。

同様に細長い布地を張ることにしますが、普通のものだと端がほつれてきます。
不織布のようなものはないかとホームセンターで探すと、切り売りの合成レザーを発見(約70円)。
座板の厚さ(2cm)で細長く切って使います。

座板の側面に巻き、太鼓鋲(銅生地)を打って留めます。

汚れやぐらつきの酷かったミシン椅子が生き返りました!

Before
After

実際に座って見ると、ぐらつきが無くなり、座り心地も最高!
なのですが、今度はがたつきが・・・(分解・再組み立てしたことによるものでコンマ数ミリ)。
平面が出ているところに置き、脚の底をノコヤスリで削って微調整します。

そして、2年前に再生したミシンテーブル(テレビ台として使用)のところに設置。
ミシンのテーブル、椅子ともに再び使えるようになりました!

この部屋にダイニングテーブルが置いてあり、その椅子が4脚あって普段はそれで十分なのですが、来客時に足りなくなることがあるため、そのときの椅子として使いたいと思っています(ミシン椅子のほうが座り心地が良いです)。