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古民家の自然換気(38)土壁の修復②貫

前回、20年ほど前のリフォームにおいて一部が切断・撤去された土壁について、その上部の土壁に割れが生じていることから元の形に戻して安定化させることにしました。
元の形に戻すため、下図のとおり土壁が撤去されたところに新たに貫(柱同士を繋ぐ水平材)を設け、これで既存の土壁を支えるとともに再設する土壁の下地(エツリ)を固定する考えです。

この貫のサイズ(断面)は3寸×5分としていますので、手元にある杉の野地板(5分厚)から木取りすることにします。
テーブルソーを使って3寸幅で挽き割ります。

強度的にはこれで問題ないとしても、既存の土壁を受けるためには5分(15mm)の幅では狭いです。
また、下地材のヒダチ(間渡し竹)を固定するために貫の上端に1寸(30mm)幅の角材を付け足すことにします。

この角材用には1寸厚の板材から木取りすることを考えていましたが、手元に30mm×40mmの野縁材が余っていましたので、これを使うことにします。
バンドソーを使って30mm×20mm弱×2本に挽き割ります。

このような角材をテーブルソーで挽き割るのは危険ですが、バンドソーを使えば安全に作業できます。

所用の長さでカットしたうえ、貫に角材を取り付けます。

貫自体は本来であれば両側の柱にホゾ穴をあけて取り付けたいところですが、ノミで柱を叩けば土埃が既存の土壁から雨あられのごとく降り注ぐこと必至です(真下は台所のシステムキッチン・・・)。
このため、貫の柱側にも角材を取り付けて柱にビス留めすることにします。

また、角材には釘を1尺ピッチで打ってヒダチ(間渡し竹)を固定できるようにしておきます(下写真は天地逆になっています)。

釘は念のためステンレス製のものを使っています。
また、横方向のヒダチについては柱に丸穴(ドリル使用)をあけて取り付ける(挿し込む)考えです。

これらの貫を取り付けることになる土壁の現状を再確認。

上写真は下屋側から撮影したものになりますが、下地のエツリが現れていることからも分かるように裏返し(裏面からの荒壁つけ)が行われていません。
このことについて以前、左官屋さんに尋ねたことがあるのですが、建築時の他工事(木工事等)との工程の絡みから、どうしてもこのような場所ができてしまうとのこと。
また、建築士さんによると、こうした半分しか荒壁がついていない土壁は耐震計算上はカウントできないそうです。

20年前のリフォームで一部撤去したところが、たまたま裏返しが行われていない弱い土壁だったことが、損傷(割れ・剥離、下写真)の直接の原因ではないとしても大きな要因になっていたのです。
とは言え、撤去する際に裏返しが行われていない土壁であることは分かっていたはずですが・・・。

既存の土壁やエツリを支えるようにして先に加工した貫を取り付け。

表(母屋)側から。

実は、途中から切断・撤去された土壁を元の形に修復することなんてできるのだろうかと思っていたのですが、こうして貫を設けられたことで一気に先が見えたように感じます。
あとはエツリや荒壁つけ、中塗り、上塗りと手間は要するものの時間さえ掛ければできないことはありません。
そんなわけで気持ちはできたも同然になってしまい、安心しきって作業が一時ストップすることに・・・(ブログ記事は続きます)。

<続きます>

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