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集塵機のメンテナンス(1)分解

以前、電動ハンマー(コンクリートのハツリ等に使用する電動工具)のメンテナンスについてブログ記事にしましたが、相当マイナーな内容にも関わらず意外にもアクセスがあって驚いています。
電動工具も、エンジン駆動のものに比べればマシとは言えトラブルは付き物で日頃のメンテナンスに苦労されている方が多いのかもしれません。
今回、電動工具のひとつである集塵機のメンテナンスとして、傷んだ電源コードの交換等を行うことにしました。
電動工具の電源コードは傷つけやすく、交換したいと考えてみえる方の参考になるかもしれませんので、その過程をブログ記事にすることにします(電動工具を修理するのに電気工事士等の資格は必要ないものの、メーカーは内部を触ることを禁止しており、感電事故や故障につながる恐れがあることをご了解ください)。

集塵機と言えば、5年前に主屋(古民家)を改修する際、天井裏などを掃除するために下写真のもの(マキタ M442)を購入しました。

その改修工事も終わり、こうした集塵機でなければ掃除できないところも無くなりました。
当初の目的は果たし終えたのですが、この集塵機は丸ノコなどの電動工具と接続できるため、現在はガレージに移して木工作業等を行う際の集塵用として使用しています。
ただ、この機種は掃除用のため、木工や土埃などの細かい粉塵を吸い込むとフィルターが目詰まりしやすいと言う欠点があります。
メーカーからは目詰まりしにくい粉塵用の集塵機も販売されているのですが、買い換えるのもどうかと思っていたところ、内装業を行う知人が集塵機を買い換えたとのことで、古いもの(粉塵用。マキタ 472P)を譲ってもらえることになりました。

問題なく動作するが、電源コードがダメになっているとのこと。

確かに電源コードをみると、全体が波打ち、所々がコブ状になっています。
コブの酷いところはシースが破れて中の絶縁電線が露出しています。

これほどになるには相当な過電流を長時間発生させてしまったのでしょう。
このまま使うのは漏電やショートの恐れがあって危険ですが、とりあえず簡易的な対策を講じて、しばらく使ってみました。
その結果、粉塵用機種だけあってフィルターが目詰まりしにくいほか、動作音が静かなのがGOOD!(これまで使っていた掃除用のものは爆音・・・)。
粉塵用機種は、掃除用のものに比べて出力が小さく、その分動作音が静かなようです。
さらに「強・弱」の切り替えも可能で、「弱」にすれば夜間でも気兼ねなく使える感じです(家庭用掃除機並み)。
あと、電動工具と連動させるためのコンセントがついており、いちいち集塵機のON・OFF操作をしなくて済むのも意外と便利です。

そんなわけで、この粉塵用集塵機を、これまで使っていた掃除用集塵機の代わりに使っていきたいのですが、それには危険な状態の電源コードを新しいものに取り替える必要があります。
また、電動工具と連動させるためのコンセントとして抜け止め型のもの(差し込み口が「い」の形状)がついているのですが、抜け止めどころからプラグが簡単に抜けてしまう状態で(異常発熱等の恐れあり)、こちらも新しいものに交換が必要です。

これらを交換できるかどうか確認するため、とりあえず分解してみます。

石膏ボードの切断時に使用されていたようで、機械内部も石膏の粉塵で真っ白。
この機会にエアダスターで掃除しておきました。

今回取り替える電源コードやコンセントを含む電気配線は下写真のボックス内に収められています。

詳しく見ると、電源コードは3心で、そのうちの2線(下写真で①、②)がスイッチにつながり、残る1線(③)が連動用コンセントの接地極に接続されています。

そして、スイッチやコンセントとの接続には、脱着可能な圧着端子が使われていることがわかります。
と言うことは、電源コードやコンセントを比較的容易に取り替えられそうです。
こうした電動工具はハードな環境で使用されるため、修理することを前提として修理しやすい構造になっているのだとは思いますが、昨今の家電製品のような使い捨て(実質修理不可能で買い換えるほうが安価)でないのは素晴らしいことです。

とりあえず交換できそうなことがわかりましたので、次は必要となる材料の入手です。
電源コードは3心のビニルキャブタイヤケーブル(VCT)で、その先端に接地付きのプラグ(下写真で緑色のもの。ポッキンプラグ)がついています。

3心のVCTでも通常電動工具に使われているものより太い感じがしますので、心線は太さが2SQ(2mm2)のものが使われているようです。
集塵機本体だけであれば通常の1.25SQ(1.25mm2)の心線でも十分なはずですが、集塵機の連動コンセントに別の電動工具を繋ぐため、その電圧降下を抑えるため太い心線のものが使われているのだと思います(電線の抵抗は断面積に反比例する)。

1.25SQ×2心のものであれば、使わなくなった延長コードやコードリールなどから転用すれば良いのですが、2SQ×3心は持っていないため購入(10m。100円/m程度)。

2極のプラグ(ゴムキャップ)が写っていますが、実際に使用するのは接地付きのもの(2PE)になります。

このビニルキャブタイヤケーブル(VCT)を購入する際、近くにVCTFなるものがあり、そちらのほうが若干単価が安いため心が動かされました。
調べてみると、VCTFはビニルキャブタイヤコードの略称で、VCT(ビニルキャブタイヤケーブル)のケーブルとは異なりコードになるのだとか。

  • VCT:ビニルキャブタイヤケーブル:600V以下
  • VCTF:ビニルキャブタイヤ丸形コード:300V以下

私だけかもしれませんが、ビニルキャブタイヤケーブルが延長コードやコードリールに用いられていることからコードのような印象をもっていましたが、実はケーブルなのです(→ケーブルなので屋内配線にも使えるはず?)。
集塵機の電源コードとしてはVCTFを使っても問題ないと思います(実際、出力の小さい電動工具のなかにはVCTFが使われているものもありました)。
ただ、販売されていたVCTFのシース(外装)の厚さが薄かったため、今回は念のためVCTのほうにしておきました。

電源コードと集塵機本体の接続には、脱着できるように下写真の圧着端子が用いられています。

3心のうち2心(スイッチに接続)が「差込形接続端子 FA形」(ギボシ端子などのオープンバレル端子の一種)、残る1心(コンセントの接地極に接続)が「棒形裸端子 TC形」(撚線を単線に変換)です。
これも2SQ用のものは持っていないためホームセンターで購入(下写真で小袋入りのもの)。

また、コンセント(抜け止め型の接地コンセント)も新しいものを入手しました。
このコンセントは住居の壁スイッチ等で用いられている埋込型のものですが、取り付けサイズや送り線の有無などの制約があることから、既存と同じもの(明工社 ML1249W)を取り寄せました(これも汎用品が使われているのも素晴らしいです)。

これで必要な材料が揃いましたので、次回、交換作業を行います。
<続きます>

庭木の剪定(29)シラカシの伐採でリベンジ!

前回、庭木のアラカシを伐採しました。
その伐採で伐倒方向とは真逆に倒してしまうと言う失敗を犯したものの、今シーズンの剪定は無事終えられました。

ところで、近所にいつも様々教えていただいている長老のお宅があります。
長老のお宅にも我が家と同じような庭があり、昨シーズンまではご自身で剪定(当地では「きつくり」と言います)を行ってみえました。
しかし、80代半ばを過ぎて危険なこともあって、「伸びて鬱陶しいところだけでも適当で良いので剪定してくれないか」と頼まれました(ご子息は結婚により家を離れています)。
以前だと自分のところの剪定だけで手一杯で、とても余所の庭まで手を出せる状態ではなかったのですが、我が家の庭にかかる労力が半分以下に減ったことで少し余裕があります。
それと、我が家は祖父が早くに亡くなって苦しい時代があったのですが、その時この長老のご一家には様々に助けていただいたと聞いており、今こそ恩返しの機会だと喜んで引き受けることにしました。

剪定作業は2本の大木を除いて刈り込み鋏を使ってザッと行い、半日もかからず完了しました。
問題は2本の大木(シラカシとヤマモモ)です。
この2本の大木について、長老は「2本とも老木であるし、今後も剪定の手間がかかることから伐採できるものならこの機会に伐採してほしい」とのこと。
2本のうち1本のシラカシについては、幹からの胴吹きが多いことや太い枝が枯れていることから相当衰弱していることが見て取れます。
もう1本のヤマモモについては、老木ではあるものの樹勢はあります。
このため、今回伐採するのはシラカシのみとし、ヤマモモについてはとりあえず剪定が容易になるように少しコンパクトに仕立て直してはどうかとお伝えし、そうすることに。

まずはシラカシの伐採からです。
このシラカシの樹高は6m程度で、幹の直径が30cm強あります。
庭木で高さを抑えているため幹の上部も太く、重心が高い位置にあります。
枝葉を落として幹の傾きを確認すると、離れがある方向(西)に若干傾いており、その方向に倒れれば離れに当たってしまいます。
また、その近くには軽トラ(移動不可)も停まっています。
幸い東側に広いスペースがあるため、その方向に伐倒できます。
さすがに先のアラカシの伐採時のような失敗は許されませんので、伐倒方向にロープで牽引しながら伐倒することにします。

ロープの牽引はお隣の方に助っ人をお願いし、容易にロープを引けるように軽トラをアンカーにしてローププラー(簡易的な牽引機)を取り付けてあります。

ところで、ロープを引くと下図のとおり受け口の位置を支点としてテコの原理が働くため(→ロープを掛ける位置が高いほど、ロープが長いほど力が大きくなる)、伐倒する木に傾きがなければロープを直接、手で引くだけでも十分な場合があります(傾きがなくても風などの影響を考慮する必要有り)。

しかし、今回の場合は木が伐倒方向とは逆に傾いているため、それを引き起こす力も必要になります。
そして、それに対応するロープやアンカー、牽引機を用いる必要があるわけですが、私が伐木関係の書籍を読んだ限りでは、それらの具体的な選定方法に関する記載を目にしたことがありません。
おそらく市販の道具は十二分に安全にできているのだと思いますが、今回のどの程度の牽引力が必要になるのか算出して確認してみることにします。

<以下、素人考えによるもので安全の保証は全くありません。重大な事故に繋がるおそれのあることにご留意ください>

中学か高校の理科で習った力のモーメントを思い出すと、木の重量(Mg)によるモーメントM1とロープの牽引(T)によるモーメントM2との釣り合いからロープの牽引力Tを算出すれば良さそうです。

上図から

M1 = Mg・h/2・sinα
M2 = T・h・cosα・cosβ

となり、M1 = M2から

T = Mg/2・tanα/cosβ

となります。
つまり、木の重量Mg、木の傾斜角α、ロープの索引角βからロープの引張力Tを算出できることになります。

木の重量Mgは超概算で幹の直径0.3m、樹高6m、比重1、安全率2(枝葉の重量等)として下式により求めると850kgfになります。

Mg = π/4×0.3^2×6×1×2 ≒ 850kgf

これに木の傾斜角α及びロープの牽引角βをそれぞれ3°、30°としてロープの牽引力Tを求めます。

T = Mg/2・tanα/cosβ = 850 / 2×tan5°/ cos30°≒ 26kgf

牽引力は26kgfとなり、30kgの米1袋(半俵)を持ち上げるぐらいの力が必要になることになります。
ほかにも風圧等が作用することを考えれば、木を引き起こす場合にはローププラー(今回使用したものの許容荷重は1,500lb≒680kgf)や動滑車(倍力)の使用は必須と言えそうです。

上式で木の傾斜角αの値を変えて算出すると、ロープの牽引力Tは次のとおり変化します。

  • 1° ・・・9kgf
  • 3°・・・26kgf
  • 5°・・・43kgf
  • 10°・・・86kgf

今回使用したロープ(直径1/2″)の切断荷重は14kN(使用荷重はその1/10)ですので、今回の木で傾斜角が10°くらいまでであれば問題ないことになります。

とりあえず使用機材の能力で問題ないことを確認できたため作業に着手します。
伐倒方向に向けて正確に受け口を作ります。

次に受け口の反対側から追い口を切りますが、この方向には木の傾きによる力がかかっています。
チェンソーのガイドバーが挟まれてしまわないようにロープを軽く張った状態にして追い口を切ります。

ツルの厚さが直径の1/10になるところまで切ったら退避。
助っ人に合図し、ローププラーでロープを引っ張ってもらうとズドーン。

今回は狙ったとおりの方向に倒せました。

切り株は邪魔にならないように低いところで切り直しますが、その前に受け口や追い口が正しく作られていたかどうかチェックしておきます(特に問題ないようです)。

伐倒した木の処分も頼まれていますので、玉切りしたうえ斧で割って薪にします。

カシの木なので良い薪になります。
庭木はイジメてあるため割るのに苦労しますが、その分火持ちも良さそうです。

もう1本の大木のヤマモモについては伐採せずに、ひとまわりコンパクトになるよう剪定。

全ての剪定が無事完了し、長老にも満足していただけました。
長老から今回の剪定と伐採に要した費用を払いたいと言っていただきましたが、実際にかかったのはチェンソーの燃料ぐらいです。
その代わりに処分したいと聞いていた古い建具や古材(全て無垢材)を軽トラに一杯頂いてきました(こうしたものも、これまでは我が家のものを処分するのに精一杯だったのですが、片付いてきていて少し余裕があります)。

これらを解体し、ウッドボイラーが設置してある倉庫に収納。

ウッドボイラーの燃料や薪ストーブの焚き付けとして活用させていただきます!