日別アーカイブ: 2017-06-17

古民家の自然換気(1)天井の換気口

梅雨らしくない天気が続いていますが、しばらくすれば蒸し暑い夏がやってきます。
冬の寒さに対しては薪ストーブを導入して快適になった主屋(古民家)ですが、夏の暑さもどうにかしたいものです。
本来、古民家は先人が長い年月をかけて、その土地の気候に応じたものを築き上げたものであり、特に夏の暑さに対しては様々な工夫が施されていると聞き及びます。
とは言うものの、我が古民家の夏は暑いです・・・。
エアコンの生活に慣れて心身が軟弱になったのか、それとも地球環境が昔より厳しくなっているのでしょうかね。

ところで、主屋の改修工事を設計・監理していただいた建築士さんは、古民家に精通しているだけでなく、建築物とその周囲の気候(微気候)との関係にも詳しく、いろいろと教えていただく機会がありました。
そして、夏の防暑手法として、建物だけでなく周囲の環境も重視すべきであることを教えていただき、昨年、主屋南側の砂利敷きだったところを芝生に変えたところです(建物南面への照り返し防止等)。

また、建物に関する防暑手法のひとつとして自然換気を重視してみえました。
もともと古民家は自然換気がうまく働くようになっているが、その後に行った改修などが妨げになっていることがあるため、その場合はその機能を復活させるようにすると良いと。
興味深く感じる一方で、受動的な自然換気では大した効果が得られず、気休め程度ではないかと思うところもありました。

ところが、その思いは後にDIYで天井に採光用の開口を設けたことで変わりました。

この開口の第一目的は採光用(ガラス瓦からの日射を取り入れる)ですが、建築士さんの助言により障子窓を開閉できるようにしています。
つまり、冬季は暖房のために閉めておきますが、夏季は開けることで室内の暖かい空気を屋根裏へと自然に排出させるわけです。
実際に屋根裏(厨子二階)側でこの障子戸を開けると、かなりの勢いで暖かい空気が上がってくるのが実感できるのです。

スゴイものだと感心するとともに、以前、天井にあった謎のもののことを思い出しました。
主屋の天井の一部は「大和天井」という形式のものですが、その一部分が開いており(下写真で水色枠線内)、厨子二階(屋根裏)と通じていたのです。
(「大和天井」では、一階の天井がそのまま二階の床になっています。)

この厨子二階側がどうなっているのか長年わからなかったのですが、改修工事前に片付けのために登ったところ、箱状のものが造作されており、その上部も開いていることがわかりました。


(床から外して箱部分のみを撮影)

この箱状のものは、厨子二階が柴などを保管するのに使われていたため、その柴やゴミなどが階下(居室)に落ちないようにするため、また作業時の人の転落を防止するためのものだと思います。

それはそうと、そもそも、ここまでして開口を設けた目的は?
当地でもこのような開口があるという古民家は聞いたことがなく、長年不思議に思っていたのですが、一階から二階への上昇気流を実感したことで、これは換気のためのものだと思い至りました。
主屋を建てた曽祖父が、夏の暑さを少しでも和らげようとして大工さんにお願いして設けたのかもしれません。

しかし、実際にはこの換気口は機能していなかったようです。
と言うのは、片付けのために厨子二階に上がった際には、この箱状のものの上にも大量の柴が積まれており(下写真)、実質的には塞がれた状態だったのです・・・。

冬季に部屋の暖い空気が逃げてしまわないようにしたのかもしれません。
ところで、排気先となる厨子二階は下図のとおり、真ん中の壁で仕切られた2つの大きな空間(24畳、16畳)で構成されています(実線が壁、破線は下屋を含む階下の間取り)。

先ほどの開口は上図で「換気口A」(24畳間側)と示すものになります。
この24畳側には、「換気口A」とは別に、階下(土間)から柴などを運び入れるための開口(上図で「開口部」)がありますので、「換気口A」を塞いでおいても十分に換気できたのかもしれません。

一方の16畳側(簡易的な居室として使われていた)にも開口(上図で「換気口B」)が設けられていました(下写真。こちらは塞がれていませんでした)。

厨子二階の2つの空間にそれぞれ開口が設けられていることから、階下の部屋の換気だけではなく、厨子二階(屋根裏)側にも空気の流れを作り、淀むことがないようにしてあるのかもしれません。

さて、主屋の改修後も構造は異なるものの開口を設けました(冬季及び冷房時は閉)。
このため夏季には室内の暖かい空気は厨子二階へと上昇し、自然換気されることになります。

厨子二階に排出された空気は、さらに屋外へ排出する必要があります。
そこで、このための換気口を設けることにします。

<続きます>